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「生徒会活動を本質的に考える」~坂本優樹さん(神奈川・浅野高校)へインタビュー前編~


「日本生徒会大賞2022」で受賞された学校・個人へのインタビューの模様をお届けする本企画。
今回は個人の部で奨励賞を受賞された坂本優樹さん(浅野高校・高3)です。(受賞理由などは、こちらからご覧ください。)

インタビュー概要

日本生徒会大賞2022個人の部において、浅野高校(神奈川)の坂本優樹さんが奨励賞を受賞した。坂本さんは、常に幅広い視野で生徒会活動を考え、多くの意見を集めることを意識した活動を行った。また民主主義の本質を考え続け、多数決による安易な決定ではなく、徹底した議論を重視してきた。さらに、生徒会活動の実務的な面だけでなく、概念的な部分を盛り込んだ「引き継ぎ書」を作成し、他校の方々へ共有なども行った。今回、坂本さんにインタビューを行った。

インタビュー参加者

<インタビューイー>

  • 坂本 優樹さん/浅野高校 元生徒会長

<インタビュアー>

  • 川名 悟史/一般社団法人生徒会活動支援協会 理事

インタビュー

応募理由やこれまでの活動について

川名:本日はお忙しい中ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。早速ですが、まず生徒会大賞に応募されたきっかけを教えてください。
坂本さん:僕は、生徒会長を務める1年間という短い期間では大きなことができないと思い、次の代へ自分が学んだ知識や経験を引き継いでいくことが何よりも大切だと考えていました。そうした中で、自分の考えを後輩に限らずいろんな人に伝えていくきっかけになればと思い、今回応募しましまた。
川名:ありがとうございます。坂本さんのこれまでの生徒会活動について、どのようなことに取り組まれてきたのか教えてください。
坂本さん:実は、会計や副会長といった役職を全く務めずに高校2年生のときに生徒会長に飛び入りで立候補しました。なので、僕が活動していたのは1年間だけでした。会長になったとき、後輩の方が僕よりも生徒会活動歴が長い状態だったんですけど、自分はこれまでの生徒会活動の経験が無かったので批判精神も強くて、形式主義的な側面もある生徒会を外部の視点で考えることができたと思います。また、その視点から「生徒会活動ってどういう意味があるのだろう」と1年間考えてきました。最初は、公約に掲げていたことを達成しようと取り組んできました。だけど、実際には先生との兼ね合いもあって中々進まないこともありました。そうしたときに、たとえ自分が出来なかったとしても後輩が出来るようにしようと思いました。そして、後輩が達成できるように最高の引き継ぎ書を作ることが必要だと思いました。生徒会は任期が短く、どうしてもプロが育たず、反省などが次へつながらないこともあるので、最高の引き継ぎ書を作ることを軸にして色々とトライした1年を過ごしました。
川名:なるほど。なぜ、高校1年生から生徒会長選挙に立候補されたのですか?
坂本さん:そもそもコロナ禍で時間やエネルギーが有り余っていたので、高校1年生のときから課外活動に次々と取り組んでいました。その中の1つに模擬国連での活動がありました。模擬国連は文字通り国連を模擬したもので、数日間かけて交渉を重ねどの国も同意できるような決議案を作成していきます。何とかみんなが合意できる決議案を作成できた時には達成感を感じられました。だけど、そのあとの報道などを見ていると、「模擬」なので当たり前なのですが、世界は何も変わっておらずそのことに無力感を感じていました。その頃、ちょうど生徒会選挙の立候補受付が行われていました。もし生徒会として活動できれば、個人で活動していくよりも活動の幅が断然に広がると考え、自分も立候補してみました。
川名:何か課題感を持って生徒会活動に取り組まれてきたと思うのですが、生徒会長として活動していく中で改善できたことや、何か発見したことなどはありますか?
坂本さん:当たり前かもしれないんですけど、「生徒会は学校を変えるための組織ではない」ということは、自分の中では驚きとまではいきませんが大きな発見だったと思います。
川名:「学校を変えるための組織ではない」ということは、逆に、生徒会はどういうところだと感じましたか?
坂本さん:生徒会はあくまで「学校にある教育機会の1つ」だと感じました。
川名:なぜそのように感じられたのでしょうか?
坂本さん:そう感じるようになったきっかけは分からないんですけど、原理的に考えてみれば、生徒会の起源は生徒からの働きかけによるものではないんですよね。学習指導要領を読んだり、生徒会の歴史について調べたりして、そう感じました。

引き継ぎ書について

川名:さて、「引き継ぎ書を作ることを軸に活動した」とのことでしたが、活動を通して学んだこと、感じたことは何でしょうか?
坂本さん:「生徒会役員として生徒会活動を行うのなら、綿密に議論を行うということは必要不可欠だ」ということを引き継ぎ書に書いたのですが、生徒会活動における議論の重要性は改めて学ぶことが出来たと思います。何かを変えることが目的でなく変えるための過程に成長機会が見出されていて、学年などに関係なく活発に議論を行い民主主義的な精神を育むということが目的なら、もちろん議論するというのは重要です。仮に生徒会が学校環境改善のためにあるとしても徹底的に議論を行うのは重要で、いずれにしても議論を重ねることは重要なのだと思いました。「引き継ぎ書を作ることを軸にした活動」って実際には、少し普通とは違う視点で活動とか「それが理想像だけど実際難しいでしょ」みたいな活動に取り組んでみて、その経験を引き継ぎ書にまとめてみるということだったんですよね。例えば、生徒からの期待に応えるというのが生徒会の至上命令としてあると思うんですけど、生徒が必ずしも望んでいるわけではないことをしようと思って活動したりもしました。具体的には、パソコンが下の代に配布されたときに、そのパソコンでYoutubeをずっと見て遊んでいる人が多かったので、それを規制しようという提案をしました。でもそれは、多数決という観点で見たら「生徒の投票で過半数の賛成が得られるのか?」ということにもなるし、また「生徒が本当に望んでいることなのか?」となれば、それは民主主義の実践の場としての生徒会の活動を放棄しているようにも見えるんですよね。このように、生徒から望まれていないけれどやらなければならないことがあったときに、「生徒会の本来の目的を失っている」と反論できる状況にあるんです。じゃあ多数決で多数派を占めれば何でもいいのかと言えばそういうことでもないですよね。多数の同意することを真理とみなして誤った方向に行ってしまう可能性があるというのは民主主義の問題点の1つなんです。民主主義の実践の場として民主主義の有する問題まで模倣するべきだというのは間違いだと思っていて、じゃあその折り合いをどうつけるかを考えて、「非民主的ではないけどその問題点を克服していてかつ教育機会としても機能している」状況を何とかして作り出せないかと試行錯誤していました。さっきのパソコンの件がまさにそれで、引き継ぎ書で詳しく説明をしました。あまり上手く説明できなかったなという後悔もありますが。引き継ぎ書を軸にした活動で面白いと感じたのは、そういう、民主主義の問題点を部分的にでも克服しようとする試行錯誤の繰り返しでしたね。
川名:お話を聞いていますと、生徒会という存在を良い意味で抽象的に捉えられていると感じます。生徒会役員でHow to系を意識する方が多い中で、坂本さんがこのようにマクロな視点で生徒会について考えられるのはなぜでしょうか?
坂本さん:本を読んできたことが大きいと思います。でも、決して生徒会を考察しようと思って入ったわけではないんです。ただ、自分が分析して何らかの説明を与えたがる性格であったり、学年にそうやって考え抜くことが好きな人が多かったりしたことは影響したのかもしれません。あと、ネットとかで他校の人の外向けの生徒会活動を見たりする中で「生徒会について考えているのかな」とか「それって本当に生徒会のためになってるのかな」と疑問を持つことがありました。他にも、色々と他校の人と話をする中で、運営の効率化などを中心に考えている人が多いと感じて、生徒会の機能などについて考えている人は少ないような印象を持っていました。自分は逆に「人があまり考えていないこと」を考えようと思ったんです。やはり、次の世代に「知」を伝えていくことを考えたときに、How to系を考えている人は多いなら、自分は他の人が考えていないことをまとめる方が、新たな視点を提示できて他の人の役に立てるかなと思っていました。

後編は12月29日に公開予定です。
坂本さんが作成した引き継ぎ書も公開していますので、下のリンクよりご覧ください。
引き継ぎ書はこちらから。
なお、引き継ぎ書の公開に際し、学校や個人の情報に関連した箇所を削除・修正しています。

インタビュー時の様子


【聞き手】川名 悟史/一般社団法人生徒会活動支援協会 理事

【文】石名坂陸人/一般社団法人生徒会活動支援協会 運営委員

投稿者プロフィール

石名坂陸人
2002年埼玉県生まれ。一般社団法人生徒会活動支援協会運営委員。専修大学法学部に在籍。大東文化大学第一高等学校在学中に、生徒会長を務め、「生徒主体」をモットーに生徒会組織や学校行事運営の改革などを行なった。