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日本生徒会大賞2021の講評


先日、受賞者・学校・団体を発表いたしました、「日本生徒会大賞2021」の講評を掲載します。
今回も多数の方からのご応募がございました。誠にありがとうございました。
現在、生徒会活動を行っている方だけでなく、これから活動に参画する方にも参考になると思いますのでぜひご参考にご覧ください。

受賞者のみなさま

受賞者(敬称略・順不同)
日本生徒会大賞2021 (個人) 章 子昱(東京・桐朋)
(学校)
  • 渋谷教育学園渋谷中学高等学校生徒会
(団体)
  • 多摩生徒会協議会
優秀賞 (個人)
    • 大橋 紡(東京・東京成徳大高)
  • 川 紗良(東京・品川女子学院)
(学校)
  • 富士見中学高等学校生徒会
  • 熊本県立熊本農業高校生徒会執行部
(団体) 該当なし
特別賞 (個人)
  • 藤田 星流(東京・東京大学附属)
奨励賞 (個人)
  • 内田 昂希(東京・穎明館)
  • 鎌田笑子(東京・トライ式高等学院飯田橋キャンパス)
(学校) 熊本県立八代高校生徒自治会

評価理由・講評

(1) 日本生徒会大賞2021

個人の部:章 子昱(東京・桐朋)

「生徒会の社会的地位の向上」という明確なビジョンを掲げ、学校内外の多様な人びとを巻き込みながら新たな活動を推進した、極めて優れたリーダーシップを評価した。特に注目すべきは、生徒会活動の枠組みを学校内のみに留めることなく、社会全体にまで視野を広げて捉え活動を推進する点である。受賞者は、学校内での堅実な活動をベースにしつつも「多摩生徒会協議会」の代表を務めて高校生の学校外における新たな協働の枠組みを模索したり、「全国オンライン学生祭」を立ち上げて学校の枠組みを超えた全く新しい文化祭の在り方を構想・実現したりした。これは、類まれなるリーダーシップと視野の広さを示すものである。生徒会活動の範囲は、必ずしも学校内に限定されるものでもなく、あるいは前年までの取り組みを踏襲・改良するという枠内に縛られるものでもない。なぜなら、生徒会活動が対象とする中高生が日々直面している課題の多くは、学校内のみに限定されたものでもなく、また前年までの取り組みを部分的に改良することによってのみ解決されるものでもないからである。受賞者は、活動に際して、学校内活動という限界にとらわれず、生徒会活動の意義をもう一度見直し、全く新しい価値や取り組みを創造しようとした。このような視点・取り組みは支援協会の掲げる「新しい生徒会」像を体現するものであると言える。今後ともより幅広い視野に立ち様々な課題に取り組むことを期待したい。

学校の部:渋谷教育学園渋谷中学高等学校生徒会

生徒会活動の非効率性に対する問題意識について、役割分担やチーム化、企画書のテンプレート化などを行いながら効率化を図っていった。また、効率化していく中で発生した生徒会組織の足並みがそろわないという問題点についても定例会を開き改善するなど、生徒会活動の基本動作の効率化を高い水準で実現できている。さらに、今まで慣習的に実施していなかった部費の透明化や、25年間禁止されていた黒タイツの着用許可、聖春祭の実施、のど自慢大会、選挙制度改革など、民主的な手続きに則りながら正統に改革を実施できている。
このように、広い範囲にわたり高いレベルでの生徒会活動を実施してきた背景を踏まえ、生徒会大賞を授与するに至った。今後は、昨年培われた効率的な生徒会運営のノウハウを、継続的に運用できるようより多くの人々を巻き込んだ活躍に期待したい。

団体の部:多摩生徒会協議会

新型コロナウイルス感染症拡大の中で従来の活動の継続が困難であった昨年の状況にも関わらず、年7回の定例会を開催し、積極的に活動を続けた。また、活動内容としても、例年繰り返されているような参加校による活動内容の報告会、という段階に留まらない新たな可能性を多数提起した。具体的には、①団体としての独自の社会参画活動②定例会の試みの改善の2点から整理できる。①については、2019年4月、最初の緊急事態宣言が発令される中で、団体としていち早く集まり、ホームレス支援団体と協力してマスク作成・寄付を募ったTAmask Projectを主催したり、また全国の学校の文化祭が中止に向かう中で「withコロナの文化祭」のあり方を模索し、団体として全国に向けて「新型コロナウイルス感染拡大に伴う文化祭における各学校での対応に関する調査」を実施・公表したりと、学校内活動としての生徒会の在り方を超え出て、広く学校外・社会に向けて活動の幅を広げていく場としての生徒会団体の可能性を提起した。②については、定例会において各校の活動報告を行うのみならず、参加役員のエンパワーメントを重視した様々な企画を盛り込むなど工夫を見て取ることが出来た。審査委員会では、以上のように、コロナ禍という時代状況の中で新たな生徒会団体としての可能性を提起した点を特に評価した。

(2)優秀賞

個人の部:大橋 紡(東京・東京成徳大高)

新型コロナウイルス感染症拡大に見舞われた去年は、多数の学校行事が中止や縮小に追い込まれることで、生徒会活動の在り方の見直しも進むこととなった。こうした中で、受賞者は学校行事の中止などで生まれた活動上の余裕を有効に活用し、校則や生徒会組織の見直しなどを積極的に進めた。前者については、生徒会内にプロジェクトチームを設けることで、役員一人ひとりの主体性を活かす形で活動を進め、制服規定の改定や、授業中の水分補給の自由化など生徒の要望に基づいた校則改正に取り組んだ。後者については、生徒会役員の男女比改善のための役員選出方法の見直しや、解散・解職請求の制度化を行い、民主的組織としての生徒会の在り方を明確化した。新型コロナウイルス感染拡大という状況を、ICT機器活用などの活動手段の刷新に限定することなく、より根本的な革新につなげていったリーダーシップは、応募者の中でも随一のものであった。審査委員会ではこの点を特に評価した。

個人の部:小川 紗良(東京・品川女子学院)

生徒会活動は、生徒の入学/卒業によって毎年構成員が入れ替わるという性質上、活動の継続が基本的に困難である。また、活動の中心を上級学年が担うことがほとんどであり、年度の切り替わりとともに、せっかく生まれたユニークな取り組みも立ち消えになってしまうことも多い。このような状況に対して、受賞者は普段の活動から役員会内の意思決定システムを見直し、下級生と上級生が班になって議題に関する検討を進める仕組みを導入することで、両者が共に主体性を発揮しながら、協働して課題解決を行うような取り組みを進めた。また、活動に際しても、上級生のみが全体を統括するのではなく、役員の動きに関する個人台本を作成するなどして、個々が主体的に活動できるような環境整備を行った。更に、SNSを用いて活動内容の周知や、ICT機器を用いた意見箱システムの改良など、生徒全体が生徒会活動により積極的に取り組むような仕組みも多数考案した。以上のような試みは、単年度の生徒会活動の試みを超えて、継続的に生徒全体をエンパワーすることで生徒会活動を活性化する試みと言える。審査委員会では、このような特色ある活動を積極的に組織したリーダーシップを評価した。

学校の部:富士見中学高等学校生徒会

前回・前々回に引き続き高い水準の生徒会活動を継続的に実施できている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、思うように生徒会活動を行うことができない学校が多い中、活動の維持・発展を続けることができた組織力と行動力は優れている。また、生徒会活動の幹の活動たるものと考えられる「アイディアペーパー」についても改善を重ね、掲げたスローガンや目標を達成できるような運用を行っている。さらに、行事における冊子等についても、デザインなどを再検討しているところから、より生徒会員視点に立った活動を意識している姿勢が強く伝わってきた。以上、これまでの活動すべてにおいて課題発見から解決までを無理なくできるような仕組みが完成に近い水準に達している点を含めて高く評価した。

今後は、より現在の生徒会活動の強みを活かし、さらに飛躍した活動に挑戦することに期待したい。

学校の部:熊本県立熊本農業高校生徒会執行部

地域に開かれた学校という言葉があるように、学校という存在は現在、地域社会における中心的な場所になっている。その点において、熊本農業高校生徒会の活動はとても特徴的であり、県内の豪雨被災地へ復興ボランティアや農業支援ボランティアへの人材派遣を行うなどその地域性や学校の特徴を十分活かす活動を生徒会として行っていた点は目を見張るものがある。

学校内活動においても、生徒会会則の電子化を始め、その改定や生徒会組織の改編、意見回収時のオンラインツールの活用など活動は学校内外を問わず多岐にわたる。また、役員選出時の立候補者が多いことは全国の一般的な学校における選挙状況とは異なるものだ。生徒会活動が生徒会員によく理解されていて、魅力的に見えている証拠であり、役員の広報活動の努力が報われているのだろう。その上で、これからは、生徒会をより民主主義的機関にする上で役員選出プロセスにおいて改善できる点を考え、その取り組みを期待したい。

(3)特別賞

個人の部:藤田 星流(東京・東京大学附属)

生徒会は生徒全員によって構成された民主的組織である。ゆえに、活動を通じて学校内民主主義を確立し、ひいては子どもや若者がより広く社会や政治の問題に参画するような「子ども・若者参画社会」を作り出す素地ともなる機関である。しかし、従来このようなビジョンに基づいた活動は不足していた。この点について、受賞者は、生徒が企画運営を行い、生徒・保護者・教職員の三者によって取り組まれる「三者協議会」の在り方の改革を抜本的に進めることで解決を試みた。具体的には、形骸化が進んでいた同校の三者協議会に対して、ラウンドテーブル形式の導入など開催方式の見直しを行ったり、議題設定に際して生徒からのパブリックコメントの収集や、教員・PTAに対するアンケートの実施を行うことで、積極的な興味関心を集める施策を行ったりすることで活性化を図った。このような試みを重ねた結果、学校内の諸課題について、上意下達式の意思決定を行うのではなく、当事者目線で議論を重ねた上での民主的な意思決定プロセスを実現した。一方、応募書類からは、こうした三者協議会を通じた先進的な取り組みと生徒会活動の関係、及び、三者協議会を見据えた生徒会内部の具体的な仕組み・活動内容などは明確に読み取ることができなかった。審査委員会では、以上の点を考慮しつつ、その活動の先進性と重要性に鑑み、特別賞とした。

(4)奨励賞

個人の部:内田 昂希(東京・穎明館)

実際の生徒会活動を進めていく中では論理的には解決し得ない、様々な感情的な問題も発生する。生徒会活動を進めていくリーダーシップには、全体が目指すようなビジョンを掲げたり、役員や構成員一人ひとりが生産的・能率的に活動を実現するようなシステムを組み立てたりする姿勢の他にも、活動を進める個々人の感情的側面にも真摯に向き合い、共に悩み取り組んでいくような姿勢も必要とされる。その意味で、受賞者の生徒会活動の経験は、後者の側面に焦点化したものである。応募書類に率直に記されているように、計画していた多くの活動は新型コロナウイルス感染症拡大やその他諸般の事情により、うまく実現できないものも多かったし、実施の過程で役員間の軋轢も発生するなど、必ずしも成功ばかりが積み上がったわけではなかった。しかし、受賞者は、活動への強い意欲を持ち続け、課題を発見しては解決へと奔走し、発生した問題にも真摯に向き合うなかで任期を全うした。審査委員会では、他の受賞者と比して特筆すべき活動やシステムづくりを行うことができていない、という課題を踏まえつつも、生徒会活動に対するひたむきな姿勢に「リーダーとしての重要な在り方」が含まれていると考え、奨励賞とした。

個人の部:鎌田笑子(東京・トライ式高等学院飯田橋キャンパス)

生徒会活動は、基本的に決まった生徒が毎日登校し、学級を組織し、行事に取り組むことを前提に検討される場合がほとんどである。対して、受賞者の通うような通信制高校ではこのような前提は成り立たず、生徒会自体が組織されない場合も多い。しかしながら、通信制高校であっても、生徒全員が所属する学校について各々が持つニーズを集約し、教職員と共に課題解決に取り組む生徒会活動の経験は大きな教育的意義を持つものと言える。受賞者は、このような意義に鑑み、また要望を具体化する形で、これまで有志が不定期で参加するのみであった生徒会役員会の在り方を見直し、正式な選挙を経た初めての生徒会長となって、生徒会の組織化を進めた。活動としても、ICT機器を活用した期日前投票システムを含む選挙制度を確立したり、あるいは複数キャンパス間で連携した合同オンライン文化祭を開催したりと通信制高校の特色に基づいたオリジナリティある内容を企画・実現した。一方、応募書類からは以上の展開に際して、どのような工夫がこらされ、リーダーシップが発揮されたのか、具体的に読み取ることが難しかった。ただし、通信制高校における生徒会活動という困難な試みを前進させた意義は極めて大きいと考え、奨励賞を授与した。

学校の部:熊本県立八代高校生徒自治会

「前例踏襲を打破するという志向を持ち、生徒会組織の大規模な改編を行ったことや意義の不明瞭な校則の見直しなどの学校における課題を的確に認識して、活動した点を評価した。従来であれば、問題意識はありながら解決するための活動に繋げられないことが多い中、公立高校という枠組みの中で1年間で行ったことは全国のモデル校と呼んでも良いだろう。また、生徒会役員と教員との話し合いの場を構築し、生徒だけの活動でなく、教員と協力することを目指したことも評価に値する。さらに、ジェンダー問題や学校内民主主義など時代に合わせた生徒会づくりにも意識的に行っていた。低い回答率が課題となる学校が多い校内アンケートに関してもオンライン開催した生徒総会において、従来の内容を短縮し、その余った時間でアンケートの回答をしてもらうことで回答率を向上させるなどの工夫が見られた。生徒会は役員の力量によって活動内容にも差が出てしまうことを踏まえ、今後は持続可能な生徒会活動を行えるよう、活動のサイクル化などができると生徒会活動が一層充実したものになるだろう。

日本生徒会大賞とは

日本生徒会大賞は、全国各地の学校生徒会・生徒会団体・生徒会役員を対象としています。生徒会の活動内容やシステムなどを評価することによって、生徒会活動が持つ本来の意義を再確認し活性化させることを目的とした賞です。


今後も継続して日本生徒会大賞の開催を計画しております。詳細が決定いたしましたら、生徒会.jpにてご案内させていただきますので、よろしくお願いいたします。