日本生徒会大賞2024の講評
先日、受賞者・学校・団体を発表いたしました、「日本生徒会大賞2024」の講評を掲載します。
今回も多数の方からのご応募がございました。誠にありがとうございました。
現在、生徒会活動を行っている方だけでなく、これから活動に参画する方にも参考になると思いますのでぜひご覧ください。
受賞者のみなさま
賞 | 部門 | 受賞者(敬称略・五十音順) | |
日本生徒会大賞 | 中学生・学校の部 | 山崎学園富士見中学校 | |
高校生 | 個人の部 | 粟谷旭妃 (埼玉県立和光国際高等学校) | |
学校の部 | 東洋英和女学院高等部 | ||
顧問の部 | 田中洋平 (東福岡高等学校) | ||
優秀賞 | 中学生・学校の部 | 西大和学園中学校 | |
高校生 | 個人の部 | 佐孝祐佳 (関西大学第一高等学校) | |
学校の部 | 東京都立桜修館中等教育学校 東京都立立川高等学校 |
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顧問の部 | 竹村元男 (高崎商科大学附属高等学校) | ||
奨励賞 | 中学生・学校の部 | 渋谷教育学園渋谷中学校 千葉県市川市立第二中学校 |
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高校生 | 個人の部 | 石原佑高 (桐朋高等学校) 亀田有志 (福井県立武生高等学校) |
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学校の部 | 桐朋高等学校 西大和学園高等学校 |
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特別賞 | 高校生 | 個人の部 | 田中十和 (東福岡高等学校) 谷合伸樹 (高崎商科大学附属高等学校) |
学校の部 | 角川ドワンゴ学園 N/S高等学校 |
審査員総評
小玉重夫 様
(白梅学園大学・白梅学園短期大学 学長/東京大学 客員教授)
生徒会活動は何のためにあるだろうということを常々考えていますが、今日は改めて考えさせられました。
生徒会というのは、少し堅い言い方をすると学校の中での生徒の集団の中で、一つの行政機構であると同時に、政治機構でもあると思います。「行政機構である」というところに注目すると、ともすれば、教職員の手のひらの上で踊っているだけっていうことになってしまうんです。同時に政治機構でもあるということがやはりキモでして、それがあるからこそ、民主主義っていうことになると思います。
本日、参加された各学校の生徒会は、どの学校も、単に教職員の手の平の上で踊っているだけではない。生徒会が持っている政治的な側面を踏まえて、それぞれの活動も工夫されてやってきたということで、ありのままを発表し、そして受賞されたということだというふうに思っております。
本当はすべての学校についてコメントしたいのですが、時間の関係もありますので簡単に、大賞となられた学校についてコメントします。
和光国際高等学校に関しては、生徒の間、あるいは生徒と教師の間の意見衝突。例えば生徒会と軟式テニス部の間で予算の違いとか、それからあの文化祭ですかね?衣装とか、あるいは化粧をするかしないかということをめぐって、教師と生徒との間での意見違い、こういった問題と丁寧に向き合いながら、学校での民主主義として進ませていくのかということについて丁寧な活動をされていたというところが評価されたのではないかと思います。
東洋英和女学院高等部は、校長室のドアを叩いたというところから始まって、困難な校則改正のドアをこじ開ける活動、そこには数多くの困難があって、SNSの問題があったり、一旦は延期されたり、そういったことがあっても、粘り強く制度の改善をされたというところが評価されたと思います。
それから山崎学園富士見中学校でも、高校と中学の間で、例えば、飲料水の摂り方とか軽食の摂り方をめぐる違いが生徒の自由をめぐる違いがあるんですが、「それはちょっとおかしいんじゃないか」っていうところも含めて、中学校の方では教師と生徒との間の違いというものの擦り合わせ方が、非常に丁寧に両者の間の書類のやり取りを変えたという話がありました。
その中で教員と生徒との間の意見の違い、あるいは生徒同士の間の意見の違いということをどう乗り越えるかということについて、丁寧な活動が行われていたということが語られていたというふうに思います。 どの学校も非常に丁寧に、地道に、生徒の民主主義というものを学校の中でどう実現していくのかということについて活動されているというところが私たちの胸を打ちましたし、今後、さらに発展していくということが期待される内容だったと思います。
いま申し上げた三校だけではなくて、全ての学校においてそうだったと思います。 これから日本ではますます若い世界の政治参加が進んでいくと思います。その中で生徒会を単なる行政組織ではなくて、政治機構でもあるのだと。政治参加の場としての生徒会の理解者として、これからもぜひ一緒に追求していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
皆様方の学校と生徒会の発展を祈念いたします。
堀本麻由子 様
(東洋大学文学部教育学科 准教授)
本日はお疲れ様でした。大変貴重な経験させていただいたなというふうに思っています。どの発表も本当に素晴らしくてですね。私自身も勉強することが多くありました。
私の専門は、教育学の中でリーダーシップを養成していくっていうこと、特に大人の学びというところが一番強いので、少し小玉先生のお話とはちょっと違う観点から、生徒会活動について、少し感想と皆さんに期待したいことというのを述べさせていただきたいと思います。
生徒会の活動っていうのは、大人になったときにリーダーシップの養成の場として、とても重要な場だなと思っております。
というのも、学校っていうのは同質的な場所だというふうに思うのですが、“異質な他者”と出会う生徒会活動っていうのはそういう機会であるし、おそらく生徒会の活動をなさっている役員の方や、生徒会の活動を支えてくださっている顧問の先生方っていうのはその異質の他者と会う場を作り出す立場でもあるのかなと思っています。
そういったところの葛藤や衝突というところを、皆さんがどう受け止めて対応されているのかなというのを基準に、今日は審査をさせていただきましたが、本当にどの学校も一生懸命取り組んでおられたと思います。
もう一つリーダーシップというもので、私は女性のリーダーシップを実は非常に関心をもって研究をしておりまして、特に事業家の女性っていうのが日本はすごく少なく、そういった方々に着目しているんですが、こういった、中高生で生徒会の場で、リーダーシップを身に付けていくっていうことが重要だと、改めて審査を通して感じました。 簡単な講評と、それから私自身の今後の研究の目標というところを見いだしていただけたということで講評とさせていただきますが、ぜひ今後とも、活動を続けていただければというふうに思っています。
部門別・講評(敬称略)
日本生徒会大賞
高校生・個人の部:粟谷旭妃(埼玉県立和光国際高等学校)
特に、生徒会会計担当として、部活動を含む多くの生徒が利害関係をもつ生徒会予算作成において、予算額増減制度へ利害を当てはめていくトップダウン方式で前例踏襲型の活動形態を改め、「予算視察」などの活動を通じ多様な意見の掘り起こしをまずは重視し、そのうえで現実に即した合意形成を実現するというボトムアップ型の活動への転換を主導した点も高く評価した。また、異装の規定緩和において、学校側を納得させるため近隣15校のデータ集めや制服のない学校との交流を進め多様な意見を集めて実現に導いた点、生徒会の渉外部署長として、埼玉県生徒会連盟の創設と初代副代表、多摩生徒会協議会副議長、日本中高生協議会渉外部署長などを務めるなど、全国レベルで行われる様々な生徒会関連団体の活動において中心的な役割を果たした。これらを評価し、日本生徒会大賞とした。
高校生・学校の部:東洋英和女学院高等部
長く校則改正が行われていなかった同校において、「携帯電話使用校則の緩和」を実現した。近年、多くの学校で校則改正の運動が行われている一方で、それらの実態は「教師や学校側から言われる形での校則改正」であることが多い。しかし、同校では生徒の側から働きかけて校則改正運動を立ち上げ、長期間にかけて生徒会を通じて多数の生徒を巻き込みながら運動の「自分事」化を進め、ついに改正を実現した一連の活動を高く評価した。校則改定の結果だけではなく、一貫した生徒主体で運動を進めたというプロセスは今後学校内民主主義を考えていく上でも重要な要素であり、他の学校の模範となると判断し、生徒会大賞を授与するに至った。この活動や姿勢が一過性のものではなく、継続的に続くことを期待する。
中学生・学校の部:山崎学園富士見中学校
中高一貫校の生徒会として、中高で連携した生徒会活動を行っている学校でありながら、中学生徒会として高校生徒会とは異なる中学ならではの立場から校内の自販機設置や校則改正に主体的に取り組み、実現した点を高く評価した。今後とも、形式的ではなく実質的な形で中学生なりの見方を代表し、「飼いならされる」のではなく「主体的に枠組み自体を作り出していく」これからの生徒会モデルを作っていく活動の継続を期待したい。
優秀賞
高校生・個人の部:佐孝 祐佳(関西大学第一高等学校)
小学4年生から高校3年生まで長年にわたり児童会・生徒会役員として活動に取り組み、その経験を活かして生徒会活性化を推進した。まず校外においては、全国生徒会大会2024運営委員として関わったほか、関西の生徒会活動を盛り上げようと大阪生徒会交流会を主導して開催した。校内においては、生徒会の効率的な活動のためのリーダーズ研修などを通じた体制づくり、生徒の意見を反映するための手順の確立などの仕組みづくり、ユニークな施策を通じた生徒からの意見収集方法の考案などを推進した。このように校外・校内の活動を組み合わせ、多くの生徒の意見を聞き、まとめ、答えるような生徒会活動の活性化に取り組んだ点を評価した。
高校生・学校の部:東京都立立川高等学校
内務活動においては、従来から生徒会規則に存在しつつも「死文」化・形骸化していた生徒会における四権役員会(執行委員会・監査委員会・中央委員会・新聞委員会)を復活し交流を活発化させることによる、生徒会の組織改革を主導した。外務活動においても、立川高校を含む都立高校10校の生徒会役員に呼び掛けて学校横断的な地域生徒会を設立するなど、他の地域の模範となるべき活動を展開しようとした意欲を評価した。このようにすでに学内にある諸制度を再度見直しながら、生徒会活動活性化を進める活動は他の模範となる活動であった。
高校生・学校の部:東京都立桜修館中等教育学校
「自由と自治」をスローガンに、生徒が学校生活の課題などについて集中的に議論する「自治週間」を設定して全校を巻き込みながら自治の校風をもり立てる活動に取り組んだ点、生徒間の争点として自分たちで決める生徒会会計制度の見直しを位置づけ、一部の生徒のみで改革を進めるのではなく、全校から賛否両論を集めながら改革を進めた点など、かつて活発だった公立高校における生徒会活動を時代に合わせながら復活させていこうという取り組みを特に評価した。
中学生・学校の部:⻄大和学園中学校
中高一貫校の生徒会ながら、高校生徒会との違いを意識しながら生徒・保護者・教員の三者による三者協議会「スマホ会議」などに参加した。また、外務活動においても、中学生でありながら高校生の地域生徒会である奈良県生徒会連盟の会長を務めるといった積極的な参加が見られた。また、学校内での制度改正に教員や保護者を「つなぐ」ルール改正の取り組みや、高校生を中心とした他校を巻き込む地域生徒会の中で各学校を「つなぐ」取り組みなど、他の中学校ではあまり見ない独自の活動が見られた点を評価した。中学生徒会が別個に存在している意義を活かし、今後とも実質的な活動の継続を期待したい。
特別賞
高校生・個人の部:田中 十和(東福岡高等学校)/谷合 伸樹(高崎商科大学附属高等学校)
両校はいずれも、これまで生徒会間の交流が活発でない地域に所在しながら、それぞれ、福岡中高生徒会交流会(東福岡)、北関東生徒会協議会(高崎商科)といった外務団体を設立して地域における生徒会活動の情報共有や発信の拠点として多数の学校の意見交流を行い、生徒会活動の活性化を試みた。これらの草分け的試みを評価し、特別賞とした。今後は、こうした地域における生徒会団体の活動が、単なる「交流」にとどまらず、それぞれの生徒会活動の実践的改革につなげるような活動や、地域の生徒会が連合し学校を超えた街・地域づくりに進むなどのさらなる発展を期待する。
高校生・学校の部:角川ドワンゴ学園 N/S高等学校
通信制高校の制度を基盤に、全校生徒が約3万人、全国各地に在住するという特殊性の中、本当の選挙を意識した投票を義務化せずに投票率の向上まで意識しながら選挙を行うなど、独自性を持った生徒会を作ってきた。インターネットを通じた新しい学校教育活動を進める同校のインフラやスケールメリットも活かした1千万円の生徒会予算なども活用しながら、独自性の高い学校行事づくりなども進めた。これらの独自性を加味し、特別賞とした。今後においては、生徒の学校や社会への参加を進める基盤としての生徒会活動の側面も踏まえつつ、同校の特殊性をもとにしたより画期的な新たな形の生徒会活動の創造を期待したい。
奨励賞
高校生・個人の部:石原 佑高(桐朋高等学校)
生徒委員会での議論や他校からの情報収集等の従来の意思決定プロセスに「全員での議論」を取り入れ、より「生徒の総意」に基づいた提言を行うようにするなど、代議制による間接民主制の生徒会活動の中に直接民主制を取り入れる姿勢は、「生徒会役員会」になりがちな生徒会活動を生徒全体により関わってもらう民主主義の可能性を示す例示となった。また、コロナ禍が明ける中で、最高意思決定機関である生徒総会を「リアルタイム意見箱」などの工夫して生徒と質疑応答する工夫なども見られた。今後においても、その伝統を更に発展させ、新しい生徒会のモデルとなるような活動の発展を期待したい。
高校生・個人の部:亀田 有志(福井県立武生高等学校)
探究活動に積極的に取り組む学校の特色ある授業実践と連動する形で、制服改革を通じた生徒会活動活性化に取り組んだ。探究活動と生徒会活動の連携は注目すべき点があるが、今回は活用した探究活動の性質上一部の生徒のみの声を反映することになってしまった点、また、それらを生徒会活動を通じて広めていくような「生徒会」としての試みに欠ける印象が残った。授業における学びを活かしながらも、生徒会活動を通じてより多数の意見を集めることや、生徒会側からも探究テーマを提供するなど、さらに探究を生徒会活動も含めた学校全体へ広げていくような活動を期待する。
高校生・学校の部:桐朋⾼等学校
生徒のICT機器利用について、導入前から単に学校側に任せるのではなく、生徒側から様々な提案を行うと共に、導入後も生徒のアンケート調査や、教員側のガイドラインに対し提言書の提出するなど継続的に働きかけ生徒の意見を反映させるなどの実績を評価した。一方で、効率的に活動を推進するための組織づくりや個人の能力開発を進め、伝統的に活発な生徒会活動の改善を試みたが、内部機構や規約の整備自体が目的化することで、生徒会組織について、民主的・自治的なボトムアップの組織としての性格よりも、一部の専門化した生徒のみによる行政的でトップダウンの組織としての性格が前景化しているように感じられた。伝統的な活動を活かしながら、より多くの生徒が担い手となることも含め、次の時代のモデルとなるような新たな生徒会活動の実現など、これからの取り組みに期待したい。
高校生・学校の部:⻄大和学園⾼等学校
生徒会活動を通じ、生徒のみならず、教員・保護者・地域など学校内外の様々なアクターの意見を「つなぐ」活動を推進した。幅広い生徒から意見を集めるため生徒会掲示板・オンライン掲示板・意見箱など様々な手法を使い募集するとともに生徒会役員の活動についてもリアルタイムで共有し、活動に対してのパブリックコメントを求めるなど双方向で「つなぐ」を意識して取り組んだ。公約実現には教員も参加する「企画討論会」が設置されているなど教員と「つなぐ」実現プロセスも構築されている。特に、生徒が主導し生徒・保護者・教員の三者による「スマホ会議」を設置して検討した取り組みは大きく評価できる。今後は「つなぐ」活動を更に意識しながら、周囲の様々な期待に馴化されることなく、生徒自ら考え、行動し、学校や地域を作り変えていくような活発な生徒会活動の実現を期待したい。
中学生・学校の部:市川市立第二中学校
公立中学校ながら、校則改正に取り組む委員会を立ち上げるとともに、学校運営協議会にも部分的に生徒が参加、生徒中心で企画運営を行い、職員会議に生徒会本部や実行委員が出席し提案するなど、主体的な活動のあり方が見られた。一方、活動の枠組み自体を教師や学校側が主導して作り、その上で生徒会が取り組んでいる活動という印象も残った。今後は枠組み自体を問い直し、生徒が作り出していくような活動も期待したい。
中学生・学校の部:渋谷教育学園 渋谷中学校
多くの生徒に対して生徒会に興味を持ってもらうことをテーマに、校内eスポーツ大会など中学生徒会としての学校行事の企画を行い実現した。校内の生徒の生徒会に対する関心も高まり、従来とは比較にならないほどの生徒会役員への立候補に繋げることができた。一方、活動の重心が学校行事に偏っている印象も残ったほか、生徒会で行う優先順位がeスポーツなのかは検討の余地を感じた。中学生としての意見をまとめ、学校行事のみならず学校づくりや地域・社会づくりに参画していくような活動へのさらなる発展を期待したい。
日本生徒会大賞とは
日本生徒会大賞は、全国各地の学校生徒会・生徒会団体・生徒会役員を対象としています。生徒会の活動内容やシステムなどを評価することによって、生徒会活動が持つ本来の意義を再確認し活性化させることを目的とした賞です。
今後も継続して日本生徒会大賞の開催を計画しております。詳細が決定いたしましたら、生徒会.jpにてご案内させていただきますので、よろしくお願いいたします。
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