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第10回日本生徒会大賞の総評・大賞講評

第10回日本生徒会大賞の総評・大賞講評


先日、受賞者を発表いたしました、「第10回日本生徒会大賞」の講評を掲載します。

今回も多数の方からのご応募をいただき、誠にありがとうございました。

現在、生徒会活動を行っている方だけでなく、これから活動に参画する方にも参考になると思いますのでぜひご覧ください。

日本生徒会大賞 まとめページ」では、過去の受賞者や関連記事もご紹介しています。

受賞者のみなさま(五十音順)

部門 受賞者
日本生徒会大賞 中学生・学校の部 大阪市立佃中学校
高校生 個人の部 国立音楽大学附属高等学校 山田 結翔さん
学校の部 青森県立三沢高等学校
滋賀県立虎姫高等学校
団体の部 香川県高等学校生徒会協議会
福岡生徒会連盟
生徒会顧問の部 東福岡高等学校 田中 洋平さん
優秀賞 中学生・学校の部 岡山大学附属中学校
高校生 個人の部 開智未来高等学校 山田 凛音さん
東福岡高等学校 田中 十和さん
学校の部 大阪教育大学附属高等学校平野校舎
高知県立嶺北高等学校
生徒会顧問の部 高知県立嶺北高等学校 川渕 祐介さん
文化学園長野中学高等学校 長野 真さん
特別賞 高校生・個人の部 埼玉県立和光国際高等学校 岡部 泰希さん
団体の部 九州生徒会活動後援会
奨励賞 中学生・学校の部 西大和学園中学校
高校生 個人の部 N高等学校 西口 沙彩さん
学校の部 工学院大学附属高等学校
富士見高等学校
宮城県泉松陵高等学校
生徒会顧問の部 大阪市立佃中学校 近藤 克樹さん

総評

  「第10回日本生徒会大賞」は、今回より新たに文部科学省と東京都教育委員会の後援を受け、中学生・学校の部、高校生・学校の部、高校生・個人の部、団体の部、顧問の部の計5部門で実施した。審査手順として、まず応募書類に基づいて書類審査を行った。団体の部、顧問の部については書類審査のみで各賞を決定した。ついで、中学生・学校の部、高校生・学校の部、高校生・個人の部の3部門については、4回目となる決選大会を開催しプレゼンテーションと質疑応答を通じた二次審査を行った。以下、応募書類全体を通しての講評を記す。 

① 中学生・高校生を対象とした各部門(個人の部・学校の部)

 今回も、生徒会活動を通じて、校則や行事の企画など生徒の身近な問題を解決すべく、多くの生徒の意見を集め議論を深化させる仕組みを作ったり、教員と対話する定期的な機会を作ったりして、実際に解決に至った事例が多く応募された。受賞事例以外にも生徒会活動に関わりやすくする組織形成や会議などで下級生の意見も反映されやすくなるような議論方法の考案など様々に工夫された取り組みが見られた。 

  また、今回は、活動範囲を学校外へ広げる事例が例年以上に多数見られた。これまでも広く行われてきたボランティア活動や、他校の生徒会活動事例を学び合う生徒会交流会を企画・開催にとどまらず、地域と協働して新たな学習の場を作ったり、学校を取り巻く地域の課題について議論したり意見表明を行ったりする新たな活動の試みが増えつつある。 

   一方、このような中で、身の回りの課題解決や社会参画の機会づくりといった活動自体が「イベント」化してしまって、従来の学校行事運営型(それぞれの行事の企画やお手伝いを繰り返すことが活動の中心となる形)の生徒会活動と結果的に同質化してしまっている例も目についた。今後においては、これらを一過性の「イベント」とせずに、日常的な自治的活動の中で議論を繰り返し深め続けていけるような仕組みづくりを進めたり、「イベント」に必ずしも馴染むことの出来ない生徒も安心して意見を表明し、学校や社会に関わることのできるような場作りを進めていくことが重要となる。

 18歳選挙権から10年という節目において、民主的自治的活動を通じて、生徒の意見表明権や社会参画機会を保障するという生徒会活動の本質的意義に改めて立ち返った活動が重要であり、その核として生徒会活動の発展が益々期待される。

② 顧問の部

 顧問の部においては、生徒主体の活動である生徒会活動を効果的・自治的・継続的に発展させていくような支援や環境整備の役割を教員がいかに担ったかに着目し評価した。 

 個別の受賞事例については後述するが、本年度はこれまでと比較しても、生徒に自治的・主体的な活動を求める教員自身が、自治的に活動を推進している事例が非常に増えてきた。受賞したいずれの事例においてもこうした特徴が共通して高く評価された。教員が自治的に学校に関わることができず、その権利保障がなされていない学校において、生徒のみで自治的な学校文化を作っていくことは困難である。

 生徒会活動が学校を変え、社会を変える活動となるためには、教員自身もまた、生徒会活動において求められる姿勢と同様か、それ以上の熱量でチャレンジを続け、学校や社会の物事に主体的に取り組んでいく必要がある。このために、生徒と同様、自校内にとどまらず、他校の教員や外部機関と積極的に連携し、自治的活動としての生徒会活動の本質的意義を意識しながら「新しい生徒会」像を構想していくことが益々期待される。

大賞受賞者の選評

優秀賞・特別賞・奨励賞の選評は7月中に公開予定です。

中学生・学校の部

大阪市立佃中学校 

 学校行事運営や校則遵守・規律維持などの日常的な学校運営の補助機関になりがちな生徒会活動の中心を、非日常である「防災」活動に据えることで、様々な学校外のアクターと協働した「新しい生徒会」活動のあり方を提案した点を高く評価した。

 具体的に、学校での避難訓練を生徒主体で作り変えるなどの学校内での活動を基盤にしつつ、能登半島沖地震で被災した能登市立輪島中学校との交流企画から地域での防災活動の中心となりたいとの思いを新たにしたことをきっかけに、NPO法人むすびえと連携した新たな「モノ寄付」プロジェクトを校内で推進したり、防災と子ども食堂をテーマにした劇を生徒主導で作成して修了式でプレゼンして生徒の防災への関心を高めようと企画を作ったり、地元の小学生と防災をテーマにした交流会を企画したり、地元の中学生でつくる「ジュニア防災リーダー」として「にしよど防災エキスポ」に出店したりといった多角的な活動を生徒主体で進めた。

 これらは社会参画の土台として生徒会を位置づける活動の一つの可能性となる活動と言える。今後においては、生徒会活動を通じた社会参画・意見表明を更に多角的な方向へ広げるとともに、より多くの生徒が参加できるような取り組みへの発展も期待したい。

高校生・学校の部

青森県立三沢高等学校

 生徒自治の本質である「民主主義の実践」を極めて高い次元で具現化している事例として高く評価した。 

 校則改正や環境改善のプラットフォームである三者協議会「モスサミット」などの取り組みは多くの学校にとって参考になる。頭髪検査の是非や新制服着用ルールといった複雑な課題に対し、感情論に終始せず、アンケートによりエビデンスとなるデータを集めた上でそれを基軸として教員や保護者と対等に対話を行っている。また、集めたデータから結論を一方的に突きつけるのではなく、事務局会議、サミット、クラス討論、中央委員会という丁寧かつ民主的なステップを踏んで「要望書」へと積み上げるプロセスは、合意形成の手続きとして模範的と言える。「新制服着用の許可」などの折衷案や数々の実績を勝ち取っており、実効性のある自治の結果として実績も残している。 

 また、年間700万円を超える生徒会予算を生徒自身が自主的に予算提案から決定、管理、運用している点は、今後の新しい生徒会の先進事例として是非多くの学校にも参考にされたい。各団体との徹底的な「予算折衝」から、厳格な「監査」、そして緊張感のある「生徒総会」での答弁に至る一連のプロセスは、まさに政治の世界の議会そのものである。お金の使い道を単なる手続きにせず、生徒会長印入りの「デザートチケット」配布といった豊かな学校生活のための企画へ昇華させている点も、予算決定権を主体的に行使した事例として面白い。

 これらの民主的プロセスを支えるのが、年間40〜50号という驚異的なハイペースで発行される生徒会だより『Viva生徒会』である。賛否両論を併記した詳細なレポートにより活動をリアルタイムで「見える化」し、生徒一人ひとりの当事者意識を喚起している。この圧倒的な情報発信力に加え、会長・副会長以外は入部届のみで参画できるオープンな組織づくりが、さらなる生徒の巻き込みと好循環を生んでいる。 

 大人と対等に渡り合う「交渉力」、予算を適正に統制する「ガバナンス能力」、そして全校生徒を置いてきぼりにしない「巻き込み力」。社会の縮図としての民主主義をここまで高いレベルで実践し、自分たちの手で学校生活を豊かにしていく事例は、全国の学校がモデルとすべき一つの形ではないかと生徒会大賞を授与した。

滋賀県立虎姫高等学校

 これまでの伝統的な生徒会活動の枠組みを大きく広げ、「新しい生徒会」のあり方を提示した極めて挑戦的な事例として高く評価した。 

 旧来の生徒会活動として多くの人が想像する活動からは一線を画し、生徒会が自ら探求学習のプログラム「滋賀のわプロジェクト実行委員会」を立ち上げ、地域住民、地元企業、行政、そして自然資源をも巻き込む「双方向型コミュニティスクール」のエコシステムを構築した着想力は生徒会の新しい可能性を示すものになった。 

 少子化や人口減少、地域コミュニティの希薄化という、高校生だけでは解決が難しいと思われがちな大きなテーマかつ複雑な社会課題に対し、最も身近な「学校」を地域に開くことで立ち向かおうとしたこと、その取り組みを生徒会活動で行おうとした点には驚かされた。 

 活動内容は、「漁業」「森林」「伝統文化」「工業」の4分野において、放課後の座学「夜の学校」と実践的な「フィールド体験」を往復する2段階の仕組みが確立されている。 

 本賞において高く評価されたのは、この探究学習そのものの水準如何ではない。かつては地元に無関心で受け身であった生徒たちが、このプロジェクトを通じて地域への深い愛着と強い当事者意識、そして発信力を持って形にしていった点、多くの学校がこうした地域や企業との連携なども含めた探求学習をあくまで教員主導の授業の枠組みの中で実践している中で、生徒たちの主体的活動によって実施しており、さらにその取り組みを生徒会活動の新たな潮流として作り上げようとしたことである。

 さらに、こうした一連の活動をも一過性のものとせず、近隣高校や行政、民間企業を交えた「滋賀会議」へと発展させ、調査・実践・発表・検証という持続可能な年間活動サイクルを構築している点については、全国の学校の生徒会活動の新たな可能性を広げたと言える。 

 当事者である高校生自身が「これをやりたい」という強い意志を持ち、生徒会というプラットフォームを起点に学校や地域社会全体を巻き込んでいく試みは、停滞しがちな生徒会活動を活性化させる新たな選択肢であり、これからの時代に求められるロールモデルとして、生徒会大賞を授与した。

高校生・個人の部

国立音楽大学附属高等学校 山田 結翔さん

 「生徒会の民主化」を目指した生徒会改革に取り組み、特にその中で直面した活動の基盤にある安心して過ごせる学校環境整備に尽力した点を高く評価した。 

 氏は、生徒会の民主化を目指し「普通科」「音楽科」及び付属中学校に分かれていた生徒会機構の整備、意見箱等からあがった生徒からの意見を職員会議へつなぎ応答成果を公表する仕組みづくり、生徒会を通じて生徒同士、他校、地域とつながりを広げるような外務活動やボランティア活動、「生徒会withオーケストラ」などの企画運営を行うなど、生徒会活動の幅を広げることに尽力した。 

  また、生徒が主体的に活動する伝統がこれまであまりなかった同校で上記の改革を進めるために学校や教員からの理解を広げ生徒会を含む生徒との関わり方の状況を改善していくよう私学委員会・法務委員会・外部機関などとも協力し、校長と話し合いを重ね問題解決を試みた。

 氏の活動において特筆すべきは、自身が生徒会活動を行う中で直面した障壁やその際に生じた様々な問題の解決にあたって、単に個人内の問題解決に終始するのでなく、生徒が安心して過ごせる学校づくりへつなげる方向に取り組みを広げた点にある。結果として学校の「生徒指導部」の名称を「生徒支援部」へと変更する改革を実現するなど「管理と指導」から「対話と支援」へと教職員の姿勢転換に向けた合意形成を行うとともに、問題解決過程で協同関係を築いた校長と生徒会の定期的なやり取りの機会を作り上げた。

 このように、自治的活動や意見表明権保障活動を進めるのみならず、その基盤にあるすべての生徒が安心して過ごせる学校づくりを実現した点は、一部の自治的活動の伝統がある学校や意見の出せる生徒のみが成果を受け取る構造に陥りがちな生徒会活動の公共性を保障していくために大いに参考になる活動と言えよう。

団体の部

香川県高等学校生徒会協議会

 個々の学校の枠を越えた「横のつながり」による「地域生徒会」とも言える生徒会団体を創設し、高校生自らが個々の学校の生徒会を超えて連携し、地域社会や行政に対して主体的に働きかけるというところまで実現したことは、極めて先進的な生徒会活動のモデルを示したとして高く評価した。 

 学校を超えた生徒会の連携を試みる生徒会団体を各地域で作っていく取り組みは広がりつつあるものの、その多くは、単なる親睦や情報交換の場になっているケースが多い。今回の事例は、県内全日制高校の半数近くを巻き込む強固なプラットフォームへと成長させている点に加えて、こうした交流に留まらず、県内の高校1・2年生を対象とした大規模なアンケートを実施し、生徒の潜在的なニーズや課題を定量的に集計して、地域の高校生の声としたプロセス、「県政出前懇談会」やグループディスカッションを重ねて議論を深め、単なる不満の表出ではない、具体的かつ論理的な「要望書」へと昇華させた点は、協会の示す「新しい生徒会」の一つのモデルとも重なるものであり、全国の生徒会の参考となるモデルとなる。 

 2026年1月に行われた香川県教育委員会への表敬訪問と意見交換では、交通インフラの整備から学校施設の充実、さらにはあなぶきアリーナ香川を活用した合同行事の提案に至るまで、多角的な視点から高校生の生の声を届けた。その結果、教育長から「前向きに動きたい」「最大限応援する」という極めて前向きな対話と具体的な支援の約束を引き出しており、高校生が自らの手で行政を動かし、自分たちの地域や社会を変革できる可能性を証明した点は大きく評価される。 

 一校だけでは実現が困難な課題であっても、他校と連帯し、組織的にアプローチすることで、地域社会全体を巻き込む大きなうねりを生み出すことができる。この実践は、全国の生徒会活動における「あるべき姿」の体現であり、主権者教育の観点からも極めて価値の高い模範であり、今後の生徒会活動の可能性を広げたものとして、生徒会大賞を授与した。

福岡生徒会連盟

 個々の学校の生徒会が抱えがちな課題や孤立感を解消すべく、県内すべての生徒会が繋がり合う団体を作ろうというビジョンに基づき、生徒会活動の活性化に大きく寄与した点が高く評価した。

 特に評価されるべきは、その圧倒的な巻き込み力と規模の拡大である。第1回交流会の参加が10校102名であったのに対し、回を重ねるごとに規模を拡大させ、第5回には32校240名に達するなど、回を追うごとに確実な成長を遂げている。複数の学校が集まる生徒会団体を企画・運営する活動は全国的に見られるようになって来ている。活動範囲が参加者間の交流に限定されているという課題はあるとはいえ、これほど大規模なプラットフォームを維持・発展させた実績は特筆すべきものがあり、交流会型の「地域生徒会」モデルの集大成として評価される。

 具体的な活動内容は、各校のノウハウや課題を共有し合い、相互の生徒会運営の活性化に直接結びつけている。特にこうした他校との連携を行ってこなかった学校にとっては、地理的制約を克服したオンライン交流会の定期開催なども含め、生徒たちが自校の常識にとらわれず、他校の状況を知った上での視点を持つ貴重な契機となっている。

 全国生徒会大会や日本生徒会大賞の決選大会など、全国の先進事例に触れ、「小さな池にとどまらず、社会という広大な大海へ漕ぎ出す」という理念で立ち上げられた取り組みは、九州地域の生徒会の活性化や生徒会関係者のモチベーションを高める大きな役割をになったものであり、生徒会大賞を授与した。今後においては、現時点で同団体の社会参画活動が街頭募金活動などにとどまっている点を踏まえつつ、さらなる発展を期待したい。

生徒会顧問の部

東福岡高等学校 田中洋平さん

 福岡を中心とした九州全体の生徒会活動を支援する教員有志組織である「九州生徒会講演会」を立ち上げ、独自の優良実践表彰イベントである「九州生徒会グランプリ」を企画するなどして、一校にとどまらない九州地域全体の生徒会活動の活性化に大きな役割を果たした点を高く評価した。

 生徒間のみならず、活動を支える教員間でも支援事例や日々の活動における困りごとなどを様々に共有し人間関係を構築することで、一校にとどまらない地域全体で生徒会活動に活発に取り組もうとする文化を作ることが可能となる。このような教員有志の生徒会支援組織は現状では極めて独創的な発想と言えるが、生徒会活動活性化の鍵となる活動として、同様の組織が全国に普及することを期待したい。

日本生徒会大賞とは

日本生徒会大賞は、全国各地の学校生徒会・生徒会団体・生徒会役員を対象としています。生徒会の活動内容やシステムなどを評価することによって、生徒会活動が持つ本来の意義を再確認し活性化させることを目的とした賞です。今回の実施要項については「第10回 日本生徒会大賞 実施要項」にてご確認ください。その他、「日本生徒会大賞 まとめページ」では、過去の受賞者や関連記事もご紹介しています。