「インフラ」としての安定感を:高生連が第1回定例会を開催
6月17日、世田谷学園中学校・高等学校(東京・世田谷)において、首都圏高等学校生徒会連盟が主催する「第1回連盟会」が開催された。今年度初めての開催となった定例会には、19校から合計52名の参加者が集まり、新たな運営メンバーと共に、活発な議論を行った。
議事概要
- 会の名称:首都圏高等学校生徒会連盟 2018年度第一回連盟会
- 主催者:首都圏高等学校生徒会連盟(代表:越智亮太/成城・高2)
- 参加人数:52名(内、運営3名/19校)
- 会場:世田谷学園中学校・高等学校 食堂
今回の連盟会の構成は、前年度までの流れを踏襲する形となった。大きく分けて3つのセッション、「活動報告」「意見交換セッション」「グループディスカッション」に分けられ、円滑に議事が進行された。
第1セッション「活動報告」
このセッションは、前回連盟会が開催された、4月8日以降に各校生徒会が行った施策に関して、班ごとに分かれて共有を行うことを目的としている。生徒会活動も新年度へと移行した学校が多いことからか、どの班においても、非常に意欲的な施策が共有されていたことが印象的であった(動画)。
活動報告終了後に、佐藤亮平さん(高輪・高2)にインタビューを行った(動画)。また、昼食時にテーブルごとに「トークテーマ」が割り振られており、今回はW杯にちなんだ「サッカー」や、開催日が父の日であったことから「父」といったテーマが計6つ設定され、昼食時も盛り上がりを見せていた。
第2セッション「意見交換セッション」
第2セッションにおけるテーマは「学校全体で行っている生徒会活動」であり、3つの質問に沿って、各校代表者が全体発表を行うという形式で進行されていた。テーマの性質上、第一セッションと若干重なる部分はあったものの、各校生徒会イチオシの施策が発表されていたこともあり、質疑応答含め、真剣な様子でメモを取る参加者が多く見られた(動画)。
【3つの質問】
- Q1:やっている・やっていた活動・取り組み
- Q2:やってどのような効果・意味があるかまたは、実績
- Q3:これからやってみたい活動・活動における悩み
第1・第2セッションの内容に関して、1つのトレンドとして挙げられるものは、やはり“生徒会活動におけるITデバイス・サービスの活用”であろう。海城高校生徒会はいち早く、意見箱(目安箱)をGoogleフォームに移行し、どこからでも意見箱への投稿を可能にした。また、関東学院六浦高校生徒会では、全生徒に一人一台配布されたChromebookの活用を検討しているそうだ。スタートアップ等で用いられることも多い“Slack“を連絡手段として導入している生徒会もあり、今後もこの様な流れが加速していくことは間違いないだろう。
第2セッションの終了後、参加者の佐々木さと子さん(自修館・高2)にインタビュー(動画)を行った。
第3セッション「グループディスカッション」
このセッションにおいては、「生徒会と先生の関わり方」がテーマとして設定された(動画)。生徒会役員にとって、“生徒会顧問”の教員の存在は言うまでもなく大きい一方で、感情論に偏り易い性質をもった命題であるということが出来るだろう。そういった”難しさ”を内包するテーマでありながらも、各グループは非常に活発に、そして冷静に議論を行っていた。
各班とも、ポストイットを用いたワールドカフェ形式で議事を進行していた。「この様な会への参加が初めて」という参加者が全体的に多かったにも関わらず、いずれの班でも、非常に活発に意見が出されていたことが、何よりも印象に残っている。
また、いずれの班においても、教員との対立を徒に煽ることなく、いわば“苦手“な教員(生徒会顧問)とも、可能な限り円滑にコミュニケーションを図ろうとしていたことも、議論の質の高さを物語っていると言えるだろう。
「生徒会役員」と「教員(生徒会顧問)」が円滑に意思疎通できていない学校も少なくはないと考えられる中で、この様な議論展開がなされていたことは、今後への期待を持たせるものだったのではないだろうか。
各班のディスカッションの様子
各班グループディスカッション報告
グループディスカッション終了後に、各班議長より議事内容の報告が行われた(動画)。
第1班
小倉琳さん(成城・高2)の班では、先生と生徒の関わり方を4つに分類した上で、どの関わり方においても「生徒会役員と教職員間の信頼が最も大切」とした上で。その上で、「すべての方向から信頼を得る努力をまず生徒会が行うべき」と結論付けた。
分類 | 好ましい点 | 好ましくない点 |
---|---|---|
教職員による指導型 | 生徒の良いストッパーとなる | 生徒からの好感度が低い |
生徒と教職員間の対抗型 | 生徒からの好感度が高い | 活動が円滑に進まない |
生徒と教職員間の友好型 | 活動が円滑に進む | ー |
生徒と教職員の独立型 | (自治的側面の強い活動となる) | (自治的側面の強い活動となる) |
(小倉さんの発表をもとに作成)
第2班
橋本彩夏さん(青山学院・高3)が議長を務めた第二班では、まず、“関わりにくさ“を持つ顧問の特徴を7つに分類した。また、それぞれの特徴に対して、生徒会役員がどの様に向き合うかを議論した。
特徴 | 対応策 |
---|---|
様々な要因で、学校に余り来ない | 最低限の意思疎通手段を確保する |
|
|
生徒に対して喧嘩腰、高圧的 | 生徒側がより一層謙虚な姿勢を見せる |
必要以上に保守的・硬直的 | 活動に根拠と論理性を持たせる/生徒・保護者の信頼を得る |
生徒に対する対応の差 | 優遇される生徒を「活用」する |
(橋本さんの発表をもとに作成)
その上で、「生徒会活動において、先生との関わりは大切、双方の反発はよくあることだが、改めて冷静に見直していくことが重要ではないか」と結論付けた。
第3班
議長を務めた井村大希さん(立教池袋・高2)は、まず接しやすい先生、接しにくい先生の特徴を列挙した。列挙された特徴の中で特に“生徒の意見に対する対応”の違いというものを重要視して、議論を進めた。
その上で、接しやすい先生とは、「十分にお互いの情報共有を行った上で、綿密に協力できる環境を作る。必要な場合には先生にも協力してもらう」状態を目指し、接しにくい先生とは「接しにくい根本的な原因をまず考える。そして自らの非を改めた上で、冷静に関係の構築を図っていくべき」との方向性を示した。そして「生徒会役員と先生は関わっていかざるを得ない関係、状況に応じた適切な距離の構築を図っていきたい」と結んだ。
第4班
神丸真貴人さん(早稲田実業・高2)が議長を務めた班では、まず「生徒会役員と教職員が関わりにくい原因」の列挙・分類を最初に行った。それらの原因に関して、それぞれ検討を深めた後に、個別的な原因が、実際に生徒会活動に影響を与えうるケースを想定。それぞれのケースで生徒会役員が如何に行動すべきかを議論した。
それらの議論の過程において、生徒会役員側が教職員と妥協点を探ろうとしていたことが、特に印象深い発表であった。
議長・参加者インタビュー
会全体の終了後に、議長を務めた橋本彩夏さん(青山学院・高3)と小倉琳さん(成城・高2)にそれぞれインタビューを行った(動画)。その後、参加者の池田あやのさん(駒込・高2)、福西ほのかさん(駒込・高1)の2名(動画)と、小平峻さん(高輪・高2)にもインタビューを行った(動画)。
終わりに
活動が13年目に突入した首都圏高等学校生徒会連盟であるが、その安定感が未だ衰えていないことが驚きである。新年度の体制の下、首都圏における「生徒会インフラ」の一つとして、そして各地で発足が続く「生徒会団体の先進事例」として、これからも活動を安定的に続けていくことが求められるだろう。そして、首都圏高等学校生徒会連盟が主導して準備を進めている国際生徒会機構も軌道に乗ろうとしている。“安定”と“挑戦”のバランスを保ちながら活動を展開していくことだろう。
レポート動画
【文】栗本 拓幸/一般社団法人生徒会活動支援協会 常任理事
【インタビューワー・写真】楠瀨 千尋/一般社団法人生徒会活動支援協会 運営委員
【写真】千島 洸太/一般社団法人生徒会活動支援協会 運営委員
生徒会.jpでは、生徒会団体の活動・議論内容をアーカイブすることを目的に、マルチメディアで取材を行っております。
投稿者プロフィール
- 1999年生まれ、東京都出身。浅野高校卒、慶應義塾大学総合政策学部在学。統治機構改革、若者の政治参画、憲法改正などが主たる研究・関心領域。他、キャリアに関する授業登壇、AO入試対策など多数。Podcast「この○○の片隅から」配信。2019年度限りで理事を辞任。
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