生徒会で探究的な地域活性をめざす新たな事例:「第10回日本生徒会大賞」受賞者インタビュー 滋賀県立虎姫高等学校
2026年6月14日に行われた「第10回 日本生徒会大賞」決選大会。高校生・学校の部での日本生徒会大賞には、開始から初となる2校が選ばれました。
1校は、生徒自治という本質に向かうモデル事例、もう1校はこれまでの生徒会活動とは異なる新たな取り組みの事例でした。
今回は、その新たな生徒会の取り組みとして受賞した滋賀県長浜市にある創立106年になる滋賀県立虎姫高等学校(以下、虎姫高校)の事例を紹介します。
今回、虎姫高校から発表されたのは、生徒会が「滋賀のわプロジェクト実行委員会」を立ち上げ、地域と共に新たな学習活動を立ち上げようとする試みでした。
生徒会で探究的な地域活性をめざす「滋賀のわプロジェクト」
「滋賀のわプロジェクト」は、少子化や人口減少が加速する地元滋賀県の未来を憂い、学校を拠点とした双方向型のコミュニティスクールを構築しようという挑戦が背景にあります。地域経済分析システム(RESAS)の予測によると、滋賀県は2050年までに人口が現在から約20万人も減少するとされており、それに伴う地域コミュニティの希薄化や担い手不足、伝統行事の維持困難といった深刻な状況にあるとされています。
これまでは学校と地域が分断され、互いのリソースを十分に活かし切れていない現状がありましたが、生徒たちはこの巨大で複雑な問題に対して「高校生には無理だ」と諦めるのではなく、自分たちにとって最も身近な存在である「学校」を地域に開くことで、新たなコミュニティの場として活用していけないかとこのプロジェクトを考えたそうです。

「滋賀のわプロジェクト」が目指す「双方向型コミュニティスクール」とは、学校で生徒だけが学ぶ従来のスタイルを超え、地域住民、地元企業、行政、そして豊かな自然資源が学校という場に集い、多世代・多業種が縦割りを越えて協働するエコシステムとのことでした。地域から生徒へのみならず生徒から地域へと双方向に学びと貢献が循環し、地域の伝統や自然資源を教材として学び直すことで、新たな価値を見出して地域へ還元し、全方位から滋賀の魅力を再発見する取り組みが進めているといいます。
具体的な活動は、「漁業」、「森林」、「伝統文化」、「工業」という4つの分野に分かれて行われており、放課後17時半から地域の専門家を招いて講義を受ける「夜の学校」という座学のステップと、実際に現場へ赴いて本物に触れながら座学での疑問を検証する「フィールド体験」という実践のステップの2段階で深い学びと地域への愛着を育んでいるとのことでした。

滋賀県立虎姫高等学校では、こうした取り組みを通じて、生徒たち自身の心情にも劇的な変化が生まれたと言います。活動を始める前は地元に対して無関心で、どこか受け身の姿勢であり、自分たちの活動に自信を持てずにいた生徒もいたそうですが、プロジェクトの終わりには地域への深い愛着と、自分たちが地域を支えるという強い当事者意識が芽生え、自ら進んで地域の魅力を周囲へ伝える発信力を身につけることができたそうです。この変化は、SDGsの視点から見ても「環境」「経済」「社会」の3つの側面において新しい価値を創造しており、海の豊かさや陸の豊かさを守る活動、地産地消によるCO₂削減、シビックプライドの醸成、多世代交流といった多くのゴール達成に寄与していると話していました。
近隣高校の生徒会や自治体、企業も巻き込んだ「滋賀会議」も設立
滋賀県立虎姫高等学校では、さらに次なるステージとして「滋賀会議」という取り組みも行っているそうです。この会議には、近隣高校の生徒会や地元の長浜市、大学、一般社団法人、民間企業などが一堂に会し、1年間のプロジェクト成果を共有して活動の認知拡大を図るだけでなく、大人と高校生のあらゆる視点を交えて地域課題を多角的に分析するディスカッションや、次年度に向けた具体的な共同実験計画の立案が行われます。学校をプラットフォームとして地域全体で持続可能に支え合うネットワークを構築し、調査、実践、発表、検証という年間活動サイクルを回しながら、生徒たちはこれからも学びを地域へ、地域を学びへと繋ぎ、ふるさと滋賀の未来を力強く創り続けていくそうです。

一般社団法人生徒会活動支援協会では、生徒会の本質とは何かを捉えて活動することが重要だとし、「新しい生徒会」としてこれからの時代に求められる生徒会活動の必要を訴えてきました。今回の取り組みは、探究学習としての質や中身に着目したものではなく、探究的学びが取り組む社会課題の当事者である高校生自身が、「こういうことをやりたい!」という思いを持ち、それを生徒会活動を通じて生徒たちはもちろん、学校、地域まで巻き込んで実現しようとした点を、生徒会活動活性化に向けた「新たな生徒会」の取り組みの選択肢として評価したものです。
以下、「第10回 日本生徒会大賞」決選大会当日に、受賞者2名にインタビューしてきましたので合わせてご覧ください。
受賞者インタビュー

インタビュー参加者
※役職はインタビュー当時
<インタビュイー>
花澤祐太 さん:生徒会長
西村いま さん:生徒会副会長
<インタビュワー>
高橋 亮平(一般社団法人生徒会活動支援協会 理事長)
生徒会で地域密着型の探究学習を行うという発想と校風
一般社団法人生徒会活動支援協会 理事長 高橋 亮平(以下、高橋):
第10回日本生徒会大賞の受賞おめでとうございます。今回受賞につながった取り組みの1つである「滋賀のわプロジェクト」を読者に簡単に理解してもらおうと思うと、いわゆる「探究的学習」みたいなものを学校の授業とは別に、生徒会が独自に、放課後に実践しているという説明でいいでしょうか。教師が企画運営するのではなく、生徒会が全体を主導し、講師も基本は生徒会の役員もしくは外部からゲストの講師を呼んできて実施し、受講者も基本的に生徒を対象としつつ、保護者や地域の方なども自由に参加したい人が参加しているという理解でよいでしょうか。また、教員はどのように関わっているかも教えてください。
滋賀県立虎姫高等学校 花澤 祐太 生徒会長(以下、花澤会長):
はい。その理解で大丈夫です。参加者は、地域の人も来ていい形で、保護者もそうですが、地元の小学校に向けても発信しており、自分たちの兄弟なども参加するなど色々な世代が来ます。フィールドワークに行ったりもしますし、漁業体験もしました。
滋賀県立虎姫高等学校 西村 いま 生徒会副会長(以下、西村副会長):
顧問の先生からはアドバイス等していただいたり、冒頭に挨拶していただいたりしていますが、基本的には生徒会役員中心で運営しています。

高橋:授業でも探究的な学習はしている中で、参加する生徒たちはどういうモチベーションで集まっている感じなのでしょうか?
西村副会長:やっぱり単純に「面白そうだから行く」という感じです。探究の授業はあるのですが、高校生になって、意外と部活や勉強をやっていると地域のことにあまり触れる機会が少なくなっているからこそ、「なんか友達と行ってみようか」という感覚で来てくれる子が多いです。当初はどんな反応をするのかなとちょっと心配して考えたんですけれど、来てくれる子はみんな、話を聴くときは真面目に聴いてくれて。やっぱり校風などもあるのかなと思いました。
花澤会長:学校として掲げている校風は「質実剛健」というものなのですが、前までの校長先生がすごく自由にのびのびやらせてくれる先生で、その影響も生徒が積極的に参加してくれる基盤にはあるのかなと感じています。また、何よりも探究学習にすごく力が入っている学校だということもあると思います。授業をきっかけに「面白いものを知ろう」という土壌が育っているので、勝手に僕らは種をまくだけで、みんな来てくれる感じなんです。

プロジェクト発足のきっかけ
高橋:虎姫高校の取り組みは、これまで「生徒会活動」として連想されるものからすると斬新な取り組みで、むしろ他の学校では教員が中心に授業などで行う探究学習による取り組みを生徒会がやっているという印象でした。今日の発表でも、先生方や大人から「こういうことをやってみたら」と言われて実施したのではなく、生徒会で自発的に行ったもので、自分たちで考え、こういうことをやっていこうとはじめたということを聞いて、非常に面白いと思いましたし、生徒会自身がこうした探究学習や地域と連携した取り組みを行っていこうという取り組みに新鮮さを感じました。そもそも、なぜこうした取り組みを生徒会で行おうと思ったのでしょうか?
西村副会長:自分たちは、地域のことを知ったり交流したりする機会があまりないなと感じることが多くて、だからこそ自分たちから、自ら地域の方と交流しに行きたいと思い始めました。また滋賀県に対する危機感もあって、もっと滋賀県のこと、地元のことを知ろうということで、自らアクションを起こして自分から地域の方に発信し、発信源になりたいと思いました。
高橋:こうした生徒会自身で地域と連携していこうという取り組みは、虎姫高校では伝統的にこれまでも行ってきたことなのでしょうか?それとも皆さんの代が役員になって公約など重点的にやっていこうというテーマがこうした取り組みだったのでしょうか?
花澤会長:先輩たちも結構ローカルな活動をしているという感じでした。先輩たちも同じようなことを色々と行いコンテストに出したりもしていたのですが、発展途上で任期を終えて悔しい思いもされていました。僕から見たときに「先輩らはもっとああしておけばよかったのに」と思う部分と、僕らのやりたいことが合わさって、今の「滋賀のわプロジェクト」が生まれたのかなと思っています。

滋賀県の生徒会は全然活発ではないです。滋賀県内で行われている生徒会連合などに行っても、他の地域と比較して活発である印象もありませんでした。県も「北の近江振興高校生サミット」という名称でやってはいるのですが、それは行政主導ですし、生徒主導のものはあまりないので、それこそ今日の発表でもお伝えした僕らが実施した「滋賀会議」というのは、行政以外が主催する取り組みとしては結構初くらいな取り組みだと思っています。
虎姫高校では文化祭も体育祭も郊外の会場で実施、準備から運営まで生徒が行う
高橋:例えば、皆さんの地域においては、伝統的に代々「滋賀で生徒会といえば虎姫」というような生徒会が元々活発な学校なのでしょうか?それとも自分たちの代や最近になってそうなってきたというような感じなのでしょうか?
花澤会長:多分僕らの代が、特にそうなんだとは思います。
西村副会長:私たち2人とも中学校時代から生徒会役員はやっていました。そういう意味では、高校の生徒会ではこういうことをやりたいというイメージがあったのかもしれません。
高橋:今回発表された取り組み以外にもいわゆる自治的な取り組みについては、虎姫高校ではどんなことをされているのでしょうか?
西村副会長:例えば、文化祭や体育祭などは、校外の会場で行うのですが、その会場を抑えるのは教員にやってもらいますが、それ以外は、会場設営も本当に図面から行いますし、役者の配置、照明、音響、全校生徒分の名簿作りまで全部生徒会でやります。
花澤会長:だからそういうところで培ったノウハウが、今日紹介したようなプロジェクトでも凄く役立ちました。一回それを乗り越えてから生徒会の探究活動に入ったので、ここで培われた分があります。今回発表した活動もそうですが、僕らはこうした活動を遊びというか、凄く面白い活動をやっているという感覚でやっています。
高橋:生徒会活動を「生徒会役員会」ではなく、多くの生徒を巻き込んだ活動にしていくためにも、役員自身が自分たちで楽しんで実施するって大事ですよね。あらためてですが、大賞受賞おめでとうございます。

【文】高橋亮平(一般社団法人生徒会活動支援協会 理事長)
【写真】猪股大輝(一般社団法人生徒会活動支援協会 専務理事)
