
イベントレポート:「全国生徒会大会2025」
2025年3月25日と26日の2日間にわたって、東洋大学白山キャンパス並びに国立オリンピック記念青少年総合センターにて「全国生徒会大会2025(主催:「全国生徒会大会2025」実行委員会・一般社団法人生徒会活動支援協会)」が開催された。本イベントは「生徒会活動に携わる全国の生徒が一堂に会し、各校における活動を共有し、互いの生徒会活動の質の向上に資すること」、「各校の生徒会役員のスキルアップを図り、全国各地の生徒会の活性化を目指すきっかけとなること」の2点を目的とされた。コロナ禍に中止になった年はあるものの毎年開催され、今回が11回目となった。
イベントにおけるプログラムは大きく3つから構成されており、1日目から2日目午前にかけて、生徒は実行委員会企画の『最高の企画書作成』にて、日頃の生徒会活動での経験を活かし、思考方法を形に起こすグループワークに参加した。また、今年から顧問教員向けプログラムとして、1日目に『生徒会顧問シンポジウム2025 -「新しい生徒会」を考える―』と題し、弊協会が先般出版した書籍をベースにが行われた。2日目午後には協会プログラムとして参加者全員を対象に、生徒会の本来の部分に立ち返りながら理想とするフレームワークの獲得を目指す『「新しい生徒会」の実現を考える』が実施された。
実行委員会プログラム『最高の企画書作成』
実行委員会は「生徒会的思考の訓練場」を本大会のコンセプトとして、このプログラムを企画した。生徒会活動においては課題解決のために、先進事例や過去事例などの情報収集能力に加え、それを立論しブラッシュアップする過程が求められる。これらを異なる学校から参加した生徒で模擬的な学校の生徒会にて行うことで、異なる環境にいる仲間で一つのゴールを目指す体験が目指された。
1日目は問題解決をするための他校実例や意見を引き出す話し合いから、必要な情報を取捨選択する力を養うフェーズ1(情報収集)、2日目にかけては班に分かれて人に伝わることを重視した企画書を作成するフェーズ2(立論)を経た。最後に、同じテーマについて話し合った複数の班によるピア・レビューを通し、相互の改善点の学び合いと最も優れた企画書の選定からなるフェーズ3(推敲)を行った。
教員向けプログラム『生徒会顧問シンポジウム2025 -「新しい生徒会」を考える―』

講演する小玉重夫 白梅学園大学学長・東京大学名誉教授
今回初めて、生徒会顧問を対象として企画した。当日は、全国生徒会大会に参加された各校生徒会の顧問教員が40名ほど参加。生徒会活動支援協会が2025年3月に刊行した著書『「新しい生徒会」の教科書-学校を変え、社会を変えるためのヒントー』にもとづく講演やワークショップを行った。まず、基調講演『遂行中断的に生きる教師の条件とは?』と題し、弊協会顧問でもある小玉重夫 東京大学名誉教授・白梅学園大学学長のにご登壇いただいた。弊協会からは、常任理事 猪股大輝より『生徒会の歴史と課題』、副理事長 西野偉彦より『主権者教育としての生徒会活動』、理事長 高橋亮平より『海外事例と「新しい生徒会」』の各講演を行った。
その後、ワールドカフェ『「新しい生徒会」を学校現場で創るための方法と課題』を実施。初めてワールドカフェに取り組む教員も多かったが、グループごとに自校の生徒会活動の課題を共有いただき、課題解決に向けた白熱した議論が行われた。終了後、参加された教員たちからは本イベントに対して好意的なお声を多くいただいた。
弊協会では、今後もこうした生徒会顧問を対象とした研修などの実施を検討しており、「新しい生徒会」を目指すための教員ネットワーク形成を目指していきたい。
協会プログラム『「新しい生徒会」の実現を考える』
2日目午後に行われた協会企画では、今後目指すべき「新しい生徒会」の要素として、A:「生徒主導の校則を見直す仕組みづくり」、B:「生徒が生徒会予算を提案・決定する仕組みづくり」、C:「生徒と教員が対等に意思決定する学校会議の設置」、D:「地域の生徒会連盟による社会参画活動の推進」を掲げ、ワールドカフェの形式で、参加した教員や国会議員をはじめとする有識者も含めた250名で議論を行った。企画冒頭では、環境副大臣や前 文部科学副大臣に挨拶をもらったほか、超党派から党代表経験者なども含めて登壇いただき、「新しい生徒会」の実現に向けて、高校生だけでは解決できない学校を超えた課題などについて質疑応答や意見交換などが行われた。
さいごに
今回開催された「全国生徒会大会」は各学校で生徒会役員経験のある有志の高校生からなる実行委員会と生徒会活動支援協会との共催にて開催されたものである。生徒参加者同世代の実行委員の動きぶりや他の学校からの参加者との学び合いから、自らの活動に対して糸口となるようなものがあったのではないだろうか。ぜひ自分の学校の外にも仕組みの違いはあれど、同じものに向き合う仲間がいること、共に高め合えることを確認してもらえていれば幸いである。また、協会では初めて生徒会顧問を対象としたプログラムを提供した。実務面で同様の悩みを有する先生方が多く見受けられたが、アクションを起こし合える立場として、今回の学びや繋がりを自校のみならず学校を超えて共に広げていただけると非常に心強く存ずる。今後の生徒会活動が生徒の自発的なモチベーションの向上と教員の伴走によって、より確かな意味を有するものに発展していくことを強く願う。
【文】五十嵐 誠 / 一般社団法人生徒会活動支援協会 理事
西野 偉彦 / 一般社団法人生徒会活動支援協会 副理事長
【写真】猪股 大輝 / 一般社団法人生徒会活動支援協会 常任理事
投稿者プロフィール

- 2000年東京都生まれ。東京都立八王子東高等学校、信州大学工学部を卒業し、同大学大学院総合理工学研究科工学専攻水環境・土木工学分野に在学。2023年度より、松本市まつもと子ども未来委員会に大学生サポーターとして参画中。高校在学時には生徒会会計役員として会計規定の改正と生徒の業務簡略化を図った。2017年度多摩生徒会協議会議長。
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