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民主主義へのツールとしての「生徒会」:J-CEFスタディスタヂオ


5月25日、東京大学本郷キャンパス(東京・文京)において、日本シティズンシップ教育フォーラム(J-CEF)主催の「日本シティズンシップ教育フォーラム TOKYO スタディ・スタヂオ Vol.1」が行われ、教育に携わる大学生や大学院生、研究者、現場教員、高校生が集まり、「学校の中の民主主義」をテーマにして、研究実践報告が展開された。

概要

日程 2019年5月25日(土)
会場 東京大学 本郷キャンパス
発表 川名 悟史(運営委員):話題提供
主催 日本シティズンシップ教育フォーラム(J-CEF)
資料 川名が行なったプレゼンテーション

内容

  • OPトーク「校則を変えたい高校生のリアルな現状」:筒井太加良氏
  • 報告1「生徒会支援の理想と現状」:川名悟史
  • 報告2「学校の課題について考える主権者教育出前授業」:古野香織氏・別木萌果氏・菅将大氏
  • 報告3「スウェーデンの学校の中の民主主義」:Joachim Hansen氏

議論報告

OPトーク

まず、現役の高校生が自身の学校で校則改正をしようとするうえで大変なことなどが中心に説明された。そこでは、自身の学校の既存の生徒会規則の不十分な点があり、教職員側の「ヒエラルキー」によりなかなか改正するのが困難な状況だそうだ。例えば、生徒会役員が校長先生などに許可をとっても生徒指導部長の教員が許可を出さない限り、企画を進めることはできないことなどがあるという。その上で、何度も生徒総会で審議し、提案書などを提出しても、対応があやふやだという。それを踏まえて、発表者の高校生は、教職員・学生・保護者の三者で構成される「三者協議会」を設置することを思いつき、現在は実現のために活動していると言っていた。その後のグループディスカッションでは、三者協議会を過去に自身の学校で行ったことのあるという大学生が助言等をしていた。

第1報告

次に、第1報告では、川名より生徒会支援を行う上で、学校内での生徒会活動を民主主義と関連付けて説明を行った。ここでは、学校で、民主主義を理解するために主権者教育で“主権者”としての意識や理解を育むための「手段」として生徒会活動等を行っていると考えた。その中で、教育と主権者教育や生徒会活動の本来の目的を確認し、生徒会活動の理想と現実に触れた。生徒会活動の理想は勿論、人によってさまざまである。しかし、現実は何か行動をしても「成功」しない、ということを踏まえ、教員をはじめとした周囲の支援体制がより重要になると訴え、また、最後に「積極的に教員が生徒(生徒会)を評価すること」などの今後の生徒会で必要なことを提案した。

第2報告

第2報告では、主権者教育の出前授業をした報告などを受け、「授業としての主権者教育」の現状を確認した。学校の課題を出し合うことで主権者教育、すなわち民主主義教育を進めることは、生徒からすると規模が大きすぎるため、実感がわかないのではないかという意見などが参加者の中から出た。また、登壇者が主権者教育に関する出前授業を行なって感じるのは、「主権者教育を教えてほしい」というニーズは近年多くなっているものの、「実際に教えることのできる人間」が少ないということだそうだ。今後は、いかに授業の担い手を増やすのかや、どのようにしたらより生徒に、「自分も主権者である」と感じさせることができるかが課題だという。

第3報告

最後に、第3報告では、スウェーデンで社会科教員として勤務した経験のある方が、スウェーデン国内の主権者教育の取り組みを主に、学校内の職場環境の報告を行った。スウェーデンの学校では日本と同じように生徒会はあるものの、スタイルは少し異なるそうだ。例えば、生徒会役員選出の過程で、日本では普通、全校生徒の選挙で決定するが、スウェーデンでは各クラスで1〜2名ほどを選出し、その選出された人の中から会長などを決めたりするという。また、校長先生との話し合いの場を定期的に設けたり、また、地域の議員とも話す機会もあるそうだ。ここで、印象深かったのが、「生徒は、学校のものじゃない。地域のものなんだ。」という言葉だ。学校の環境をより良くするのはもちろんのこと、地域社会の発展にも必要不可欠なものとして捉えられていることは日本でも必要な認識ではないだろうか。また、教員は、「民主主義の守り人(守護神)」というプライドを個人個人が持っているそうだ。生徒が社会に出て、物事を批判的に見る力や、判断する力、責任感などを持つことができるように教育しないといけないという考えがそのプライドの根底にあるのだろう。

最後に

選挙権年齢が18歳に引き下げられ、3年が経過した。その上で、これまで以上に 学校での主権者教育はもとより「民主主義」に関する学習が大切となっている。生徒会活動においても外務活動を積極的に行うことも大事だが、ここで一度自身の学校内の生徒会活動を振り返り、「理想の生徒会」を目指し、日々の活動に取り組むことを期待し、協会もそのような生徒会を支援できるよう活動をしていきたい。

【文】川名 悟史/一般社団法人生徒会活動支援協会 運営委員

投稿者プロフィール

川名 悟史
川名 悟史
2002年埼玉県生まれ。一般社団法人生徒会活動支援協会専務理事。埼玉県立春日部高等学校卒、上智大学総合人間科学部教育学科に在学。高校在籍中は、生徒会会計、文化祭実行委員会会計局・ホームページ局長として活動。第8回全国高校生徒会大会経理部長を務めた。現在は、教育社会学や教育行政学を領域に研究している。