生徒会.jp
  1. TOP
  2. 記事
  3. トピックス
  4. 継承される価値、見直される在り方:生徒会大会2017が開催

継承される価値、見直される在り方:生徒会大会2017が開催


12月26日、成城中学校・高等学校(東京・新宿)にて生徒会大会2017(主催:首都圏高等学校生徒会連盟)が開催された。今回の生徒会大会は、関西生徒会連盟などの他団体に協力を依頼したことなどもあり、関西各県や福岡県からの参加もあり、各地から64校計117名の参加者を集めた。

大会は6つの役職(会長・副会長・内務・外務・文化祭・広報)を基本に、全15議題が設定され、午前・午後を通して、各議題で個性的な議論が展開されていた。また、昼食時には、参加者間の相互親睦を目的とした「話題別交流会」が催された。話題としては老後や海外留学、恋愛などといったざっくばらんなテーマに関して、和やかに盛り上がっていた。

4班の議論会場の様子

全議題の終了後には、小講堂にてカテゴリごとに発表が行われた。各班の発表は非常に示唆に富む内容であったが、山本康太さん(海陽中等教育・2年)を議長とする内務議題「学校改革と生徒会の関係」は特に印象深い内容であった。「学校が文化祭の外部公開を禁止する」ケースを想定し、その際の生徒会が考えるべき対応に関して発表したものだ。学校側と交渉を行う際に、地域の住民や保護者を巻き込む仕組みを提案していた点は他の議題が持っている視点とは大きく異なっていた。国内における同様の取り組みとしては“三者協議会”などが挙げられるが、今回の提案として出されたことは、重要な意味を持つということができるだろう。山本さんに議題を設定した理由を聞いた。山本さんは「学校が大きな改革のさなかにある」その一方で「生徒会が生徒の代表機関として思うように意見の収集・発信が出来なかった」ことが悔しかったそうだ。その事が議題設定の理由だと話す。「学校内での大きな改革はどの学校でも起こりうる事例」という山本さん。「だからこそ自らの学校で起こった事を参考に、学校改革に関して他校の生徒会役員とも考えたかった」とも話す。議論を終えてみての感想を聞くと、「最初は議題に十分な人数が集まらないのではないかと考えていた。しかし実際には、多くの参加者が集まってくれた。議論を通して、多様な価値観に触れながらも一定の方向を向いた結論を出すことができた。とても意義があった」ということであった。

参加者の横山公士さん(福岡大学付属大濠・高3/写真)に感想を聞いた。関西生徒会連盟副代表の栗林さんに紹介を受け、今回参加したという横山さんは「九州とは違い、参加人数がとても多く、学校が会場として使えるなど先生のバックアップも感じられる」と驚いたそうだ。大会で議論に参加をして「関東の学校は日頃から情報共有ができている」と感じ「日誌をつけるなどの引き継ぎ方法はぜひ持ち帰って実践したい」という。また「自分は引退しているが、後輩にも参加を勧め、先生からの信頼も得ていきたい」と今後の展望を聞くことができた。

本大会の協力として名前を連ねる関西生徒会連盟で議長の経験もある三浦よもぎさん(兵庫県立長田・高2/写真)に関西と関東との”差”について質問をしてみた。三浦さんは「関西には良い意味でのワイワイ感があるが、関東では適度な緊張感があり、運営もしっかりと行われてるように感じた」という。また、議論を進めて行く中で、「当たり前のことをあえて疑うのは生徒会に限らず、とても大事なこと」だと実感したようだ。今後もぜひこのような会を開催してほしいという。

7班の議論の様子

内務議題「理想を少しでも現実に!」で議長を務めた不二山七海さん(森村学園・高1)と書記を務めた川越楽矢さん(浅野・中3)にも話を聞いた。不二山さんは外務活動に取り組み始めてから一年が経つそうだ。「だからこそ、(外務活動に取り組み始めた際に)最初に考えていた理想や現実に関して、様々な学校の人と議論を重ね、改めて考え直すことで原点に立ち返りたい」とこの議題を設定したという。企画段階では、理想と現実の“ギャップ”に迫ろうと考えていたという不二山さんだが、「ギャップに迫ろうという考え方は視野が狭かった」と議論中に感じたという。「ギャップに迫ることができるだけ現実と理想の両面を考えることができていなかった」ことを理由として挙げてくれた。そこで不二山さんは”ギャップ”に迫るのではなく、理想と現実の両者に改めて迫る様に議論を展開したと話してくれた。川越さんは議論の過程で「生徒会活動をしていると、先生や制度に責任を押し付けてしまう事がよくある」と言う。しかし、今日の議論を通して「しかし実際には先生や制度に根本的な問題があるのではなく、生徒の取り組み方に本質的な問題があるのではないか」と気づくことができたといい、今後「同級生と共に、後輩達の模範となることができるよう、自分たちが積極的に活動していく」際に活かしていきたいと考えているそうだ。

左から川越さんと不二山さん

不二山さんは「生徒会役員は行事の準備などに割かれる時間が多い」と実感しており、だからこそ「原点を考える重要性に目を向け、それを考えることに時間を使う意味がある」ということを議論を通して学んだという。また、来年度に向けての抱負を聞くと「最近は徐々に責任を実感し始めている。年度明けには高2になる身として、しっかりと原点や目標を見失わないように自分の中で目標設定をして、走り続けていきたい。」と語ってくれた。川越さんにも抱負を聞くと「高校生になることで責任が増える。また、後輩が増えるので、下手に失敗をすることができない。自分が教えていく必要がある」と考えており、「自分自身がやるべきことをしっかりとこなしていきたい」と頼もしく答えてくれた。来年度様々な団体の中核を担う次世代の議長・書記が多かったことも、本大会の特徴と言えそうだ。

最後に、本大会を主催した首都圏生徒会連盟代表の井澤大樹さん(城北・高2/写真)に話を聞いた。井澤さんは「仕事の割り振り方法」が大会開催にあたっての最大の課題であったという。ただ、多くの仲間と共に準備を進めた結果、本人も「最高です!」という程の出来栄えを感じることができたそうだ。

生徒会大会は2012年に初めて開催され、首都圏高等学校生徒会連盟(高生連)・高校生徒会懇談会(高生懇)という首都圏地域における二大団体に加えて多摩生徒会協議会や首都圏中学校生徒会連盟など多くの団体が共催するものであった。しかし、高校生徒会懇談会が生徒会団体ポラリスや高校生徒会会談へと変化を遂げた近年は、首都圏高等学校生徒会連盟が単独で主催する形式となっている。そうした流れにおいて、今回関西生徒会連盟などに協力を依頼したことは画期的であるといえるだろう。しかし、年一度の開催である生徒会大会に意義を見出し、運営に加わる者、当日参加する者など多くの中高生が本大会に関わっていることは今も昔も変わらない。だからこそ、来年度以降も、生徒会大会という枠組みを継承し、発展させていくことが、参加者に留まらないより多くの中高生に利益をもたらす事となるだろう。今後の展開により一層注目していきたい。

2012年に初回が開催された生徒会大会。当時は首都圏地域の各団体から多くの参加者が集った。(明大中野)

【写真】荒井 翔平/一般社団法人生徒会活動支援協会 理事長

投稿者プロフィール

アバター画像
栗本 拓幸
1999年生まれ、東京都出身。浅野高校卒、慶應義塾大学総合政策学部在学。統治機構改革、若者の政治参画、憲法改正などが主たる研究・関心領域。他、キャリアに関する授業登壇、AO入試対策など多数。Podcast「この○○の片隅から」配信。2019年度限りで理事を辞任。