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生徒会会則を見直そう、回顧録を兼ねて


先日、ある後輩から「生徒会会則の改定ってどうやるんですか?」という質問を投げかけられ、過去の自分自身の取り組みを振り返った。生徒会活動において「会則」の存在とは、その規範性やある種の絶対性がある故に無視することはできないものの、法律にも似た小難しさから取っ付きにくい印象があることは否めない。しかし、会則がルールである以上は定期的に見直しを加え、議論を継続的に行うことは欠かせない。今回のコラムでは、生徒会会則の改定について、自身の回顧録を兼ねて記していきたい。

そもそも生徒会会則とは

生徒会会則とは一体何であろうか。生徒会によっては、その存在は知っていたとしても、日頃顧みることなく活動を行なっているところも多いのではないだろうか。

生徒会会則とは、特定の学校における生徒会組織の枠組みを設定し、その運用の在り方を定める、いわば「生徒会の基本法」である。学校によってその体裁は様々である為、一概に議論を行うことには難しいところがあるが、基本構造は「本則」及び「細則」によって成り立っていることが大概であろう。それらの性質に関して述べるとすれば、本則は「生徒会組織の枠組みと基本的な運用に関するルール」が定めるものであり、「細則」が本則の内容を部分的に補完する形でがより詳細なルール設定を行うものである。

生徒会会則の見直しがなぜ大切なのか

ここまで述べてきた様に、生徒会会則が各学校の生徒会組織の枠組みとその運用を定めるものである以上、生徒会会則を見直すことは、自身の生徒会(活動・組織)の自己評価に繋がると言って良いだろう。生徒会活動が「遊び」では無い以上、会則で定められた様々な目的や目標、運用方法に従って生徒会組織の運用がなされているか、振り返り・チェック・評価を行うことが大切となるためである。

このチェックや評価の過程で、生徒会会則の条文が現状と余りにもかけ離れていたり、あるいは生徒会の目的・目標に向けた行動を行う際に何らかの形で障害となる条文が存在したり、あるいは様々な事象を原因として、特定条文の運用が著しく困難であったりする場合に、生徒会会則の改定を検討する必要が求められる。

どうやって生徒会会則を改定するのか

では、実際に生徒会会則の改定を行うことになった場合、どの様な手順を踏めば良いのだろうか。自身に経験則に基づいて話を進めていきたい。

上手くいかなかった「思いつき」

そもそも、筆者自身が生徒会会則を改定する必要性を感じ始めたのは、生徒会活動を始めて2年目の夏である中学3年の頃であった(※筆者は当時中高一貫校に所属)。慢性的な活動停滞や人手不足に悩まされていた生徒会活動に何か変化を起こすことが出来ないだろうかと思案していた結果、たどり着いた結論が「生徒会会則を見直す」ということであった。当時、自分自身で自校生徒会の会則を読み直し、修正を加えた上で、「生徒会会則の改定案」を私案としてまとめ、生徒会顧問部に自身のアイデアとして披露した。今から振り返るとそのレベル感や内容から当然ではあるが、一笑に付され、進展を見せることはなかった。

客観的に当時の問題点を振り返ってみれば、以下3点を挙げることが出来るだろう。

  • 会則の見直しを個人ベースで行なったこと
  • 生徒会執行部や顧問を含めて一切の根回しを行わなかったこと
  • 過去の生徒会会則改定プロセスに関する研究を十分に行なっていなかったこと

いかに会則改定の推進力を得るか

この経験ゆえに、筆者自身はその後も生徒会会則を改正する必要性そのものは十二分に理解しながらも、次の策を展開することに対してためらいがあった。しかし、およそ1年後に生徒会長選挙へ立候補したことが大きな転機となった。筆者はその選挙において、“生徒会会則の見直し”を公約の一丁目一番地に掲げた。この事は、その選挙が信任投票であった為になし得た技ではあったが、生徒会会則の改定の実現に向けた推進力を得るには十分であった。何故ならば、選挙で信任を得たことによって“生徒の中に「会則を改定してほしい」という意思がある程度存在する”という説明が、生徒に対しても、教員に対しても、無論生徒会役員に対しても可能になった為である。

とは言え、選挙の結果によって「民意を得た」という論拠が可能だとしても、掲げる旗印がなければ何ら意味をなさない。そこで生徒会執行部内に「会則改定委員会」という組織を立ち上げ、複数人で生徒会会則の見直しを進めながら、生徒会の広報媒体などで全校生徒に対して「会則について何か思う事はないか」と問いかけを行なった。他にも、会則に基づいて組織されている委員会のトップなどに対して直接ヒアリングを行うなど、出来るだけ幅広い視点から会則の見直し・改正案の策定を進めることが出来る体制を整えた。また、過去に行われた生徒会会則改定の例や他校生徒会における事例などを研究し、実際に生徒会会則の改定を実施する際に、どの様な手順を踏んで行けば良いのか、詳細な検討を行なった。

それでも困難な会則改定

ここまで述べてきた様に、筆者としては「独りよがり」にならない改正案の策定体制と「行き当たりばったり」に陥らない為の改正プロセスを曲がりなりにも追求した上で、改正案の策定を行い、顧問との折衝を行なったのだが、それでも困難は多く存在した。

生徒会顧問からは、改定委員会が取りまとめた改正案の文言等に関して、細部にわたる指摘が再三なされた他、改正部分の絞り込みも複数回にわたって要求された。あるいは、生徒会執行部内からも会則改定に時間的・人的資源を投入することに若干の疑義が呈された。しかしながら、顧問とは様々な条件交渉などを行い続け、生徒会執行部に対しては、累次にわたって生徒会会則見直しの必要性を説き続けた。こうして、生徒会会則の改定を実際に行う土壌を整え、結果的に生徒総会で改正案を可決・次年度からの施行に漕ぎ着けた。

一連の流れを振り返ってみると、生徒会会則の改定に際しては、以下のポイントが肝要なのではないだろうか

  • 会則改定の推進役の存在
  • 会則改定に関する強い目的意識
  • 会則改定に向けた生徒会役員間の意思共有
  • 先例・他校事例に関する研究

この様なポイントさえ抑えることができれば、生徒会会則の改定という施策も、決してハードルが高いものではないと筆者は考えている。

最後に

会則改正に関して、ここまで粗く振り返った上で、私感を申し上げてきたが、何れにせよ、生徒会会則の改定を含めた見直しという行為は、生徒会活動のコンセプトである『自治』という概念に非常に近いものであると考えている。自分達の行動を規定するルールの在り方に、一度目を向けてみてはいかがだろうか。

【文】栗本 浩幸/一般社団法人生徒会活動支援協会 常任理事

投稿者プロフィール

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栗本 拓幸
1999年生まれ、東京都出身。浅野高校卒、慶應義塾大学総合政策学部在学。統治機構改革、若者の政治参画、憲法改正などが主たる研究・関心領域。他、キャリアに関する授業登壇、AO入試対策など多数。Podcast「この○○の片隅から」配信。2019年度限りで理事を辞任。