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生徒会活性化のための“提言”を高校生がレビュー:「第1回日本生徒会」から1年


第一回日本生徒会が、2017年3月に開催されてから1年が経過した。第一回日本生徒会では、10個の提言項目を含む「第一回日本生徒会提言―日本の生徒会をより活発なものとするために」が採択され、文部科学省政務次官や全国高等学校長会会長などに提出された。

今回は、第一回日本生徒会から1年という節目にあたって、生徒会活動支援協会が現役高校生を対象に依頼して行った「提言レビュー」の内容をお伝えする。今回の提言レビューは、『提言』のなかでも特に、「提言内容」の部分に着目し、現役高校生の視点から意見を集めることで、『提言』をよりよいものとしながら、次代へと引き継いでいくために実施したものである。

2017年3月、第1回日本生徒会

目次

嵯峨野実さん(千葉県・芝浦工業大学柏高等学校3年:調査時)

質問1:この提言の中で特に実施されると良いと思う提言内容はどれですか、またその理由はなんですか

提言1:学校長・教職員と生徒会との議論及び情報共有の場の設置

理由:学校が具体的に何を考えているのかを知りたい. 学校側は何を考えているのかをクリアにしてくれないと,生徒(会)と学校(教職員側)との間に信頼関係は築けない.信頼関係があってこそ,生徒会の活動はより有意義になり,結果に繋がる.

質問2:自分の生徒会活動の経験を振り返った時、この提言内容の中で疑問に感じる項目はありますか?または、ぜひとも付け加えたい、あるいは、提言の文言として変更したい箇所はありますか?理由とともにお書きください。

提言6:生徒会の権限の明確化

理由:学校によって,生徒が置かれている状況も様々. 時代によっても移り変わるものだと思う. さらに,それぞれの学校の教育方針は尊重されるべきで,またそれによって生徒会の仕事内容も若干変わってくる. それを1つ1つ明確にするのは難しいと思うし,する必要性はあまり感じない.

質問3:提言書全体を読んだとき、何か意見はありますか?あれば理由とともにお書きください。

参加者の議論の結果がこの提言書なので,その内容を疑わずに貫き通して欲しい. もう1年経った”のでは無くまだ1年しか経っていないのだと個人的に思います.

五十嵐誠さん(東京都立八王子東高等学校・2年:調査時)

質問1:この提言の中で特に実施されると良いと思う提言内容はどれですか、またその理由はなんですか

提言2:全国的な生徒会組織の設置

提言3:地域ごとの生徒会組織の設置

提言4:地域行政に高校生の声が反映される仕組みの構築

提言5:教職員・生徒に対する生徒会活動への理解をすすめる取り組みの実施

提言7:生徒会活動に関する全国的な実態調査の実施

提言8:生徒会支援のための取り組み

提言9:ホームルーム運営への生徒会参加の仕組みづくり

提言10:生徒会役員に対するインセンティブの提供

理由:全国・地域レベルの活動は公に広く認知されているとは言えず、もったいない状況です。生徒会の活性化を必要だと考えます。地域行政への高校生の声が反映される仕組みは、高校生のみならず、全ての世代に作られるべきです。生徒会活動は、依然として多くの学校で、生徒に選ばれた雑用係となってしまっており、生徒会の設立目的を果たしていない学校は少なくありません。生徒会は、その自治に干渉しないという理由で、他校の参考にすべきモデルケースさえもブラックボックス化しており、自校での改善に手間が多くかかります。生徒会支援は、特に高校3年間のみの学校には優秀な人材の育成には欠かせません。ホームルームにおいて生徒会参加の仕組みは、教員が積極的に生徒に企画等を考え、運営させる能力を育てるのに有効ですし、経験を積ませることが重要でしょう。生徒会が果たす役割や業務量を客観的に見て評価され、それに伴う対価が有れば、形骸化しやすい生徒会や選挙は少なくなるでしょう。

質問2:自分の生徒会活動の経験を振り返った時、この提言内容の中で疑問に感じる項目はありますか?または、ぜひとも付け加えたい、あるいは、提言の文言として変更したい箇所はありますか?理由とともにお書きください。

提言1:学校長・教職員と生徒会との議論及び情報共有の場の設置

理由:企画書を顧問に提出していますが、「誰がどのような指摘をしたから教員としてはこの箇所は認められない」というレベルまで聞くことのできない学校があるとよく聞きます。私としては、どのような議論がなされたかを、よりよい生徒の企画運営のためにブラックボックス化されないことを望みます。

M.S.さん(東京都私立T高校・3年:調査時)

質問1:この提言の中で特に実施されると良いと思う提言内容はどれですか、またその理由はなんですか

提言1:学校長・教職員と生徒会との議論及び情報共有の場の設置

提言5:教職員・生徒に対する生徒会活動への理解をすすめる取り組みの実施

理由:生徒会活動において、何をするにおいても学校(教職員)の許可を必要とする活動が殆どであるという事を踏まえ、直接議論することによって、我々生徒の意見をより明確に伝えることが出来る為。また役員だけでなく、生徒全員が生徒会活動について理解することで、学校全体として多くの活動をできる可能性が増えるため。

質問2:自分の生徒会活動の経験を振り返った時、この提言内容の中で疑問に感じる項目はありますか?または、ぜひとも付け加えたい、あるいは、提言の文言として変更したい箇所はありますか?理由とともにお書きください。

提言10:生徒会役員に対するインセンティブの提供

理由:実際どのようにしてインセンティブを与えるのか。一例で挙げられていたが、活動を疎かに(形骸化したまま)、給与を受け取ることのみを目的としてしまうのではないかというちょっとした不安がある。

A.S.さん(東京都私立R高校・3年:調査時)

質問1:この提言の中で特に実施されると良いと思う提言内容はどれですか、またその理由はなんですか

提言1:学校長・教職員と生徒会との議論及び情報共有の場の設置

提言5:教職員・生徒に対する生徒会活動への理解をすすめる取り組みの実施

理由:生徒会をより良く運営していくためには教職員との議論及び情報共有の場は必須だと思うから。多摩生徒会協議会でも幾度も議論をしてきた所謂生徒会活動の「見える化」。現役時代特に力をいれていた取り組みだが実現には至らなかったから。

総評

4名の高校生回答者のうち、全てに共通していたのは、「提言1:学校長・教職員と生徒会との議論及び情報共有の場の設置」であった。実際の生徒会活動を通じて、「学校側(先生方・学校長他)が一体どんな事を考えているのか、生徒会側が把握できない学校の構造に対して、高校生たちは特に強い問題意識を感じているようだ。

ところで、こうした「提言1」のような内容は「二者協議会」という取り組みとして、ヨーロッパの高校(upper secondary school)で広く見られ、日本でも普及が進もうとしている内容である。特に北欧やドイツなどではスクールガバナンスの中心組織である「学校理事会」に対して生徒が出席する権利が認められており、ノルウェーなど一部の国では、「教育法」などで生徒の参加自体が法制化されている例もある。日本でもこうした事例を参考にしながら、「二者協議会」のさらなる発展が望まれる。

また、「提言5:教職員・生徒に対する生徒会活動への理解をすすめる取り組みの実施」に対する言及も目立った。生徒会活動に取り組む中で、教職員、生徒双方からの無理解に大きな問題意識を持つ高校生が多いようである。生徒会.jpなどにおける発信などの活動も重要だが、より根本的な改革を目指して、さらなる議論・研究が必要であろう。

こうした、肯定的な意見以外にも、「提言6:生徒会の権限の明確化」や「提言10:生徒会役員に対するインセンティブの提供」に対する批判的意見も寄せられた。こうした意見を総合しながら、提言をよりよいものとし、次代に受け継いでいく取り組みを、生徒会活動支援協会としてもサポートしていきたい。

【文】猪股 大輝/一般社団法人生徒会活動支援協会 運営委員
【写真】荒井 翔平/一般社団法人生徒会活動支援協会 理事長

投稿者プロフィール

猪股 大輝
猪股 大輝
1997年東京都生まれ。桐朋高等学校、早稲田大学教育学部卒、東京大学大学院教育学研究科修了。博士(教育学)。現在、東洋大学文学部助教。高校在学時は総務委員長(生徒会長)、首都圏高等学校生徒会連盟代表、生徒シンポジウム実行委員を務め、生徒会大会(首都圏)を立ち上げる。専門は教育史(生徒会成立過程史研究)、シティズンシップ教育。