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「生徒会活動を本質的に考える」~坂本優樹さん(神奈川・浅野高校)へインタビュー後編~


「日本生徒会大賞2022」で受賞された学校・個人へのインタビューの模様をお届けする本企画。
個人の部で奨励賞を受賞された坂本優樹さん(浅野高校・高3)です。
前編はこちらからお読みいただけます。

インタビュー概要

坂本さんは、常に幅広い視野で生徒会活動を考え、多くの意見を集めることを意識した活動を行った。また民主主義の本質を考え続け、多数決による安易な決定ではなく、徹底した議論を重視してきた。さらに、生徒会活動の実務的な面だけでなく、概念的な部分を盛り込んだ「引き継ぎ書」を作成し、他校の方々へ共有なども行った。

インタビュー参加者

<インタビューイー>

  • 坂本 優樹さん/浅野高校 元生徒会長

<インタビュアー>

  • 川名 悟史/一般社団法人生徒会活動支援協会 理事

インタビュー

生徒会と民主主義

川名:先ほどから「民主主義」というワードが頻繁に出てきて、坂本さんの中でかなりキーワードになっていると感じます。「民主主義」を大切にしているきっかけは何だったのでしょうか?
坂本さん:全国生徒会大会(*1)での長沼先生の講演や学習指導要領で「生徒会は民主主義の実践の場」という言葉を見聞きしたあとに、本当に生徒会は民主主義の実践の場となっているのか疑問に思ったんです。そこで疑ってみたことで民主主義について考えることになりました。
川名:なるほど。ありがとうございます。坂本さんは生徒会活動をする中で、運営面での難しさを感じたことはありましたか?
坂本さん:もちろんありました。抽象的なことを考えてきたと先ほど言いましたけど、How to系のことも考えてきました。なので、引き継ぎ書でも抽象的なことだけじゃなくて具体的なことについて書いた章も作りました。第1章では生徒会の大枠について述べた上で、第2章では生徒会活動に際して気をつけたいこととかHow to的な具体的なことを、第3章では「理想の生徒会像」という抽象的な部分の補足説明、というように分けていました。他にもそれらの実践例として自分の活動をまとめた第4章を作ったりもしました。第2章を書くにあたっては、どんな悩みをみんなが抱えてるのか他校の生徒会役員からいろいろ聞いたりしてたんですが、その中で生徒会に対する生徒の認知度や役員のモチベーション、他校との情報共有といったことについて聞くことが多くて、それらの悩みにどうこたえるべきかは考えるのに苦労しました。
川名:引き継ぎ書は他校の方とも共有されたということでした。他校の方からの反響はどうでしたか?
坂本さん:「後輩にも共有した」「抽象的な部分を考えたことがなかったので刺激になった」という感想はいただきました。ただ、共有したのは自分が引退するタイミングで、渡した人たちも皆引退するときだったので、結果としてどうなったのかというのは聞く機会がありませんでした。
川名:そうなんですね。では、引き継ぎ書を作成された身として、現在の生徒会活動をどのように評価されていますか?
坂本さん:実は高校3年生になると生徒会との関りが全くないんです。だから、今の生徒会活動がどう変わったのかは分からないんですよね。僕が高校2年生のときも、高校3年生との関りがありませんでした。
川名:確かに高校3年生にもなるとそうですよね。後輩以外の方へも引き継ぎ書を共有されていますが、引き継ぎ書にはどういったメッセージが込められていますか?
坂本さん:抽象的な部分を考えてほしいというよりかは、自分が抽象的なレベルで考えたことを残すことで、生徒会への向き合い方を示してみました。実務的なことだけでなく、「この考え方良いな」と思うものがあればぜひ実践して欲しいと思っています。あとは、生徒会活動を実務以外の点からも考えることができるということとか、引き継ぎ書を書いて後輩に自分の経験を継いでいくことが生徒会活動の進歩には必要なこととか、いろいろなメッセージを込めました。自分は1年間しか活動できず、何かを成し遂げられたというわけではなかったので、すぐにではなかったとしてもいつか僕の引き継ぎ書を読んでくれた人たちが生徒会活動を進展させていってほしいなと思っています。

(*1)全国生徒会大会:生徒会活動支援協会が2021年3月に開催した全国規模のオンライン生徒会イベント。二日間の日程で有識者を招いたパネルディスカッションや参加者同士によるグループディスカッションなどを行った。

最後に

川名:これまでの生徒会活動の中で、全体的に苦労されたことは何ですか?
坂本さん:そうですね。あえて言うならば、特に他校の人との対話をあまり重ねられなかったことですね。
川名:実務的な会議はどこでもあると思いますが、生徒会の組織について考える会議は中々ないと感じます。坂本さんはそういった会議を開催されたりしましたか?
坂本さん:会議を開いたりはしませんでした。自分の知り合いの中では、いろんな学校で集まって大人数で会議をするのが好きではないという人も多かったからです。もちろん、広げて活動して組織とかで大規模な活動をしようとしていてそういうのが好きな人と会議をすることもできたとは思うのですが、そういう人たちの中には、生徒会を原理的に考えようとしない人がいるようにも感じていました。そこでこそ自分の考えを広めるべきだとも言えそうですが、時間があまりなかったこともあって、直接そういう人たちに一石を投じることとか、会議を通して自分の考えを広めたりとかということはしなかったんですけど、でも結果的には、外務活動をあまり行っていない学校も含めて多くの学校に引き継ぎ書を送ることができたので良かったと思っています。
川名:生徒会活動を通じて様々なことを経験されてきたと思いますが、今後どのように経験をもとに生活していきたいと考えていますか?
坂本さん:高校卒業後は生徒会活動に今までのように取り組むことはできないですが、とりあえず、まだ自分は民主主義に関する考えが足りていないと思うので、受験が終わったら文献をどんどん読みたいです。あと、引き継ぎ書を作成する中で生徒会と直接関係がないと思っていた本も、実は関係があると感じたことがあって、色々な領域をまたいでいると感じました。生徒会の考察を通して、何かを分析するときに領域を超えた知識や思考を総動員するのがとても楽しいとわかったので、これからも様々な分野を勉強したいと思っています。
川名:これまで様々な本を読まれてきたとのことですが、何か生徒会役員が読んでおくべき本はありますか?
坂本さん:まず絶対に読むべきなのは学習指導要領ですね。本ではないですけど、生徒会活動に取り組む上では必読だと思います。あとは、丸山眞男先生の日本の思想という本だと思います。
川名:最後に、生徒会活動に励んでいる後輩の方々へメッセージをお願いします。
坂本さん:生徒会に特化したメッセージではないのですが、結局は思考を重ねることがとても重要なのだと伝えたいです。それは運営面であっても必要だし、自分たちがやっていることを考える際にも必要なんです。もっと言うと、引き継ぎ書を作成した際に問いを立てることを意識しましたけれど、やはり問いを立てることから思考することが始まるので、「問いを立てる」「その問いを考え抜く」「批判的に再検討する」というのが本当に重要だと思います。あとは、活動する中で「なかなか進歩していない」という悩みを持つことがあると思うんですけど、「さらに向こうへ進む」という意識を持つことが大事だと思います。例え任期中に目立った成果を残せなくて、もうすぐ任期が終わるとしても、今の生徒会を「少しでもいいからさらに向こうへ進めよう」という意識を最後まで持つことができれば、自分の行動を振り返って引き継ぎ書を残すということにつながると思います。そうやってバトンを渡すことが出来れば、それはぱっと見すごそうな外務活動よりもずっと価値のあることで、誇っていい成果だと思います。そういう将来志向の生徒会が今の風潮の中で評価されているわけではないですが、でもその継承を最大限行うことが生徒会役員の使命だと僕は思っています。もし自分で思うように引き継ぎ書を書けなかったとしても、前代の役員たちが書いた過去の引き継ぎ書を残せるともっと良いですよね。その代によって認識や理解ことが異なるので、やはりそれを伝えていくことや積み重ねることが生徒会活動の進歩に繋がっていくのだと思います。
川名:インタビューは以上となります。坂本さん、本日は本当にありがとうございました。

坂本さんが作成した引き継ぎ書も公開していますので、下のリンクよりご覧ください。
引き継ぎ書はこちらから。
なお、引き継ぎ書の公開に際し、学校や個人の情報に関連した箇所を削除・修正しています。

インタビュー時の様子

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来年度も日本生徒会大賞の実施を予定しております。募集要項も順次公開いたしますので、皆様のご応募をお待ちしております。

【聞き手】川名 悟史/一般社団法人生徒会活動支援協会 理事
【文】石名坂陸人/一般社団法人生徒会活動支援協会 運営委員

投稿者プロフィール

石名坂陸人
2002年埼玉県生まれ。一般社団法人生徒会活動支援協会運営委員。専修大学法学部に在籍。大東文化大学第一高等学校在学中に、生徒会長を務め、「生徒主体」をモットーに生徒会組織や学校行事運営の改革などを行なった。