自分たちで避難訓練を変え、地域まで巻き込んだ「防災」の取組:「第10回日本生徒会大賞」受賞者インタビュー 大阪市立佃中学校
2026年6月14日に行われた「第10回 日本生徒会大賞」決選大会。中学生・学校の部での日本生徒会大賞には、大阪市立佃中学校(以下、佃中学校)が選出されました。今回はこの佃中学校での生徒会の実践事例を紹介します。
受動的な訓練から「能動的に考える訓練」へ生徒自身で改革
佃中学校生徒会は、防災を日常の地続きにある大切な活動として捉え、生徒たちの主体的かつ革新的なアイデアで、学校や地域、さらには被災地をも巻き込んだ大きな運動を展開しています。
彼らが行った活動の大きな柱の一つが、自分たちの手で学校内避難訓練を抜本的に変えたことです。これまでの避難訓練は、あらかじめ決められたルートを通り、指示に従って行動するという、どこか受動的な側面が否めませんでした。しかし、生徒会は「これでは本当の災害時に対応できないのではないか」という強い問題意識を持ち、避難訓練のあり方を1から見直しました。
彼らは、非日常である災害時の状況を想定し、リアリティのある4つの状況をピックアップして訓練に組み込みました。これにより、生徒一人ひとりが「今、自分はどう行動すべきか」を主体的に考え、判断する実践的な訓練へと進化させることに成功しました。学校内の避難訓練を中学生が自らプロデュースし、能動的な学びの場へと変革させたこの試みは、非常に画期的なものです。

被災地との交流が生んだ「モノ寄付」は全国的なメディアでも注目
さらに、彼らの活動は学校の壁を越え、被災地との直接的なつながりへと発展していきました。それが、石川県の輪島市立輪島中学校との間で実施されたワークショップです。
被災地の中学校と直接協力し、オンラインなどで対話を重ねることで、現地のリアルな状況や本当に必要とされている支援についての理解を深めました。
このワークショップを通じて、佃中学校の生徒たちは、防災や支援を単なる知識としてではなく、心と心が「思い」でつながる活動として深く実感することになったそうです。

また、こうした取り組みの延長として生まれたのが、「モノ寄付」の取り組みであり、中学生としては全国初ということもあり、NHKなどのテレビニュースでも取り上げられたほか、新聞紙面にも掲載され、中学生の持つ防災への可能性と熱意を発信することにつながったと言います。
地域防災の未来を担う新たな挑戦と当事者意識の広がり
佃中学校生徒会は、こうした活動や成果に満足することなく、これからチャレンジしたい新たな取り組みも紹介してくれました。
その1つが、地域の小学6年生向けに防災ワークショップの企画です。自分たちが培ってきた防災の知識や、これまでの活動で得た大切な経験を、次の世代を担う地域の小学生たちに直接伝えることで、地域全体の防災意識を底上げしようと考えているそうです。
この他にも、全国的な注目を集めた「モノ寄付」活動のさらなる拡大を目指しているほか、生徒会のマスコットキャラクターを制作するということも考えているそうです。
こうした活動を通じて、日々の活動や防災に対する熱い「思い」をより多くの人々に広め、次の世代へとしっかりとつないでいくための架け橋にしようとしているとのことでした。
佃中学校生徒会が体現しているのは、中学生たちが自ら考え、行動を起こすことで、社会を動かす大きな力になるという実践です。日常の中に防災を組み込み、人と人との「思い」を紡ぎながら進められる彼らの活動は、これからの地域防災の可能性を感じさせられました。
今後は、より教員のサポートやアドバイスを受けないでも自分たちでできる活動をさらに増やし、防災に限らず、自分たち中学生であっても社会の一員である当事者として何ができるのか、その可能性を信じて、自分たちの行いたい活動を広げていってもらえればと思います。
以下、『第10回 日本生徒会大賞』決選大会の後日、受賞者にインタビューしましたので、合わせてご覧ください。
受賞者インタビュー

インタビュー参加者
※役職はインタビュー当時
<インタビュイー>
初瀬 陽向さん :生徒会長(3年)
舟橋 穂乃佳さん:生徒会副会長(3年)
田村 美結さん :生徒会書記(3年)
木下 和奏さん :生徒会書記(2年)
矢川 陽翔さん :生徒会執行委員(2年)
大上 優翔さん :生徒会執行委員(2年)
<インタビュワー>
佐孝 祐佳(一般社団法人生徒会活動支援協会 運営委員)
全国大会での手応えと「日本一」の実感
一般社団法人生徒会活動支援協会 佐孝 祐佳 運営委員(以下、佐孝):
改めて「第10回日本生徒会大賞」での大賞受賞、おめでとうございます!日本一になったと実感した瞬間はどんなときでしたか?また、そもそも応募したきっかけは何だったのでしょう?自分たちの取り組みのどこが評価されて大賞を獲得できたと思うかと合わせて教えてもらえますか?
—— Webの記事で紹介してくれているのを見たり、表彰状をじっくり眺めたりしたときに「あ、自分たちは本当に日本一を取ったんだな」と実感しました。友達から「お前、日本一なんか!」と声をかけられたときが一番嬉しかったですね。
—— モノ寄付でお世話になっていたむすびえのトランさんから「日本生徒会大賞というのがあるよ」と教えていただいたのがきっかけです。「東京に行けるかもしれないし、とりあえず挑戦してみようか」くらいの、のんびりしたスタートでした。最初から日本一を狙っていたわけではなかったんです。
—— 他の学校ではあまり見られない「防災」というテーマを本格的に取り入れたのが大きかったと思います。また、「モノ寄付」のような、中学生として全国初の新しい切り口で実践した活動を発表できたことも強みになったのではないでしょうか。プレゼン自体も、聞き手にしっかり届くよう明るくはっきりと話すことを心がけました。
地域特性から生まれた「命を守る防災活動」
佐孝: そもそも佃中学校生徒会がここまで「防災」に力を入れるようになった背景には、どのようなきっかけがあったのでしょうか?
—— もともと赴任されてきた先生が大学時代から防災に力を入れておられ、生徒会でも取り組みたいという提案があったのが始まりです。それを先輩方が受け継ぎ、私たちの代でも継続して深めてきました。
—— 私たちが暮らす西淀川区は、周りを川に囲まれた「島」のような地形をしていて、全域で海抜ゼロメートル以下の地帯が多く存在します。もし大きな津波や河川の氾濫が起きた場合、深刻な被害が出るリスクがあります。だからこそ、区全体で防災意識が高く、区役所や地域の方々が私たちの活動を親身になって応援してくださっています。
佐孝: 地域での防災イベントでも色々なことをやっているそうですが、どんなことを行っているのですか?
—— 地域の防災イベントでは、「なまずの学校」という防災ゲームを実施したり、避難時に役立つ持ち物を参加者に考えてもらう「防災バッグ」のワークショップを行ったりしました。また、区役所にあった「防災カルタ」を活用したコーナーも設けました。
—— 防災カルタのブースに、目が不自由な方と女の子のペアが来られたときのことです。どうすれば楽しんでもらえるかを自分たちで考え、読み札を工夫して読み上げ、手がカルタの近くに行ったときに「あ、そこです!」と声をかけるなどしてサポートしました。結果としてたくさんの札を取ることができ、とても喜んでいただけました。
災害時には、目が不自由な方や体に障害のある方など、様々な「要配慮者」が避難所に集まります。そうした方々にどう寄り添うべきかを、中学生の私たちが実体験として学べた良い経験になりました。
—— 区役所が主催となる「ジュニア防災リーダー」の研修にも参加しています。最近の研修では,大阪市消防局の高度専門教育訓練センターに行きました。普段は立ち入れない施設で、ロープ結索体験や、煙が火災時にどう広がるかを体験する訓練、実際の消防ホースでの放水やジャッキを使った瓦礫除去など、身をもって災害の恐ろしさと対処法を学びました。

全校生徒を主役にする「シチュエーション別避難訓練」
佐孝: 校内での避難訓練も、従来の形から大きく変更されたそうですね。
—— はい。全校生徒が3学年混ざったグループを作り、教室でシチュエーション別のワークショップを行いました。1年生は「佃地域にいるとき」、2年生は佃以外の大阪市内の「ショッピングモールにいるとき」、3年生は旅先である「修学旅行中」というように、異なる場面を設定しました。
「佃から離れた場所で災害が起きたら、帰宅できないのではないか」「そのときどう行動すべきか」など、学年の壁を越えて意見を交換し合いました。生徒会がシチュエーションやワークシートを企画し、全校生徒が当事者として考える場を作り出しました。
—— この他にも石川県の輪島市立輪島中学校のみなさんとオンラインで講話・交流を行う機会をいただきました。同世代の中学生から被災地のリアルな話を聞くことで、「同じ日本に住む同世代がこんなに大変な思いをしているんだ」と、防災をより身近な「自分のこと」として捉えられるようになりました。
自我と思いがぶつかり合う、圧倒的な活動量
佐孝: ここまでのお話を聞いていると、中学生の生徒会とは思えないほど高度で主体的な活動量ですが、日頃の活動ペースやチームの雰囲気はいかがですか?
—— 役員は全6名と人数は少ないのですが、とにかくみんなやる気がありすぎて「残業(放課後活動)」したがるメンバーばかりです。行事前などの忙しい時期は毎日集まっています。疲れて早く帰りたい日があっても、「いや、まだやろう!」と押し切られることもあって、ついに先生から「もう帰りなさい!」と怒られるくらいです。
—— 6人全員の「自我」が強くて、意見がぶつかり合うこともありますが、すごく仲が良いです。今回の「第10回 日本生徒会大賞」の決選大会で東京に行ったときも、大学の学食で食べたりして一番はしゃいでいました。自分たちの「やりたい」という熱意を、先生方が否定せず寛容に受け入れてサポートしてくれる環境があるからこそ、ここまで走ってこられたのだと思います。

大阪市立佃中学校については、早速、現地の学校を訪問してきました。
この訪問記事も来週公開しますので、合わせてご覧ください。
【文】佐孝祐佳(一般社団法人生徒会活動支援協会 運営委員)
