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生徒への「伴走」から生徒のチャレンジの「追走」へ: 第10回日本生徒会大賞 受賞者インタビュー 東福岡高等学校 田中洋平先生

生徒への「伴走」から生徒のチャレンジの「追走」へ: 第10回日本生徒会大賞 受賞者インタビュー 東福岡高等学校 田中洋平先生


2026年の「第10回日本生徒会大賞」顧問の部の日本生徒会大賞には、2024年から2回目となる東福岡高等学校の田中洋平さんが選ばれました。

2024年の受賞時は、共学化を見据えた学校改革と軌を一にして進められた生徒会改革の事例が評価されました。受賞から2年、東福岡高校の生徒会活動はさらに活性化し、このことに刺激を受けて200名以上の参加者を集める生徒会交流会を開催する福岡生徒会連盟(第10回日本生徒会大賞 団体の部 大賞)が誕生するなど、九州の生徒会活動はかつてない盛り上がりを見せています。

この背後には、生徒の努力に「伴走」し「追走」してチャレンジを続ける田中さんが立ち上げた生徒会活動を支える学校を超えた教員有志の組織―「九州生徒会活動後援会」がありました。

「伴走」から「追走」へ:九州生徒会活動後援会の活動

九州地区では、コロナ禍以前からいくつかの生徒会団体が活動していましたが、コロナ禍と前後してほとんど活動停止状態にありました。こうした中、2024年1月、日本生徒会大賞や全国生徒会大会に参加して刺激を受けた東福岡高校の田中十和さん(第10回日本生徒会大賞 個人の部 優秀賞)が中心となって福岡生徒会交流会を開催、さらに交流会をきっかけとして福岡県内のすべての生徒会をつなげる目的で2024年12月に福岡生徒会連盟が発足しました。詳細は下記の記事を参照ください。

福岡県の生徒会の架け橋:「第10回日本生徒会大賞」受賞者インタビュー 福岡生徒会連盟

この福岡生徒会連盟結成と同じタイミングで、活動の持続的な発展を支える組織として、田中先生が発案、声掛けをし、生徒会交流会に参加した教員有志で作られたのが「九州生徒会活動後援会」です。

https://sites.google.com/view/kyushu-seitokai-generators/

九州生徒会活動後援会には、記事公開時点で公立・私立を越えて7校10名の教員が加わっています。主な活動として、福岡生徒会連盟やその主催する福岡生徒会交流会の開催を様々な形でサポートしながら、生徒会交流会のたびに教員同士でも定期的に集まり、活動状況を交換したり、交流会に参加する生徒の成長を複数校の教員で見守る活動を行ったりしています。

また、このような高校生との「伴走」活動に加え、チャレンジを続ける高校生に「追走」し、2025年12月には後援会主催で「第1回九州生徒会グランプリ」が開催されました。その様子は下記の記事でもレポートしています。

九州生徒会グランプリ:生徒会役員240名が集結。最優秀賞は千原台高校

複数校の生徒会役員が集まる生徒会団体の活動は全国的に広がりを見せていますが、これを支え、団体として独自の活動まで行う教員間のネットワーク組織は全国的にも極めて稀です。このような高校生の活動を継続的に支え、教員としても挑戦を続ける組織の存在が今日の九州の生徒会活動活性化の大きな一端であったと評価され、今回、その発起人である東福岡高校の田中先生に日本生徒会大賞が授与されました。

以下では、この九州生徒会活動後援会の設立経緯や活動を中心とした田中先生のインタビューをお届けします。

インタビュー参加者

<インタビュイー> 

田中洋平さん:東福岡高等学校 教諭

<インタビュワー>

猪股 大輝(一般社団法人生徒会活動支援協会 専務理事)

九州生徒会活動後援会の設立とその背景

一般社団法人生徒会活動支援協会 専務理事 猪股 大輝(以下、猪股):
この度は2024年以来、2度目の日本生徒会大賞の受賞、おめでとうございます。今回、審査委員会では、最近の九州地域の生徒会活動の盛り上がりを支える教員ネットワークである九州生徒会活動後援会を立ち上げた点が特に高く評価されました。まず、「後援会」を立ち上げたきっかけについて教えてください。

東福岡高等学校 田中 洋平先生(以下、田中):
ありがとうございます。後援会の設立は2024年12月、生徒たちが福岡生徒会連盟を発足させた時のことでした。もともと九州地域にコロナ禍以前から生徒会団体があったことは生徒会.jpの記事
を読んで知っていたものの、活動が途切れてしまっているようでした。

生徒は卒業していくので、新たに生徒会の団体を作ったとしても設立時の思いがうまく継承できないなど、引き継ぎの面で課題があります。また、教員や学校との関係が曖昧なまま目の届かないところで活動が進むことに不安を覚えました。

最初から生徒たちとともに活動し、継続して支える仕組みがあったほうがよいのではないかとも考え、福岡生徒会連盟の立ち上げ時に行われた生徒会交流会に引率に来ていた先生方に声掛けをしたのがきっかけです。

猪股: もともと先生方のつながりなどはあったのですか?

田中: 生徒たちの方は、SNSや福岡生徒会連盟の伴走支援をしている生徒会活動振興会のネットワークなどを通じて、連盟立ち上げ前からつながりがあり、2024年2月からは福岡生徒会交流会も行っていました。

しかし、教員同士は探究活動の研修会や教科の勉強会で会うことはあっても、なかなか学校間や顧問間での交流はありませんでした。実際に、県立高校と私立高校にはギャップがあったり、私立高校間も競争があったりと、福岡の学校には閉鎖的な文化が根強く残っていることが要因に挙げられます。

また、生徒会顧問は生徒指導部などの校務分掌の一部といった学校が多く、対外試合を行う部活動顧問とは異なり他の学校と連絡を取り合うような機会も少なく、それぞれの学校の中で孤軍奮闘しているような形が主でした。私と同じように心にモヤモヤしたものを抱えながら顧問をされている先生方も多いのではと考えていました。

猪股: そのような背景もあって、生徒会顧問のコミュニティづくりも着想されたんですね。

田中: はい、そうです。ただ、それだけではなく後援会を始めたきっかけには生徒たちの影響も大きかったと思います。福岡生徒会連盟発足に先立って2回生徒会交流会が行われましたが、そこで生徒たちがキラキラした目で自分から発表する様子を見て、すごくいい光景だなと思いました。

普段はおとなしい生徒も、自分の考えを伝えたい!自校の魅力を聞いてもらいたい!と生き生きしていました。他校の先生方と一緒になって感動を共有したい、という思いが設立の原点です。

猪股: 決選大会のプレゼンでも、生徒への「伴走」から、生徒のチャレンジへの「追走」へ、というお話をされていましたが、後援会もそのような面があったのですね。

学校を越えて生徒を見守り育てる九州生徒会活動後援会

猪股: 後援会の具体的な活動内容を教えていただけますか。

田中: 最初は、生徒たちと同じように、教員同士でオンラインミーティングをしようというアイディアもありました。ただ、先生方もお忙しいですし、持続可能な形でずっと生徒たちを見守りたいと思っていました。

そのために、今は年に2回やっている生徒会交流会の開催を支援しながら、交流会のたびに引率でいらっしゃった先生方と活動内容や生徒の様子を話し合うなどしています。交流会をハブにして、信用度を増しながら活動の輪を広げていくイメージです。

猪股:具体的にどのような支援を?

田中:基本は生徒主体でやることなので、困った時、煮詰まった時に呼ばれて、必要に応じてアドバイスする、といった形での支援がメインです。もう一歩で深まりそうなときには刺激を与えたりします。また、対外的な連絡やみんなで揃って行う準備など、きちんとしないと問題が起きそうだけど生徒だけではうまく進んでいない場面では、少し踏み込んで関わることもあります。

実は、先日行われた第6回福岡生徒会交流会(注:26年7月20日に福岡生徒会連盟主催で実施)では、我々はほとんど何もしていません。軌道に乗るまでは、先生方のお名前をお借りして教員有志の後援会という団体がサポートしていることが伝わるように案内文を送るようにしていますが、とにかく常に寄り添うこと、口出ししすぎないことを大切にしています。勇気をもって、生徒たちを待つことを心がけています。

猪股: なるほど。後援会における教員同士の交流はどんな様子なのでしょうか。

田中: 年2回の交流会が教員同士でも定期的に集まるよい機会になっています。半年ぶりに会った教員同士で、参加している生徒の様子について、「あの子、こんなに喋れるようになって!」とか「前と全然違うやん!」など話し合いながら、生徒が活動を通じて成長していく感動を学校の枠を越えて共有できるのがなにより楽しいです。後援会に参加している教員が、交流会に参加する数百名の生徒を一緒に見守り、育てている感覚です。

また、後援会には、交流会の事後アンケートで一緒にやりたい人は書いてください、という欄を設けて、申し出てくれた教員に加わってもらう形で輪を広げています。校内外の事情で生徒会顧問も入れ替わっていくものですが、交流会・後援会を拠点に教員の側も代を越えて活動の継承がなされるようになっています。

さらに、後援会での交流を結節点にして顧問を越えた学校間の協働も見られるようになってきました。お互いの学校見学を行ったり、あるいは管理職同士でつながって、外部施設を借りて学校行事を行うノウハウを共有したり、などといったことも起こっています。このような「ハブ」としての役割を今後とも続けていきたいと思っています。

猪股: 昨年の12月には、こうした支援活動に加えて、後援会が主催して九州生徒会グランプリも開催されましたね。

田中: はい。同日に開催されていた福岡生徒会交流会に集まった33校の中から11校に活動内容をプレゼンしてもらい、その取り組みを引率してきた顧問教員や外部審査員(注:支援協会から高橋(理事長)と猪股も加わった)が審査してグランプリを出す、というイベントを、後援会主催という形に拘って企画してみました。

何より良かったのは生徒会活動について各校でグラデーションがある中で、審査・講評を教員同士で共有し、取り組みについてじっくり話し合えたことです。なかなかそうした機会はないので、とても楽しく勉強になりました。教員が楽しくないと生徒たちも楽しくないのかなと思います。

また、グランプリの資料も含め、公開許可が出たものは、後援会のサイトで公開する、ということもやっています。こうして活動の様子を共有・保管しながら、5年後、10年後に見返せたらいいな、と思っています。

猪股: 私もグランプリに参加させていただきましたが、当日の熱気から、九州の生徒会活動の盛り上がりを肌で感じたことを覚えています。

生徒を「追走」する生徒会改革チャレンジのこれまでとこれから

猪股: これまで後援会について主に伺ってきましたが、田中先生は前回の生徒会大賞受賞時からここまで、東福岡高校内の生徒会改革も支援されてきました。校内の生徒会活動の状況はいかがでしょうか。

田中: コロナ禍以降、学校と世の中とのつながりが求められるように変わってきました。昔は人と人との繋がり方は対面が多かったですが、オンラインの普及などで敷居が低くなって、様々な工夫が生まれるようになってきました。

こうした中で、世の中とつながる新しい生徒会活動がどんどん増えてきました。ともすると、今までは決まった企画を上手にやらせることが顧問の役割でしたが、生徒たちのやりたい気持ちを尊重し、「頭」も使えるよう企画に主体的に関与し、新しくつくる、ということが当たり前になってきました。

最適解は学校ごとに違うのかもしれませんが、顧問より先を歩く生徒が増えてきた印象です。そこで最近の私は、生徒たちの隣をともに歩んでいけるような関わり方を大切にするようになってきました。

こうした中で、福岡生徒会連盟の活動以外にも、外部からたくさん色々な話が来るようになっています。最近でも福岡青年会議所と協力して、5,000人の小学生を対象に「福岡ならいごと万博2026」という企画をやることになって、生徒も一緒に運営に関わっています。それ以外にも福岡市交通局や地元警察、地方自治体などと関わった企画も行っています。

何より生徒会改革が進んで、生徒たちが頑張っている姿を見て校内からも生徒会活動に関わりたいという教員が増えてきました。顧問以外の教員も積極的に関わってオープンスクールで生徒会有志が生徒会企画を行う、などということもあります。また、学園祭や体育祭などの行事も次の世代の教員が中心になって進めてくれるようになってきています。

本校では生徒会活動に主体的に関わりたい有志生徒が部活動のように加入できる「生徒会事務局」というのを設置しています。本人のやる気次第で生徒自ら関わることのできる新たな活動が増えた結果、その組織に入る生徒の人数が10名前後だったところから生徒会改革を始めた2022年度には60名程度に、現在では180名程度の生徒が参加するまでになりました。これは、校内の他部活と比べても最大級の規模です。共学化後には、女子生徒もたくさん活躍するようになっています。

そして、対外的にも学校が良くなっている姿が知られるようになってきました。最近では、生徒会が学校の売りになっていて、入学前から本校の生徒会に憧れていた、というような生徒が入学してくれるようになりました。

猪股: それはとても大きな変化ですね。私も様々な学校の実践を見聞きすることがありますが、コロナ禍以降、学校が外部と関わることのアレルギーがすごく減ってきて、様々に外部と関わって「特色」ある学校を作ろう、という雰囲気が盛り上がってきたことを肌で感じます。この中で、生徒会を特色化した東福岡高校のような高校がもっと増えてくれるとよいなと思います。

これまで大きく活動が発展されている様子を伺ってきましたが、最後に、今後取り組まれたいことを教えてください。

田中: 大きく2つあります。1つは、生徒会支援のところで、原点に戻って一人ひとりの生徒への声掛けを改めて頑張りたいと思っています。外部とのつながりももちろん大事ですが、実際の活動の中では、新しいリーダーを育てることであったり生徒同士の人間関係をフォローしたり、仕事の進め方を助言したり、ベースの部分でやるべきことはたくさんあります。こうした問題に向き合い、一人ひとりの生徒をサポートしながら、いずれは顧問の部だけでなく、学校の部でも表彰されるように頑張っていきたいです。

東福岡だからできるんだよ、という声も聞かれますが、それは違うと思います。学校ごとに伝統や文化があり、教員組織のあり方も異なります。生徒たちとともに学校のあり方を考えていく、それが生徒会顧問の醍醐味です。

また、教員同士のつながりのところでいうと、もっと広く全国の先生とつながりたいとも思います。全国生徒会大会がそうしたつながりの場になるかもしれません。毎年全国生徒会大会や日本生徒会大賞の決選大会で他県の先生にお会いして多くの刺激をもらっています。

先の決選大会でも先生方と近況を報告し合い、新しい先生方との出会いもありました。そうした全国的なつながりを広げていき、後援会のようなコミュニティが他地域に広がっていってほしいと思います。生徒たちとともに成長していきたいという先生方、日本中どこでも構いません。ご連絡お待ちしております。

猪股: ぜひ、先生のような生徒会活動に積極的に関わっていたり、あるいは関わりたいと思っている教員同士がつながることのできる仕組みを作っていければと思います。本日は長時間ありがとうございました。


【文】猪股大輝(一般社団法人生徒会活動支援協会 専務理事)