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「生徒会が好き!」~静岡県立富士高校インタビュー後編~


今回も、学校の部大賞を受賞された静岡県立富士高校のインタビューの様子をお届けします。(受賞理由などは、こちらからご覧ください。)
前編はこちらからお読みいただけます。

インタビュー概要

富士高校生徒会本部は、柔軟な組織形態の実現や役員の仕事量の偏りの解消という視点から、新しい生徒会システムである「部署制度」を導入し高い評価を得た。今回、富士高校生徒会長の鈴木康峰さんと生徒会顧問の近藤健先生にインタビューを行い、これまでの取り組みやその背景、今後についてなどの話を伺った。

参加者

<インタビュイー>

  • 鈴木 康峰さん(富士高校・前生徒会長)
  • 近藤 健先生(富士高校・生徒会顧問)

<インタビュアー>

  • 吉水 隆太郎(一般社団法人生徒会活動支援協会理事)

インタビュー

顧問の先生について

吉水:近藤先生にも取材をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。近藤先生は、生徒会顧問やそういった役割に今までどのくらいご経験されてきたのか、お伺いしてもよろしいですか?
近藤先生:今年で本校3年目になりますが、この学校に転勤してから担当しています。
吉水:そうなんですね。生徒会担当の先生方は、特に学校の様々なことやものを生徒自身が動かしていくのを見守っていく立場、あるいは場合によっては監督する立場だと思います。そうした中で色々なご苦労であったり、日々悩まれていることなどあるかと思います。ぜひ、赤裸々にどういった視点や、ポリシーを持って、そういった生徒会担当業務に重視されているのか、お伺いしてもよろしいでしょうか?
近藤先生:ポリシーは、生徒が主体的に動いていろんなアイデアを出して、どんどん自分たちで色々なことに挑戦して動いていくので、生徒のそういう挑戦をできるだけ邪魔しないようにであったり、成功しても失敗しても自分たちで作り上げていくものだと思っているので、そういった面で意識としてはちょっと1歩引いてバックアップする、みたいな形でずっとやってきました。
吉水:そういったポリシーを持たれたきっかけのような経験とかは、あったりするんでしょうか?
近藤先生:とにかく子どもたちの頑張りをバックアップしていこうと思いました。
吉水:何かそういったお考えをお持ちになられた背景、例えばその高校の時の先生がそうであったとか、大学の教職の授業でそういったことをしていたなど、何かそういった今の近藤先生の価値観を形作る原体験見みたいなものもございましたら、差し支えなければお伺いしてもよろしいでしょうか?
近藤先生:そうですね。教員になって今年で10年目になるんですけど、前任校で7年間やってからここへ来て3年で、その中での疑問などが僕の価値観を形作ったものかなって思います。

先生から見た富士高校生徒会執行部について

吉水:おそらく、そういった違和感みたいなものは学校現場の中に、特に教員間であったりだとか、授業であったりだとかあると思います。そうした違和感と生徒さんの生徒会活動を見たときに、「あ、この生徒会活動上手くやってるな」「見習うべきところがあるな」といった、彼らから学ぶところがもしあれば教えていただけますか?
近藤先生:そうですね。今年6つの部署を作るというのは、僕と会長とでもちろん話をしながら進めたのですが、今年がそういう形にしての初年度なので、うまくいかないことも当然あるだろうし、課題も出てくるだろうっていうことを最初に話をしました。その上でとにかくやってみようという形でスタートしました。ただ、部署長についてくれた生徒もその下についてくれた生徒も、みんな協力的に色々やってくれて、本当にうまく回ってるなっていうのをすごく感じることができました。
吉水:おそらく、みんなが協力的に生徒会活動を推進していくところも、富士高校の校風であったりとか、 その生徒の皆様の持つ魅力だったりするのかなと思います。何かそういった魅力のある生徒の方々がたくさんいらっしゃる理由などはどのようにお考えでしょうか?
近藤先生:元々、中学校の中でトップ層の子が集まってるというのが、やはり1番の理由なのかなと思っています。
吉水:なるほど。何かそういう意味では、おそらく非常に相対的にも絶対的にも、レベルの高い活動をきっとやられてきたのだろうという風に考えております。何かそういった生徒の皆さんを支援する立場で、苦労したこと、例えば先生間のコミュニケーションでこういったところが苦労したといった実話があれば、お伺いできますでしょうか?
近藤先生:生徒が主体となって進めていくことなので、失敗も多かったですね。そこのところを理解してもらえずに苦労した場面はありました。
吉水:なるほど。ありがとうございます。おそらく、鈴木さんたちものびのびとやりたいことをトライアンドエラーでやりながら、 成長されてきたのかなと思います。やはりそういった様々な成長機会がある中で、きっとこの1年間でも鈴木さんたちも成長されてたかなと思いますが、どういった部分で「あ、この人たち成長したな」や「あ、変化があったな」っていうようなことを感じられたのか、ぜひ教えていただけますでしょうか?
近藤先生:成長した部分は、まず組織を変えようと言ったところに、序盤から結構成長が見られたと思います。それから先ほども言った通り、最初から他の子たちもすごく協力的にやってくれていたので、そういった面でもとても成長が見られたと思います。
吉水:何か具体的に「一皮むけたな」と感じたエピソードなどありますか?
近藤先生:食品販売の2年生の男の子で、物事をきちっとやりたがるような生徒がいて、ちょっとでもミスや自分が思った通りに行かないと少しパニックになるような子がいたんです。それで文化祭の当日も少し上手くいかないことがあったんですけど、彼が「でも考えててもしょうがないからやろう」と気持ちを切り替えたように見えたときに、「おっ」て思いました。
吉水:なるほど。やはり、様々な人とコミュニケーションを取ったり、錯誤する環境の中で、立ち止まってそのままというよりは、時間が経っているからもうちゃんと前に進もうとする、いわゆる前進力のようなものが総体的に上がっているように感じました。

大人として見た姿や大賞受賞による反響について

吉水:少し質問が変わりますが、教員という役割は一旦さておき、1人の大人として今の生徒会役員、鈴木くんをはじめとした学校の生徒会役員を見たときにどのような人たちだなという風に思いますでしょうか?
近藤先生:そうですね、彼らの活動を見てて、生徒会活動は自分のためではないことが多いかなと思います。だけど、なぜこんなに頑張るんだろうとも感じています。やっぱり、学校の文化祭を成功させたいとか、校則も靴下を変えたいとかっていう風に意欲的に取り組んでいて、学校を良くしていこうと思っている子たちが集まって運営してくれていると思います。他の生徒と比べると、生徒会に費やしている時間は当然勉強ができません。だけれども、学校をよくしていこうっていう思いで動いてくれているので、ものすごく気持ちがいいと思います。
吉水:今回、大賞を受賞されたことでメディアの反響等が大きかったと思います。何か大賞の前後で、周りからの生徒会に対する評価であったりだとか、見られ方みたいなところの分かりやすい変化のようなものはあったりしましたか?
近藤先生:まず「おめでとう」というのは、すごく言ってもらえました。日本一ということで、その反響はとても大きかったです。今まで子どもたちも頑張ってきましたが、それがより大賞という形になったことで頑張りが認められたというか、今まで「生徒会だから活動するのは当然」みたいな、なんとなくぼやっとしていたところが、「はっきりと持っていたんだね」といった感じになったという風に思います。
吉水:ありがとうございます。我々としても、そういったことを1つの目的としているところがあります。生徒会活動はどの学校でも大体行われていると思いますが、やはりどこか客観視できない部分があると思います。なので、結局1代で活動の幅が終わってしまうこともあります。あとは、ある意味で期待値を見誤る先生方も結構いらっしゃいます。その集団としてどういった行動を起こし、どのような成果を出したのかを賞の審査を通じて可視化させていただくということで、非常に我々の考えているところが果たせているのかなと感じました。

最後に

吉水:最後になりますが、今後の教員としてのキャリアプランであったり、その生徒会に携わる人間としての展望、ないしはそれ以外はきっとキャリアチェンジっていうのも今世の中だとあると思いますが、何かそういった展望のようなものがあれば、教えていただけますでしょうか?
近藤先生:ペーペーで授業をやって子どもたちと触れ合っていたいということです。あと後任の人に求めることは、やっぱり生徒のことをちゃんと見ていってほしいなということです。
吉水:ありがとうございます。最後に、このインタビュー記事を多くの学校の生徒会の担当教員の皆さんに、ご覧いただくことを1つ目的としております。何か大賞を受賞された学校の顧問の先生として、全国の生徒会担当の先生方の皆様に、何かメッセージなどございましたらお願いします。
近藤先生:子どもたちのやりたいように、やらせてあげましょう。
吉水:インタビューは以上となります。鈴木さん、近藤先生、本日はありがとうございました。


静岡県立富士高校生徒会の様子は、テレビや新聞など様々なメディアにも取り上げられています。

静岡新聞
富士高に全国「生徒会大賞」 部署制度導入し活性化 校則変更のルール明示 県内初 最高賞(2022.5.29)

富士市の富士高生徒会が、全国の生徒会の優れた取り組みを表彰する「生徒会大賞2022」(一般社団法人生徒会活動支援協会主催)で最高賞の大賞を県内で初めて受賞した。組織改正によるメンバーの負担軽減や校則変更手順の明示などの運営改革などが評価された。鈴木康峰会長は「有識者に評価されてうれしい。今後も新しい挑戦をしていきたい」と喜ぶ。

同生徒会は2021年度から「部署制度」を導入した。正副会長に集中する業務を分担し、生徒会本部メンバーも活躍できる仕組みに見直した。集会、総務、環境、内務、会計、広報の6部署を設け、部署長中心に業務を検討することで生徒会本部メンバーの責任感や積極性が増した。各部署に必ず1、2、3年生が所属し、次年度に経験者がいる体制を構築。引き継ぎの手間が減り、新たな挑戦がしやすくなった。
校則の変更手順も生徒会役員と学校側のみで進めることに疑問を持ち、細則を整えた。生徒の提案を生徒総会で諮り、全生徒の3分の2以上の賛同を得た提案を学校側に提起。職員会議承認の上、校長が決定するプロセスを明示した。変更への生徒の支持率が分かり、生徒自身が校則変更に関与できる仕組みにした。
鈴木会長は「生徒会本部のメンバーがやりたいことや業務に楽しく取り組める環境ができた。大賞で学校創立100周年に花を添えられた」と話した。
生徒会大賞は、生徒による自主的な学校運営の活性化を図る目的で2017年に始まり、全国の中高から多数の応募があった。個人と学校の2部門で大賞などが選出された。

 

 

【聞き手】吉水 隆太郎/一般社団法人生徒会活動支援協会 理事
【文】石名坂 陸人/一般社団法人生徒会活動支援協会 運営委員
【構成】猪股大輝/一般社団法人生徒会活動支援協会 理事

 

投稿者プロフィール

石名坂陸人
2002年埼玉県生まれ。一般社団法人生徒会活動支援協会運営委員。専修大学法学部に在籍。大東文化大学第一高等学校在学中に、生徒会長を務め、「生徒主体」をモットーに生徒会組織や学校行事運営の改革などを行なった。