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スウェーデンの市民性は生徒会によって育まれる:スウェーデンから私たちは何を学ぶことができるか 第1回


2月12日~18日の日程で、生徒会活動支援協会理事の栗本が、NPO法人わかもののまち静岡の視察団と共にいわゆる若者政策や若者の社会参画をリードしていると言われる北欧・スウェーデンを訪れています。

スウェーデンにおける生徒会について

“全国生徒会”のロゴはカラフルだ

本項目で扱う、つまりスウェーデンの高校における生徒会は、日本における生徒会組織の在り方と大きく異なります。もちろん、日本における生徒会のように、ある程度学校組織に組み込まれた形で存在をする生徒会”Student Council”も幾つかの学校に存在をしていますが、日本と同様にそれらは活動が停滞しています。現在スウェーデンにおける生徒会の主流となっているのは、生徒が自発的に組織し、加盟する生徒の生活に関する活動を行っている組織”Student Union”です。英訳でも分かる通り、性質としては組合組織というイメージが相応しいものかもしれません。

各学校の生徒会”Student Union”の共同組織として「全国生徒会」”Sveriges Elevkår“が組織されています。この組織は日本における各種生徒会団体とは性質が異なり、(1)生徒の権利の啓発活動、(2)生徒会の発展を目的としたロールモデルの普及、(3)生徒会を運営する上で必要な各種スキルの教育、(4)(各学校に対する)ロビーイング、(5)生徒会間交流の5点を活動の目的としています。

また、”Sveriges Elevråd”という姉妹組織も存在しています。中学校を対象としたある意味で限定的な活動を行う連合体であり、以前は包括的に活動していたそうですが、高校と中学ではニーズが異なることから分化したそうです。

全国生徒会の事務所は

事務所はストックホルムの郊外にあります。

2月13日にストックホルム市ヘゲルステン地区Ornsbergにある全国生徒会の事務所を訪問しました。

出迎えてくれたのは代表のLina Hultqvistさん。スウェーデン全国生徒会の概要について改めてインタビュー形式でお伺いするとともに、全国生徒会が抱える現状の課題や生徒の自治活動の意義などについてもお伺いしました。

全国生徒会の組織概要

全国生徒会には国内600校ある高校のうち、350校に存在する生徒会組織(Student Union)が加盟をしています。これによって、スウェーデン全土の17万人程度の高校生をカバーしているとのことです。また、全国生徒会自体は合計50名程度で運営しており、内訳としては12名からなる理事会(各理事の任期は2年、代表・副代表・高校生・大学生等で構成)、そして40名のフルタイム勤務のスタッフ(18~28歳程度のStudent Union経験者が大半)となっています。もちろん、報酬も存在し、代表・副代表とフルタイム勤務のスタッフは有給で働いているとのことです。

Student CouncilとStudent Union

そもそも(邦訳は両方共に生徒会となってはいますが)、Student CouncilとStudent Unionの差異とは一体何なのでしょうか。Linaさんはその違いは“Free from the structure of school”であるかどうか、だといいます。前者のStudent Councilは私達が日常的に考える「日本の生徒会」のイメージと非常に近いものです。Student Councilは生徒の自由意志に基いて結成されるというよりも、むしろ学校組織の中の一部分として成り立っている側面が強いものです。一方で、Student Unionに関しては生徒の自由意志に基いて結成されるものであるため、例えスウェーデン国内の高校であったとしても、その存在がない高校もあります。そしてこのStudent Unionはあくまでも全校生徒の参加が前提でないという点にも特徴があります。端的に言ってしまえば労働組合の様な組織であり、それぞれのUnionに加盟する生徒の生活向上の為に活動をしているという点も大きな特徴と言うことが出来るでしょう。Student Unionは地域行政や全国生徒会からの補助金を基に運営を行っています。

全国生徒会の活動

前述の通り、全国生徒会には、生徒の権利の啓発活動、生徒会の発展を目的としたロールモデルの普及、生徒会を運営する上で必要な各種スキルの教育、(各学校に対する)ロビーイングの活動目的があります。これらの目的からも分かる通り、Student UnionのOB/OGが後進の育成を行うシステムが整えられているということは非常に画期的であるという事が出来るでしょう。

インタビューの様子

例えば、生徒会間の交流会に焦点を当てても様々な規模の交流会を全国生徒会が開催しています。全国大会を年に2回、コミューン(都道府県)レベルのものを年に2回、市レベルのものを年に2回開催しているそうです。それ以下の規模のものは高校生自身がFacebookを活用して自主的に開催をしているということでした。また、全国生徒会が加盟するStudent Unionに補助金を拠出しています。補助金は学校における組織率(各学校のStudent Unionに加盟する生徒数を全校生徒数で除算したもの)や地域からの補助金額によって算定され、最大で加盟する生徒一人あたり年額22kr(スウェーデン・クローネ)、日本円で3,500円弱であるとのことです。

全国生徒会のお財布事情

これまで全国生徒会の活動の概要について説明をしてきましたが、これらの活動の資金はどこから来たものなのでしょうか。スウェーデンにおいては、若者市民社会庁(Swedish Agency for Youth and Civil Society)という政府機関が一定規模以上の団体に補助金を拠出しています。この補助金が全国生徒会の収入の80%以上を占めるほか、例えば教材の販売などによっても収入を得ています。結果として全国生徒会は1億円程度の予算規模となっているとのことです。

生徒会活動と全国生徒会の意義

意見交換の様子

最後に、Linaさんに全国生徒会の意義に関して伺いました。Linaさんは「若者の声が聞かれている状態が重要だ」と言います。そして「何か(若者たちが)やりたいことがあったら、それを実現することが出来る」環境が整えられていることもまた必須だと言い切ります。Linaさんは「学校という場所は日常的なニーズが反映される場所、そして様々な判断をするステップを踏む、大人になっていく重要な段階の舞台でもある。その時に言論の自由や出版の自由など、スウェーデン人として普遍的な原則を体感する為にStudent Unionの活動が非常に重要になる」「学校の一部ではないStudent Unionというものこそが、スウェーデン人の市民性の涵養に繋がる」とも話します。そして最後に「Student Unionが生徒にとって公益たる場であり、そして一人ひとりの高校生が社会を変えていく必要性を実現出来る場だ」と述べました。

さいごに

もちろん、スウェーデンと日本はその歴史的背景・文化的背景が大きく異なる為、スウェーデンの事例を「目指すべき生徒会像」として単純に設定してしまうことは”正しい”選択では無いように感じます。一方で、代表のLinaさんを始めとする全国生徒会の方々のみならず、Student Unionに関わる高校生が「自治をする」という考え方を自然に持ち合わせているということや、「Student Unionの活動がスウェーデン人としての市民性の涵養に繋がる」という考え方をしていたことが非常に新鮮でした。社会に貢献する、その目的に沿うように、いかに自らの立ち位置で振る舞うかを考える姿勢というものは、私達も十分に考えていく必要性があるように強く思います。

代表のLina Hultqvistさん(右)へのインタビュー後に

※本文中のコメントは大意での邦訳になっています。

【写真】栗本 拓幸/一般社団法人生徒会活動支援協会・両角 達平/NPO法人Rights

投稿者プロフィール

栗本 拓幸
1999年生まれ、慶応義塾大学総合政策学部在学。一般社団法人生徒会活動支援協会常任理事、一般財団法人国際交流機構理事など。生徒会活動に関する各種研究・コンサルティングの他、文部科学省への提言発出を実施。また、若者の政治・社会参加を進める「若者政策」のアドボカシーにも参画。富士通総研「第12回トポス会議」に登壇。