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財政難で文化祭が1日に。地域を巻き込んで逆転の発想:第9回日本生徒会大賞受賞者インタビュー


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連続企画でお送りしている「第9回日本生徒会大賞」大賞受賞者インタビュー。

3回目の今回は、顧問の部で大賞を受賞された静岡県立熱海高等学校 伊藤雅弥先生のインタビューをお届けします。

インタビュー参加者

〈インタビューイー〉

  • 伊藤 雅弥 先生/静岡県立熱海高等学校 生徒会顧問・地歴公民科

インタビュー

教員の成果を認めてもらう機会は少なく貴重な機会

生徒会大賞の受賞おめでとうございます。受賞されて、まわりの反応はいかがでしたか?

今回、学校に届いたチラシを見てこの「日本生徒会大賞」を知り、生徒会で何か新しいことができないかなと思っていたところだったので、挑戦することにしました。
受賞を受けて、朝の打ち合わせで校長から発表していただきました。生徒が表彰されるということはありますが、実際に教員の成果を認めてもらうというのは、なかなか無いことだったりします。生徒数が少ない小さな学校なので、「みんなで頑張らなきゃいけない」という意識が共通してあることもあるかなと思いますが、皆さんから良い反応をしていただけ、大変嬉しかったです。

財政難により文化祭が2日から1日になったことからの逆転の発想

生徒会の財政難の話や、地域との連携など多くの生徒会が抱える課題と、可能性を感じました。今回の取り組み、そもそもどういうきっかけで行うことになったのでしょうか。

きっかけは生徒向けの生徒会会計勉強会でした。年々収入が減っている生徒会費について危機感を持った生徒がいたことでこの勉強を行うことにしました。静岡県立熱海高等学校(以下、熱海高校)は1学年40人ほどの小規模校です。年々生徒数が減少するのに伴って、教員の配置数も減少し、結果として、今まで2日間開催できていた文化祭を十分に運営することが難しくなり、1日に短縮せざるを得なくなってしまいました。単なる短縮では、生徒にとって一生の思い出になる文化祭を悲しいものにさせてしまうのではないかと思い、時間を延長して開催できないかと考えました。また、生徒会としても、「学校を盛り上げ、中学生に対する訴求力にもなることをしたい」という声があり、打ち上げ花火の実現に向けて本格始動することにしました。
一方で、地域から本校に寄せられる期待も高まっていました。少子化に伴い、地元企業さんの多くは人手不足に陥っている状況にあり、高校生に対するアプローチ方法についても検討されている状況でした。そこで、文化祭への協賛金として花火の費用をご負担いただき、お礼としてパンフレットに会社名を掲載して高校生へのアピールにつなげるという形を作りました。
私は、熱海高校に初任で赴任し、今年で6年目になります。就任した頃は東京オリンピックの時期でもあり、開会式を見て漠然と、「こんな花火をハレの日の文化祭でやれたらいいな」と思っていました。それぐらい壮大なアイデアを生徒に出してもらいたいという思いがありました。こうしたことが生徒のアイデアで実現できるようになるのが生徒会だと考えています。
私は、生徒会の顧問と共に、探究学習の担当も担っています。もともと本校は就職する生徒が多いため、地元とのつながりが強く、企業さんや専門学校さんなど、延べ約80以上の様々な団体に教科の枠を超えた体験型の授業をしていただくなど、大変お世話になってきました。その中で建設業の方に私が持っていたこのような思いをお伝えしたところ、地元での実績がある花火師さんを紹介いただくことができ、文化祭での打ち上げにつなげられました。

生徒たちが自分たちのことは自分たちで決められるよう予算委員会を設立

生徒会予算に注目され、予算委員会を設立し、予算の勉強会などにも取り組んだところなどにも関心を持ちました。なぜ、こうした取り組みを始めようと思われたのでしょうか?

学校の小規模化に伴う教員の減少により、生徒会会計も担当することになりました。そこで初めて本校のシステムを含め、会計の仕組みについて知ることになりました。熱海高校は就職する生徒も多いので、折角なので少しでも会計の知識をつけて社会で活躍できるように、という意図で予算委員会を立てました。
これまでも部長や生徒会役員などの代表生徒が集まる会議はありましたが、予算の話まではしていませんでした。そこで、自分たちのことは自分たちで責任をもって決めるための取り組みをする場としてやってみるのはどうだろうと思ったのもきっかけです。
一部は商業科の先生にお手伝いいただきましたが、基本的には全て一から勉強しました。私は地歴公民科の教員で、もともと社会のシステムや国の予算の配分には興味がありましたので、勉強したことを基にした勉強会を生徒と一緒に始めました。生徒が将来的に就職して社会人になっても、お金の流れを理解することは必要な知識だと思い、生徒会予算を題材にすることにしたのです。そこでは生徒に予備費の用途まで考えさせました。
熱海高校は小さい学校で、生徒会予算も150万円程度しかありません。その中で50万円程を文化祭に使っています。「仮に、打ち上げ花火のために、予備費から文化祭費に流用したとしたら、部活動だって“使いたい!”と言うと思うけど、生徒全員に説明できる?」というような問いかけを予算委員会のメンバーにしたりしました。
「お金の使い道は、前期生徒総会の予算案提出の時に突かれたらちゃんと答えられないとダメだよ」という指導をしています。そこで国会の予算委員会での指摘の鋭さをイメージして、指摘されたときに相手に納得してもらうような応答ができるための思考をしてもらいました。折角、生徒会の役員として仕事するのなら、少しでも+αの知識とトレーニングを積んでから卒業してほしいという願いもありました。

自分自身が生徒会に関心がなかったからこそ、予算も生徒総会も意味のあるものにと開始

伊藤先生は地歴公民の教員ということですが、元々こうした生徒会活動に関心があったのでしょうか?

私個人の主観にはなりますが、教員は教科指導力を軸に採用されていると思っています。実は最初、私は生徒会顧問の仕事に対してあまり前向きな気持ちではありませんでした。私が学生時代に生徒会に興味がなかったのも、生徒総会がただ拍手して終わりだったり、選挙もなんとなく演説があった後になんとなく投票して終わりだったりということに対して、時間の無駄だと思っていたのです。逆に顧問になって生徒総会や選挙をやるからには、もっと意味あるものにしようという思いがあって動き始めたのが今回の取り組みのきっかけでもあります。
生徒総会はLHRの時間に行われますが、ただ数字ばかり書いてある予算書が出てきても、生徒は何も理解できないですし、学生時代の私も理解していなかったです。それでは時間の無駄で、余計生徒に生徒会が軽視されるだけだなと思いますし、それを見ている先生たちに「この時間は何なんだ」と思われていたら、生徒会が「あれやりたい」「これやりたい」と言っても、認めてくれるはずがないよなって思ったのがスタートでしたね。

生徒に主体的に提案してもらうために、顧問としてまず突拍子もないことを言ってみる

顧問として生徒とどう関わろうか、どう働きかけるかというのはどの学校でも大きな課題です。今回の取り組みもそうですが、顧問として意識されていることはありますか?

生徒からこんな取り組みをしたいというアイディアが出てこないことに、私は危機感を覚えていました。そこであえて、私が意識的に突拍子もないことをまず口に出してみて、実現するか分からなくても全力で取り組む姿を見せてきました。これが必要だと思っています。
実際に「花火を上げてみたい!」と生徒に言ったのもその一環です。生徒からも「そんなのできるわけない」と言われていましたけど、「まず言ってみよう、それに向けて全力で取り組んでみよう、無理なら仕方ないけど最初から諦めるような精神を身につけてはいけない」と思ったのです。こうなってほしい、という生徒の姿をちゃんと顧問がやって見せることが大事だなと感じました。今回実現できたことを受けて、「俺も花火のきっかけを作れたんだから、言ってみればなんでもできるよ」と伝えていきたいです。
生徒は教員のことをちゃんと見ています。でも、まだ受け身な生徒が多いのが現状です。生徒主体という話がありますが、主体というのは、やはり自分から言って動き出さなきゃ始まらないんです。そのためには、言葉だけで終わらせず、背中で見せるのは大事かなと思います。私もまだ初任校で経験も浅いのですが、本当にそうやってみせることが生徒と信頼関係を築く一番の手段かなと思います。

生徒会顧問の仕事は答えがない。ぜひ生徒とやりたいことにチャレンジを

最後に、これからの生徒会の発展のために、全国の生徒会役員や顧問の先生方へのメッセージやエールなどをいただけますでしょうか?

生徒会顧問を「最も生徒に近くて一番の味方である存在」と信用して、生徒にはやりたいことに向けて動いてほしいと思います。まずはやってみたいと思ったことを、口にしてもらいたいと思います。それが難しいことだとしても、学校のためにこれをやりたいとまずは声を上げてみる。そうしたらきっと、生徒会顧問が全力で生徒の味方になって手をさしのべてくれるはずです。
過去の継承だけをやっていくだけでは、せっかく生徒会役員になっても得られるものは少ないと思います。「自分たちの代でそれを変えてみたい」というような思いをもって行動することで、それが顧問と生徒の皆で成長に繋がるのではないかなと思います。
生徒会顧問の仕事は答えが決まっていないため、何をしても生徒会活動の充実につながります。顧問が生徒と同じ目線で一緒になって考えていくのは、最終的に生徒のためになります。実際、生徒会活動は特別な教育活動ではないと思いますので、是非、先生方もやりたいことを生徒と話して、魅力的だなと思ったことに是非チャレンジして楽しんでもらいたいなと思います。


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