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日本の政治を変える「新しい生徒会」。高校生が文科省へ提言、松下政経塾で合宿…


今年3月、高校生たちが集まり、生徒会の全国組織として提言をまとめ、文部科学省や全国高等学校長協会などに手渡した。18歳選挙権実現以降も、実際に若者が世代の意見を表明し社会へ反映する仕組みはまだまだ少ない。世代代表として社会に発信する仕組みとしても生徒会のこうした取り組みには大きな可能性があるのではないかと考えている。

若者参画先進国であるスウェーデンには生徒会の全国組織が存在し、各学校の生徒会から代表者を送ると共に、生徒会役員の研修、生徒会顧問の研修についてまで当事者である高校生達が行なっていたりもする。スウェーデンでは、この全国生徒会も若者団体の1つとしてLSU(全国青年協議会)を構成し、当事者としての若者の声を国の政策形成にも関わる仕組みが整備されている。さらに国を超えた欧州生徒会組合組織が存在するほか、自治体でのまちづくりに高校生達が関わる若者会という仕組みなども存在する。もう一つの先進国であるドイツは、教育は分権化されているため州ごとの「州生徒会」が存在する。視察に訪れた際、新たに16歳選挙権が実施される州において、行政からのサポートも受けながら、16歳選挙権キャンペーンをこの州生徒会が主催して行っていた。欧州諸国においては、生徒会の活動は、既に学校内の問題に限らず社会全体に関わる仕組みになろうとしているのだ。

一般社団法人生徒会活動支援協会では、地方自治現場における高校生が参画する仕組みとして、新たに各地域ごとに生徒会のネットワークを構築する「地域生徒会」を提案している。

日本生徒会・地域生徒会イメージ(出典:筆者作成)

自治体と連携した「地域生徒会」によるまちづくりへの参画は、高校生に限らず、中学生、手法によっては児童会との連携も考えられる。日本では18歳選挙権対策として考えられている事の多くは、高校生を対象にしたものだが、欧州諸国における子ども若者の参画は、小学校低学年、場合によっては幼児を対象としたプログラムまであり、年齢や成長に合わせて段階的なプログラムが整備されている。子どもの権利の視点からも、形式的な意見表明ではなく、子どもたちの意見が実際に反映される仕組みを構築することが重要だ。そのためにも、教育とこうしたまちづくりにおける住民参画との連携には大きな可能性がある。「地域生徒会」はまさに、その具体的な仕組みである。

筆者は、千葉市でこども若者参画・生徒会活性化アドバーザーも勤め、自治体現場におけるこども若者参画の仕組みとして生徒会を活用した新たな先導的モデルを構築しようと取り組んでいる。千葉市では市内公立中学全55校を対象として、生徒会交流会を実施しており、前述の欧州など世界における先進事例を共有しながら自ら理想の生徒会をグループワークで考えていく研修を実施している。今月行われる生徒会交流会では、さらに生徒側からの提言も行う予定である。

若者参画の視点から見た「新しい生徒会」の可能性

子どもの権利条約が日本で批准された1994年、千葉県の高校生達が「千葉県生徒会連盟」を設立した。この活動をきっかけに「生徒人権プロジェクト」を立ち上げ、子どもの権利条約を高校生の権利に置き換え「生徒人権宣言」として発表。校長、首長、教育長、文科省、外務省などに公開質問状を提出し、記者会見まで行いメディアにも取り上げられた。こうした活動の原点が「生徒会」だった。

あれから四半世紀が経とうとしている。国内においても18歳選挙権に続き、秋の臨時国会には18歳成人実現とも言われ、被選挙権年齢引き下げについても具体化してきた。こうした中、さらに若い世代の声をどう社会に反映していくかは、今後の大きな社会課題と言える。特に自治体などでは、政策形成過程におけるPI(Public Involvement =住民参画)の重要性が言われるようになって久しい。18歳選挙権実現以降は、子どもや若者を巻き込んだ仕組みについても目にするようになってきたが、一方でこうした自治体現場においてもそのほとんどは形式的なものに過ぎない。

日本では常に当事者である子どもたちを主体者として位置付けることがなかったが、時代は変わったのだ。視点を転換すれば、当事者である子ども若者たちが最も影響を受けるのは、学校生活であり、学校と家の周辺の地域の問題である。こうした彼らが当事者として影響を受ける課題について、自らが考え、アイデアを出し、議論・決定、提案を行っていく場や環境を創っていく事こそが、求められているのではないだろう。

全国の生徒会役員からの文部科学省への提言

5月19日、早稲田大学で行われたイベントで、高校生たちから、生徒会の全国組織である「日本生徒会機構」の取り組みが発表された。

日本生徒会機構では、今年3月に全国約70校から生徒会役員80名を集めて「第一回日本生徒会」を開催。全国の生徒会役員が生徒会活動の課題を共有するとともに、生徒会活動のさらなる進化を目指し提言を作成。文部科学大臣宛などの提言書を作成し、手渡したという。

提言の内容

文部科学大臣
松野 博一 様

第一回日本生徒会 提言書
~日本の生徒会をより活発なものとするために~

日本生徒会一同

1. 提言の背景

我々日本生徒会一同は、生徒会活動に可能性を感じています。それは学校生活の様々な点を生徒の手で自ら変える事ができるからです。そして、日々の生徒会活動を通じて活発にしようと努力を重ねてきました。しかし学校生活をより良いものにしようと活動を行うなかで多くの課題を感じていることもまた事実です
我々、日本生徒会一同は、全国の高校生の生徒会役員との議論を通じて、上記の課題が全国各地の生徒会に共通する事柄であることを認識しました。本提言書では、我々が理想とする生徒会像を考え、現状の生徒会を理想の生徒会に近づけるための提言をまとめました。本提言書をもとに、日本全国の生徒会がより活発に活動することができるようになることを望みます。

2. 我々が目指す生徒会

我々が目指す生徒会は以下の様な生徒会です。

  1. 生徒が主体的に動く生徒会
  2. 生徒の活発な議論を可能にし、生徒目線で学校生活に対する提案を考えられる生徒会
  3. 私たち生徒会が考えた提案を、学校側との適当な協議の上に実現できる生徒会
  4. 生徒会に関することについて、特に反対されたことなどに関して学校側に情報開示を求め、必要があれば学校側と議論の場を持つことができる生徒会
  5. 学校側と対等な立場で話し合いの場を持ち、学校に関する問題について議論し決定に参加できる生徒会
  6. 広範囲の生徒と協力しながら、生徒目線で意見を発信できる生徒会
  7. 発信した意見をもとに大人と対等な立場で議論できる生徒会

3. 提言

私たち日本生徒会の参加者一同は、「我々が目指す生徒会」を達成するために以下の項目の実現を提言します。

  1. 学校長・教職員と生徒会との議論及び情報共有の場の設置
  2. 全国的な生徒会組織の設置
  3. 地域ごとの生徒会組織の設置
  4. 地域行政に高校生の声が反映される仕組みの構築
  5. 教職員・生徒に対する生徒会活動への理解をすすめる取り組みの実施
  6. 生徒会の権限の明確化
  7. 生徒会活動に関する全国的な実態調査の実施
  8. 生徒会支援のための取り組み
  9. ホームルーム運営への生徒会参加の仕組みづくり
  10. 生徒会役員に対するインセンティブの提供

<参考>提言の理由及び内容

(1)学校長・教職員と生徒会との議論及び情報共有の場の設置

生徒会活動を行なう上で、提案した議題がどのような過程で学校長・教職員の間で議論されたかがわからないまま却下されることが多い。また、教職員間、教職員と生徒会間の情報共有の不備から活動上様々な不都合がある場合が多い。こうした点を改善し、生徒会が提案した議題の裁可に対して生徒会が関与するために上述のような場が必要である。学校によっては、議論内容に、生徒会活動に関する件以外に、学校生活に関する件を含めてもよいし、参加者に保護者を加えてもよい。

(2)全国的な生徒会組織の設置

生徒会活動には、一生徒会だけでは解決できない多くの学校に共通する課題がある。こうした課題を解決し、全国的に活動を活発化させていくためにも、全国的な生徒会組織を設置し、我々の意見を文部科学省等に届ける仕組みが必要である。

(3)地域ごとの生徒会組織の設置

現在、各地で生徒会のネットワーク組織が活動を行っているが、参加する学校は依然一部に限られている。こうした活動を通じて、同じ課題に取り組み、悩みを共有する仲間を作ったり、他校の活動を知ったりすることは、自校の生徒会活動を活発化するために有効である。そのため、こうした活動は全ての高校生徒会を対象に行われるべきであり、地域ごとの生徒会組織が必要である。

(4)地域行政に高校生の声が反映される仕組みの構築

あいさつ運動や地域清掃運動など地域と生徒会が連携する取り組みは増えてきているが、高校生が当事者として地域行政に提案するなど高校生の声が聞かれる機会はほとんどない。地域行政に高校生の視点を取り入れるため、提言や参画など高校生の声を反映するための仕組みが必要である。

(5)教職員・生徒に対する生徒会活動への理解をすすめる取り組みの実施

生徒会活動を行なう上で最も大きな問題は、教職員・生徒の活動に対する無理解、無関心である。この点を改善するため、生徒会に関する理解をすすめるための教員研修を実施したり、生徒会活動の意義をまとめた文章を文部科学省が発行したりといった取り組みが必要である。

(6)生徒会の権限の明確化

生徒会活動を行なう上で、我々が何を出来るのか、教職員との間で認識の齟齬が生まれ、結果的に活動がうまくいかないことが多い。生徒会が実際に何をできるのか、より具体的に権限を明確化することで活動が活発化すると考える。

(7)生徒会活動に関する全国的な実態調査の実施

生徒会活動を行っていく中で、物事をどのように進めていいかわからず、うまく実施できないことが多い。実態調査を実施することで取り組むべき事柄や方法が明確化したり、教職員と議論する際の材料となったりする。また、生徒会活動の現状を把握しより実践的な提言を作る上でも必要不可欠である。

(8)生徒会支援のための取り組み

生徒会活動に、専門家などの新たな視点を取り入れる事は、活動の活発化のためにも重要である。そのため、生徒会活動に関する専門家の意見を聞くことが出来る仕組みを作るなどの様々な取り組みが必要となる。

(9)ホームルーム運営への生徒会参加の仕組みづくり

現在、一般生徒が当事者として生徒会活動に関与する環境が整備されず、生徒会が一般生徒から遊離してしまっていることが多い。生徒会が生徒の意見を代表した組織であるためには、各ホームルーム単位での活発な議論が不可欠である。この運営に対して一部生徒会が参加し、ホームルームで生徒会活動に関する活発な議論を促し、生徒が主体的に生徒会活動に関与する環境作りを行なうことが生徒会活動の活発化に繋がる。

(10)生徒会役員に対するインセンティブの提供

生徒会は現在、慢性的な担い手不足に苦しみ、選挙も実質的には形骸化してしまっている。こうした問題点を解消するために、生徒会活動に取り組む役員に何らかのインセンティブを設けることが必要である。一例としては役員の活動に一定の給与が発生するような仕組みづくりなどが考えられる。

投稿者プロフィール

高橋 亮平
1976年生まれ。明治大学理工学部建築学科卒業。一般社団法人生徒会活動支援協会理事。他に特定非営利活動法人Rightsや一般社団法人日本政治教育センターの代表理事も務める。市川市議、松戸市政策担当官・審議監、中央大学特任准教授など経て現職。国民投票法改正案につき衆議院法制審議会で参考人を務める。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミア新書)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。