会則を味方に付ける:第9回日本生徒会大賞受賞者インタビュー
連続企画でお送りしている「第9回日本生徒会大賞(2025年開催)」受賞者インタビュー。今回は、高校生・個人の部で大賞を受賞された沖縄県立八重山高等学校の大城 愛夏さんへのインタビューをお届けいたします。
インタビュー参加者
〈インタビュイー〉
- 大城 愛夏さん(沖縄県立八重山高等学校第78期 生徒会副会長)
〈インタビュワー〉
- 石井 淳平(一般社団法人生徒会活動支援協会 運営委員)
インタビュー
応募の動機は「憧れ」と「実績」
―この度は大賞受賞、誠におめでとうございます。まずは、応募された動機からお聞かせください。
大城さん: ありがとうございます。一番の動機は、過去にこの大賞を連続受賞された章子昱さん(編集注:現在一般社団法人生徒会活動支援協会社員)への憧れです。章さんをきっかけにこの賞を知り、「私もあんな風に実績を残したい」と思いました。それに加えて、自分の生徒会活動での思いや取り組みを発信する機会が欲しかった、というのも大きな理由です。
―大賞を受賞された今のお気持ちはいかがですか?
大城さん: 正直、「ほんとに?」という気持ちで、まだ実感がありません。決選大会では、他の発表者の方々が本当に素晴らしくて、誰が大賞を獲ってもおかしくないレベルでした。だから、自分の名前が呼ばれた時は信じられなかったです。「私が一番なんだ」って。それにそもそも決選大会に進めたこと自体が夢のようでした。
反対を乗り越える原動力は「使命感」と「周囲からの期待に応えたい思い」
彼女の活動は、決して順風満帆ではなかった。意外にも、一番の反対者は最も身近な存在である母親だったという。
大城さん: 母からはずっと心配されていました。「あんたは無理する性格だから、生徒会なんかやって倒れたら困る」「あんただけが頑張る必要はないでしょ」と。休日も返上で企画書作りに没頭する私を見て反対されました。きっと親心からだったと思います。夜中に私が「締め切りがやばい、寝不足でしんどい」とこぼすと、「だから言ったでしょ」と言われることもありました(笑)。
それでも彼女が活動を続けた原動力は、2つあった。1つは「使命感」。そしてもう一つは「周囲からの期待に応えたい思い」だった。
大城さん: もちろん、親の心配は愛情だと理解していました。でも、私には「やらなきゃ」という使命感がありました。でも、それだけじゃないんです。もっと正直に言うと、注目されたり、先生や友達に「すごいね!」「さすが!」って褒められたりするのが、すごく楽しかった。そこは「私が輝ける場所」だったんです。他の生徒にとっての部活動と同じ感覚で、自分が認められる実感を得られる大切な場所でした。
この活動の入り口も、崇高な理念からではなかったという。「中学の時、憧れの先輩が執行部にいたんです。その人と仲良くなりたくて入ったのがきっかけ。でも、活動するうちに『これ、私に向いてるかも』って楽しくなっていったんです」
そんな彼女が生徒会で行った改革は大きく2つあった。その2つの改革に迫る。
改革①:全職員を前にしたプレゼンと、日課変更に向けた挑戦
彼女の活動で最も力を入れ、自信を持っているのが「日課(時程)の変更」だ。コロナ禍の特別措置で変更された日課が元に戻る際、昼休みが5分短縮された。彼女の学校では休み時間の間に自宅や寮へ戻って昼食を取る生徒が多く、これが生徒間で大きな不満となり、遅刻の増加にもつながっていた。
大城さん: 生徒からは「元の日課表に戻してほしい」という声が大多数でした。もちろん元に戻すのが理想ですが、ただ元に戻すだけでは、先生方から見れば単なる「わがまま」とも捉えられかねません。そこで、私たちは、生徒と先生の間に立ちました。

大城さん: 短縮された5分間の昼休み時間を移動時間として復活させるという「新日課」を提案し、まずは試行期間を設けました。その期間中の遅刻者数の増減データを集計し、再度アンケートを実施したところ、8割以上の生徒が賛成し、遅刻者数も大幅に減少したんです。この客観的なデータを根拠に、全職員が出席する職員会議でプレゼンを行い、再提案しました。
全職員を前にしたプレゼンは「一番大変だった」と振り返る。しかし、この丁寧なプロセスと、根拠ある訴えが実を結び、新日課は見事、正式に採用された。
改革②:「拍手」から「起立」へ。形骸化した生徒総会の再生
もう一つの大きな改革が、「生徒総会の再生」だ。従来、拍手で開催が承認され、会の中では予算の承認などが読み上げられ、形式的な拍手で議決されるだけだった生徒総会。大城さんはここにメスを入れた。
大城さん: 議題を生徒の学校生活に直結する「日課変更」に絞り、議決方法を「拍手」から「起立」による採決に変えました。これにより、一人ひとりが自分の意思を表明せざるを得なくなります。
この変更は、劇的な変化をもたらした。
大城さん: これまでつまらなそうにしていた生徒たちが、「なんだなんだ?」と議論に興味を持ち始めたんです。総会後には、生徒同士で「私はこう思う」「いや、僕はこうだ」と議論が活発化しました。当事者意識が芽生えた瞬間でした。
さらに、生徒総会の前に各クラスの代表が集う「中央委員会」を設置。執行部が独走するのではなく、ここで事前に議論を重ねる仕組みを構築した。これにより、生徒総会は単なる報告会から、実質的な議論と意思決定の場へと生まれ変わった。
成功の秘訣は「会則を味方につける」こと
彼女の改革は、なぜ成功したのか。その秘訣を尋ねると、意外な答えが返ってきた。
大城さん: 「学校のルール、特に『生徒会会則』を全部理解すること」です。暇な時に会則を読み込んでみたら、「あれ、生徒会って、実はすごく力があるんじゃないか?」と気づいたんです。これまでは役員ですら会則をよく理解していませんでした。でも、会則を味方につければ、先生方にも「ルールに則って提案しています」と堂々と主張できる。熱意やパッションはもちろん大事ですが、それを支える根拠とロジックがあってこそ、人は動いてくれるんです。
母親からの反対に直面しながらも、強い想いで生徒会に取り組み大きな改革を実現し、生徒会大賞に輝いた大城さん。彼女の活動がうまく行った要因は、難しいことではなく「データを元に訴えること。」「会則を理解すること」という他校でもすぐに取り入れることができることだった。
【文・聞き手】石井 淳平(一般社団法人生徒会活動支援協会 運営委員)・猪股 大輝(同 専務理事)
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