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[私の生徒会履歴書 #014 小笠原洋至]後編:「納得感」と「実感」を

[私の生徒会履歴書 #014 小笠原洋至]後編:「納得感」と「実感」を


経歴

小笠原 洋至(芝浦工業大学柏高等学校第33期生徒会長など)

  • 2011年3月 芝浦工業大学柏中学校生徒会会計就任
  • 2012年12月 芝浦工業大学柏高等学校33期生徒会長就任
  • 2013年4月 第2回全国高校生徒会大会実行委員就任

 

 

「納得感」を作り出せ

さて、もともと生徒会に入ったきっかけは校内に蔓延る不満感を解消したいという思いだったことは、前編でお話ししました。 高校生徒会長として、不満解消のために複数の施策を実施しましたが、その中から大きく2つピックアップしてご紹介します。

一つ目は、「部活動予算をもっと増やしてほしい」「実態に即して配分してほしい」という要望への対応です。 多くの学校では、学校側や保護者側に「予算枠の増額」を求めるのが定石かもしれません。私も増額は求めましたが、それだけでは根本的な「不満の解消」には至らないと考え、別のアプローチをとりました。
予算枠を増やしたところで、使えるお金に限りがある以上、すべての部員を満足させることはできません。結局はいたちごっこになるだけです。 一時的な不満解消ではなく、長期的な解決には何が必要か。私は別の要因を考えます。

当時の部活動予算は、各部と生徒会本部が個別に折衝し、決定した「各部の明細と合計額」のみを生徒総会へ提出するという形でした。 私自身は茶道部と弓道部でしたが、例えばバスケットボール部がどのような活動をしていて、どこにお金がかかり、見えないところで保護者がいくら負担しているのか、詳しくは分かりません。想像すら及ばないのが現実です。 これでは生徒総会で金額だけを見て、「あの部活はずるい」「本当にこんな数が必要なのか」といった声が出るのも当然です。この「プロセスの不透明さ」こそが不満の正体だと考えたのです。
そこで各部活動からの予算要求の提出とは別に各部活ごとにプレゼンテーションをしてもらい、活動内容や部費の用途を説明できる機会を作りました。これには発表者以外の部員や部活に所属していない生徒、あるいは先生など誰でも観覧できるようすることで、情報の非対称性の解消を目指しました。「今年はルールの改訂があって、新しい道具を買わなければならない」とか「これまで保護者の支援でなんとかやってきたがそれも限界」といった各部の切実な事情を知れば、ただ単に数字を見るよりも納得感が生まれます。ほかにも部員数の増減や過去十数年の予算推移など多角的に検討して一つずつ根拠を示す、あるいは代替製品やもっと安価な購入先を調べて提案したりと、着実に理解をしてもらいながら折衝を進めていきました。
「要望通りになる」と「納得感を得る」ことは必ずしもイコールではないはずです。現実的に100%の要望を叶えられない以上、「納得感」を持ってもらうことに重点をおいたわけです。

「実感」はまず身近なところから

もう一つは売店に関する不満でした。その中でも軽食やアイスの販売ができるものも含めて自販機を増やしてほしい、テスト期間などに行列のできるコピー機の台数を増やしてほしいという要望が目立ちました。
なぜ数ある不満の中でこれらを優先的に対処したか。それは毎日使う売店のような身近な課題を、台数が増えるといった目に見える形で解決し、「不満感を生徒会が解消してくれた」という強い実感を得てもらうことを狙ったのです。似たような理由で冬タイツのルール改訂も扱いました。

売店問題に着手するにあたり、まず行ったのは「事実の把握」です。 外務活動のネットワークを利用し、全国の高校における売店の取扱商品やコピー機・自販機の台数を一斉調査しました。また実際のイメージを掴むために、近隣にあり当時中高一貫化して間もなくピカピカな校舎を持った二松学舎大学附属柏中学・高等学校に視察に伺ったりもしました。そして、それらのデータを元に現実味のあるシミュレーションを作成。導入機種の選定から導入費用・売上予測による収支見通しまで算出しました。さらに大手コンビニチェーンが展開を進めていたおにぎりなどが扱える自販機があり、直接営業担当に連絡を取って見積もり依頼や学校への設置例にしないかとお誘いしたりもしました。

加えて意識的に行ったのが、「空気感の醸成」です。単なる生徒総会の一つの議題にするだけでは、総会で可決はされるにしても、生徒たちの熱量も高くなく、面倒な案件に対して教職員が積極的に動いてくれるとの期待も持てません。実現性を上げていくためには学校全体を巻き込んだ一つのムーブメントにする必要があると考えたのです。上記のような調査結果や提案状況を発信し、噂レベルも含めて生徒たちの間で話題になるように仕掛けました。またPTA会長と校長との懇親会でも話題に出してもらったり、そもそも売店は大学法人の関連企業が運営していましたのでそちらにも話をしたりと多くのステークホルダーを巻き込んでいきます。そしてついには非常勤講師として週に2日しか来ない先生が授業中にこの話題を出すまでになったのです。とはいえ、そのせいで校内の模擬投票で政党名に「アイス」と書かれた無効票を大量に産んでしまい、ご迷惑をおかけしたりもしましたが……。

最終的な細かい経緯は私もよく分かっていないのですが、結局学校側が動いたというより売店運営会社側がそこまでいうのであれば…ということで先に動いてくれたようで、自販機やコピー機の増設が実現しました。導入後、実際にテスト期間のコピー機の行列は大きく減少し、中学生も含めた全校生徒に目に見えて恩恵を生み出すことができたのではないかと思います。いまでも部活を覗きに母校へ行くことがありますが、当時より更に増えた自販機と増設されたコピー機を見ることができるので、少々誇らしい気持ちになります。

意図を遺して

不満感の解消を進めると同時に、先に上げた1学年しか本部で活動できないという制度的な問題も解決しなければなりませんでした。
とはいえ会則改正を扱うには生徒総会までに準備期間が足りず、私は制度改革を後の代に託し、実利を優先することにしました。手始めに、新入生歓迎会で生徒会の仕組みや意義を念入りに説明。 形骸化していた「補助役員制度」をフル活用し、単発の仕事でも良いからと、多くの1年生を生徒会本部に招き入れました。共に活動し、ご飯を食べ、語り合う。その中で、理念的なことや「10年先の生徒会像」を、後輩へと徐々に浸透させていきました。

また後輩には引き継ぎ資料を作成し展開していきましたが、よくある業務マニュアルにはあえてしませんでした。先の部活動予算の件でもそうですが、「何を意図してこの制度設計をしたのか」「本来やりたかったが、どういう事情で曲げたのか」といったWhyをメインに記したのです。また業務改善や新しいことを進めるうえで役に立つことを期待して、中学で取り入れたビジネス書知識を生徒会アレンジで教科書風にしたものも作りました。
これらは私自身がこれまでのやり方を破壊したように、やり方(How)を引き継ぐことは必要はなく、明確な目的と知識があれば自ずとより良い方法を導け出せると信じてのことです。逆に意図や理念を明確に残しておけば、時代や考え方が変わったから、曲げていた理由はもうないから、やり方を変えるべきといった判断も正しくできるはずです。
手取り足取りなマニュアルが決して悪いとは思いませんが、皆さんも引き継ぎの際には「意図」を書き記しておくことを強くおすすめします。

そんな種まきの結果なのかは定かではありませんが、ついに近年生徒会の任期変更が行われ、私の思いは結実したと聞きました。いまは校舎の建替え話もあるので、その際にはぜひ生徒会室自体もなんとかしてほしいところです。

生徒会で学校を選ぶ日を目指して

実は生徒会に関わるうえで、現役時代から今に至るまで、ずっと心にある目標があります。 それは、「受験生や学外向けの広報に生徒会活動が大きく掲載され、それが学校選びの一つの要素となる社会」を目指すこと。
学校のアピールとして部活動が使われることは多いですが、生徒会をアピールポイントにしている学校はどれくらいあるでしょうか。 生徒の自主性や社会性を育む場として、活発な生徒会活動はもっと評価されて然るべきです。 しかし現実には、社会はおろか、ほとんどの生徒・保護者・教員にも、まだその認識はありません。
これからも、生徒会活動支援協会をはじめとした各所での活動を通じ、この目標を実現していきたいと思います。