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学校を越えて高校生の声を県政へ:「第10回日本生徒会大賞」受賞者インタビュー 香川県高等学校生徒会協議会

学校を越えて高校生の声を県政へ:「第10回日本生徒会大賞」受賞者インタビュー 香川県高等学校生徒会協議会


県内高校生の声を集め、生徒会の力で行政へ届けた挑戦

香川県高等学校生徒会協議会は、県内の高等学校の生徒会が集まった生徒会団体です。高校生同士が協力し、一校だけでは実現できない活動に取り組むことを目的として組織されました。参加対象となる県内の公私立全日制高校40校のうち半数近くが活動に参加しており、学校の枠を越えた新たなつながりを生み出す場として重要な役割を担っています。

2025年には、県内の高校1・2年生を対象とした大規模な「香川県へ要望したいことアンケート」を実施しました。高校生が日々感じている課題や要望を集めるだけではなく、生徒会同士の議論を通して整理・集約し、「県内の高校生の声」として可視化しました。つまり、一校の要望ではなく、学校の枠を越えて集まった高校生の声を、生徒会組織としてまとめ、行政へ届けたことが今回の取り組みの大きな特徴です。さらに、「県政出前懇談会」やグループディスカッションを重ね、議論を深めました。

こうして集まった声を、単なる不満の表出ではなく、具体的かつ論理的な「要望書」へとまとめ、実際の政策提言につなげた点が高く評価されました。学校間の交流にとどまらず、高校生の声を集め、議論し、行政へ届けるところまで進んだ今回の実践は、これからの「新しい生徒会」のあり方を示すものとして、全国の生徒会にとても参考となる取り組みです。

2026年1月6日には、香川県教育委員会の教育長室で、要望書の提出と意見交換会が初めて実現しました。香川県立石田高等学校や香川県立高松高等学校など計10校の代表者が出席し、県教育委員会側からも淀谷圭三郎教育長をはじめとする教育行政関係者が参加。高校生たちの提言に真摯に耳を傾けました。

提出された要望には、公共交通機関の本数増加やICカード利用駅の拡大、体育館へのエアコン設置、トイレの修繕・洋式化、インターネット環境の整備など、高校生活に直結する課題が盛り込まれました。また、新しく開館した「あなぶきアリーナ香川」を活用し、高校生が中心となる合同体育祭や文化祭を開催したいという提案も行われました。

これらの要望に対し、教育委員会からは前向きな回答が示されました。公共交通機関に関する要望については「前向きに動いていけるように頑張りたい」、あなぶきアリーナ香川の活用については「実現する方向で最大限応援する」との言葉があり、高校生と行政が率直に意見を交わす貴重な機会となりました。

今回は、実際に要望書の提出に携わった香川県立高松高等学校の饗庭 正徳さん、香川県立香川中央高等学校の向井 岳さんに、活動についてお話を伺いました。

インタビュー参加者

※役職はインタビュー当時

<インタビュイー>

向井 岳さん :香川県立香川中央高等学校 前生徒会総務

饗庭 正徳さん:香川県立高松高等学校 前生徒会長

<インタビュワー>

荒井 翔平(一般社団法人生徒会活動支援協会 常任理事)

「みんなで何かをしたい」から始まった活動

生徒会活動支援協会 荒井 翔平 常任理事(以下、荒井):
今回の取り組みは、どのようなきっかけで始まったのでしょうか。

向井 岳 さん(香川県立香川中央高等学校 前生徒会総務 以下、向井さん):
約2年前の生徒会交流会で、「せっかく学校の枠を越えて集まっているのだから、みんなで何か一つ活動してみたい」という意見が出たことがきっかけだったと聞いています。生徒会は学校生活をより良くするために活動していますが、一つの学校だけの意見としてではなく、県内の高校生に共通する課題として香川県へ届けるため、まず県内の高校生の声を集めることになりました。

ただ、集まった意見をそのまま要望書にしたわけではありません。アンケートで集めた声をもとに、生徒会交流会では交通、施設、イベントなどのテーマごとに議論を重ねました。

各校の事情や考え方を持ち寄りながら、「これは県内の高校生全体に共通する課題なのか」「行政へ届けるべき内容は何か」を整理し、一校の要望ではなく、県内高校生の総意として要望書をまとめていきました。

今回の取り組みの特徴は、一校の要望を行政へ届けたことではありません。県内の高校生の声を集め、生徒会同士の議論を通して整理し、「県内高校生の声」として行政へ届けたことにあります。

先輩から受け継いだ「県内高校生の声」を行政へ届ける

この取り組みは、一度の交流会だけで完成したものではありません。

約3年間にわたり、交流会を重ねながら議論を積み重ね、生徒会の代替わりを経て受け継がれてきた活動です。

今回取材した二人も、企画が始まった当初から参加していたわけではありません。先輩たちから活動を引き継ぎ、2026年1月の最終交流会で議論に加わり、高校生の声を行政へ届ける役割を担いました。

荒井:お二人は、どのような形で今回の活動に関わったのでしょうか。

向井さん:私は1月の交流会から参加しました。要望書を提出する前に最後のグループディスカッションがあり、私はイベントに関するテーマを担当しました。そこで高校生が主体となって取り組めるイベントについて意見を出し、グループで話し合いながら内容を整理していきました。そして、午後から行われた要望書の提出と意見交換会では、実際にグループの話し合いで意見が出た「県内高校生が中心となる合同体育祭や文化祭の開催」などの意見を伝えました。

饗庭さん(香川県立高松高等学校 生徒会長 以下、饗庭さん):
私も活動に関わったのは最後の交流会からでした。当時は生徒会長を務めていたので、交流会では司会進行を担当しました。先輩方から、それまでどのような議論が行われてきたのかを聞き、他校の生徒会長の皆さんと一緒に、どのように高校生の意見を伝えるかを確認した上で教育委員会へ向かいました。代替わりを繰り返す生徒会活動では、活動を始めた世代と、行政へ届ける世代が異なります。それでも、先輩たちが積み重ねた議論を受け継ぎ、新しい世代がさらに自分たちの考えを加えながら活動をつないでいく。その姿もまた、この取り組みの大きな特徴でした。

行政との対話が「人ごと」を「自分ごと」に変えた

荒井:実際に教育委員会へ要望書を提出し、どのようなことを感じましたか。

饗庭さん:教育委員会の方と直接お話しする機会を持てたことが印象に残っています。話を聞く中で、香川県が地域のためにどのようなことに取り組んでいるのかを知ることができました。普段であれば知ることのない行政の仕事を知ることができ、とても良い経験になりました。

向井さん:私はもともと県政には興味がありましたが、どこか人ごとのように感じていました。今回、自分たちの意見を直接伝える機会をいただいたことで、県政を自分ごととして考えられるようになったことが、一番大きな学びだったと思います。高校生の声を届けることは、要望を伝えることだけが目的ではありません。地域の課題を知り、行政の役割を理解し、自分たちの暮らす地域を自分自身の問題として考える。その経験そのものが、生徒たちにとって大きな学びとなっていました。

高校生の声を、次の世代へ

香川県高等学校生徒会協議会の活動は、今回の要望書提出で終わりではありません。

今後も交流会を継続し、香川県の教育に関する計画などについて、高校生としての意見を行政へ届ける取り組みを進めていく予定です。

一校では実現できないことも、学校の枠を越えて集まり、学校で集めた高校生たちの声を共有し、議論し、声を重ねることで、社会へ届けることができる。

そして、その活動は、生徒会の代替わりを経ても、先輩から後輩へと受け継がれていきます。

香川県高等学校生徒会協議会の挑戦は、高校生の声を地域へ届ける新しい生徒会活動のモデルとして、これからも続いていくことでしょう。


【文】荒井 翔平(一般社団法人生徒会活動支援協会 常任理事)