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自校流の外務活動の使い方を見つけよう:『「ハムスター」の教えS1』最終回


生徒会関係者の皆さんは必要に応じて外務活動を充分に活用することが出来ているでしょうか?外務活動といえば、「得たことを自校の生徒会活動に持ち帰る」というイメージが強くあると思います。しかし、「還元する」以外にも、様々な活用方法を考えることが出来るのです。では実際にどのような活用の方法があるのか。これまで3回にわたって、基本になるであろう3つの方法、『ATC』をご紹介してきました。『ATC』のご紹介も前回終わり、最終回は「どのようにして外務活動で得たことを内務活動に取り込むにはどうすれば良いのか」を最後にお話しします。

『ATC』とは、つぎの3つのキーワードにある頭文字をとって表記したものです。

  • Absorb(吸収する)
  • Transmit(発信する)
  • Compare(比較する)

本コラムは外務活動の経験が浅い人向けに、それぞれ項目に分けて今後の外務活動から実践できるよう、例を交えながらご紹介しています。外務活動の使い方は、今から挙げる方法以外にも人それぞれ考えがあると思います。本稿も「一つの考え方」としてご覧ください。

第1~3回をご覧になっていない方はこちら(第1回第2回第3回)より、ご覧ください。この記事は2019年3月に執筆されたものです。

最後に―外務活動で得たことを内務活動に取り込むには

これまで3回にわたって外務活動の基本的な使い方『ATC』を挙げてきましたが、最後に外務活動で得たことを内務活動に上手く取り組むにはどうすれば良いのかご紹介します。

「取り込んでいる」と錯覚していないか

「外務活動で得たことを内務活動に還元する」とは言いますが、皆さんはどのように「還元して」いるでしょうか。考えられるものとして、以下の内容がよく見受けられます。

  • 生徒会役員内の会議の中で報告する
  • 外務活動の参加の様子を報告書にまとめる

ここで確認したい事が、「表面上、内務活動へ取り込んでいる状態になっていないか」ということです。

「会議の中で報告する」「報告書にまとめる」といった方法は、確かに活動した内容の報告の仕方次第では、得たことを取り込むことが出来るかもしれません。しかし仮に、「参加したこと自体の報告」「参加した感想の共有」「聴衆による報告内容の聞き流し」などといった状況の中で報告が済まされて、一定の満足が見られるのであれば、それは表面的な共有に過ぎず、上手く自校に取り込んでいるとは言い難いものです。惜しい外務活動の使い方であると考えます。

  • 「どのような議論が展開されたのか」
  • 「議論を通してどのようなアイデアが生まれたのか」
  • 「他校の方の話を聞いて何か採用できる事柄があったのか」

といったように、表面的な要素の奥に秘めた「何か」まで共有内容の幅を広げる努力をすることが、大切になるでしょう。

「報告」の限界

惜しい外務活動の使い方の例を紹介しましたが、そこから、外務活動に関する「報告」に限界があることがわかります。報告は、口頭や書面で行われてしまう性格から、報告内容を見聞きする人たちの態度によって内容の伝わり具合は変動してしまいます。その他にも、報告における「体感で得られた事柄に対する表現の限界」や、「当日で展開された議論の詳細共有の難しさ」などと、ひとことで言えば、報告上での表現の限界がどうしても出てきてしまいます。そういった要因が重なることで、生徒会役員内で報告内容に対する齟齬が生じてしまい、その後十分な議論に繋がりにくくなります。結果的に外務活動で得たことを上手く活用できず、静かにお蔵入りになるかもしれません。

もちろん「報告」は、仕方によって有効な手段として活用出来ると再度申し上げた上で、同時に「報告」という手段は下手したら惜しい外務活動の使い方に導くリスクを持っているのです。
では、どうしたら外務活動で得たことを、そのようなリスクを抑えつつ、最大限に自校に取り込める方向へと持っていくことが出来るのでしょうか。
最後に最も大切にして欲しいことをお話しします。

外務活動で話された議題について同様に学校内で議論をすること

皆さんの学校生徒会では、外務活動で行われているような積極的な議論、またはそれ以上の議論は出来ているでしょうか?もし、学校生徒会内での議論が、外務活動で行われている議論よりも低調気味であれば、改善の余地が大いにあります。無論、生徒会活動は学校内での活動が中心であり、その中で、積極的かつ建設的な議論を重ねて生徒会活動の行き先などを定めていくことが求められる訳で、今挙げたような状況になれば、意にそぐわなくなってしまいます。増してや外務活動で得られた事柄を、自校に上手く取り込むことが出来なければなおさらです。

そこで、外務活動で話された議題について、同様に学校内でも議論をすることをお勧めしています。これは、私自身が現役の頃から言い続けています。
これによって、先述で触れた、

  • 「外務活動での議論は、場合によって自校に持ち帰えられる事柄が限られ、後に活用しきれない」
  • 「外務活動の報告では十分に伝えきれない」

といった問題を、まとめて解決することが出来るでしょう。

外務活動で取り扱っている議題は、学校生徒会において発生しうる事柄を題材にしている場合が多いです。したがって、学校内でその議題に関して議論することは非常に有意義であると言えるのです。
そして、「外務活動で話された議題について同様に学校内で議論をする」ことによって、以下のような利点が考えられます。

  • 自校に見合った結論にたどり着くことが可能になる(学校の環境に沿った議論の展開が可能)
  • 学校生徒会における議論の活性化(学校生徒会内での議論を行う機会の増加)
  • 生徒会役員の活動に対する意識向上(議論を通して自分の考えを見つめる機会が増える)

さらに、本コラムの第2回で紹介しました「吸収する」でご紹介した、『議論中で挙がった発想や企画立案の過程を学ぶこと』を実践していたのであれば、議論の中で外務活動の際に挙がった意見・アイデアを提示することで、議論の深化に繋げることが出来るでしょう。当日外務活動に参加した者がファシリテートを行うことも良い方法の一つです。

確かに最初は慣れず苦労することもあるかもしれませんが、何度か積み重ねていくうちにコツをつかみ、次第にその成果が表に出てくるでしょう。挑戦する姿勢こそが「生徒会活動」では大事になってくるのではないでしょうか。ただし、これらを行うには、「時間」が必要です。その時間をいかに捻出するのか、外務活動を上手く活用できるかどうかは、それぞれの皆さんの手にかかっています。

決して外務活動に参加する目的を見失うことのないように。
はい、それでは復習です、

  • Absorb(吸収する)
  • Transmit(発信する)
  • Compere(比較する)

皆さんも是非覚えてくださいね(覚え方は自由ですが)。


4回にわたって紹介してきましたこの『ATC』が、私の考えている外務活動の基本的な使い方です。少なくともこれらを使いこなせば、必ず外務活動の中で得られることが増え、かつ互いの学校の生徒会活動を高め合うキッカケにすることができます。何度も言っている通り、今回挙げたものは基本的な事項に過ぎません。他にも自分なりに、自校なりに、活用方法を見つけてみてください。

以上で「生徒会OB『ハムスター』の教えS1(シーズン1)」はこれにて終了。

最後までご覧いただきありがとうございました。また次のシーズンをお楽しみに。
皆様の益々のご活躍をお祈りいたします。


【文・図】 千島 洸太/一般社団法人生徒会活動支援協会 理事

投稿者プロフィール

千島 洸太
千島 洸太
2001年東京都生まれ。一般社団法人生徒会活動支援協会理事。慶應義塾大学総合政策学部在学。獨協高等学校卒。高校生徒会長の任期中に「生徒会組織改革」「受動喫煙防止施策」などに取り組む。2017年度神奈川県高校生徒会会議代表や首都圏高等学校生徒会連盟副代表を務める。第6回全国高校生徒会大会広報部長の在任中には、専門番組『NSCC-TV』の放映に尽力。